健診で要精密検査と言われた時にとるべき行動とは?

検査結果判定E

健康診断の通知に「要精密検査」の文字が書かれていたら、きっと戸惑ってしまう方が多いのではないでしょうか。

 

このコラムでは要精密検査と言われた時の費用やいつまでに受けるかの期間、メリットやデメリットなど、健康診断で要精密検査と言われた時の対応のポイントをお伝えします。

要精密検査について

まず初めに、検査結果の基準値について説明します。

 

基準値とは

血液検査などの基準値はどのように決められているのか不思議に思った事はありませんか?

 

基準値とは通常、多くの健康な人の検査データのうち、上限と下限をそれぞれ2.5%ずつカットした残りの95%の人が示す統計上の範囲になっています。基準値は「ある一定の基準個体(タバコを吸わないBMIが20〜25の40代の男性)の検査値」であり、これらの集団を統計処理して基準範囲を求めます。基準値(基準範囲)は過去には正常値(正常範囲)と呼ばれていましたが、現在では世界的にも基準値が使われています。検査結果の通知には検査項目の基準値(基準範囲)が記載され、自分が受けた検査結果が基準内か基準外かは一目で分かるようになっています。

 

再検査との違い

精密検査と再検査は何が違うの?と感じた事があるかもしれません。どちらも、もう一度検査値の確認が必要という点では同じですが、両者の正確な定義には以下のような違いがあります。

 

再検査

健康診断や人間ドックで異常な数値だった場合にもう一度確認が必要な際に出される通知です。異常な数値が一時的なものなのか、身体のに問題によって引き起こされたものなのか、異常の有無を調べる検査であり、再検査の内容は受けた健康診断や人間ドックと同じものです。

 

再検査について詳しくはこちらをご覧ください。

健康診断で再検査と言われたらどうする?正しい行動はこれ

 

 

精密検査

精密検査は異常に対して治療が必要なのかを確認する為の検査です。再検査で再度異常値が検出された場合、見つかった異常の原因は何かを探る為に行われます。検査内容は見つかった異常によって異なります。

 

再検査は疑わしい内容を検査によって確認すべきものであり、精密検査は治療の有無を判断するためにより詳しく検査をするものです。段階で言うと、再検査→精密検査となります。

 

要精密検査を受ける場所

精密検査を受ける医療機関は基本的に任意ですが、健康診断を受けた医療施設、かかりつけの病院、総合病院の中から自分に都合の良い病院を選ぶのが一般的です。

 

要精密検査を受けるメリット

健康診断の結果は前日や当日の食事、行動、体調など、様々なものの影響を受けます。したがって、検査結果に異常が出たからといって必ずしも病気であるという意味ではありません。再検査で異常な数値が出て、仮に精密検査で病気が発見された場合、適切な早期治療を受けることで病気が治癒したり、病気の進行を遅らせることが可能です。

 

精密検査の結果を放置すれば病気が進行してしまう可能性もありますので、要精密検査を受けないことは受けることに比べて、デメリットの方が遥かに大きいといえます。

 

要精密検査の検査方法

各部位や血液検査で精密検査になった時の検査方法を見ていきましょう。

 

生活習慣病関連連

生活習慣病関連には、血糖値や中性脂肪、肝臓、腎臓などがあります。

 

血糖値

今や40歳以上で5人に1人が糖尿病やその予備軍であると言われています。空腹時血糖が126mg/ⅾL以上、またはHbA1cが6.5%以上の方は医療機関で再度血糖値(血液中の糖の濃度)とHbA1c(ブドウ糖と結びついたヘモグロビン)の精密検査を受けましょう。

 

血糖の精密検査では血液検査、尿検査、経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)などを行います。75gOGTTとは、空腹状態でブドウ糖を飲み、30分、1時間、2時間後に採血をして血糖値を測る検査です。

 

糖尿病の診断は空腹時血糖値が126mg/ⅾL以上、OGTT2時間値と随時血糖値が200mg/ⅾL以上の場合にまず「糖尿病型」と判定され、どちらか一方が糖尿病型の場合は再検査になります。ただし、血糖値のみ糖尿病型の場合は口渇、多尿、体重減少などの糖尿病の典型的症状か確実な糖尿病網膜症のいずれかがあると糖尿病と診断されます。

 

再検査によりどちらも糖尿病型ではない、あるいはHbA1cのみ糖尿病型の場合は「糖尿病疑い」となり、生活習慣の改善を行い糖尿病への進行を予防を試みます。

 

中性脂肪

中性脂肪の検査は血液中の脂質量を調べる検査で、動脈硬化性の病気を調べるために重要です。日本人間ドック学会が示す中性脂肪の基準値は空腹時30~149mg/ⅾLです。150~299mg/ⅾLは軽度異常、300~499mg/ⅾLは要再検査、500mg/ⅾL異常は要精密検査及び治療と区分されています。

 

中性脂肪は食べ物の種類やカロリー摂取量によっても大きく変動します。一般的に炭水化物、糖分、アルコールなどを摂りすぎると皮下脂肪や肝臓に沈着して肥満や脂肪肝などに繋がります。特にアルコールは1gあたり7kcalと高カロリーな事に加え、カロリーの高いおつまみを食べる事が増えるので注意が必要です。長期にわたってのこのような習慣は脂質異常症の原因になります。

 

中性脂肪が高値の場合は肥満や脂肪肝、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎不全などの疑いがあり、高値が続くと動脈硬化に発展する可能性が高くなります。また、中性脂肪は低値でも異常があり、栄養不良、肝硬変や肝がんなどの慢性肝機能障害でも低値を示す事がありますので再検査・要精密検査の通知が届いた際には受診しましょう。

 

肝臓

肝臓には栄養素の代謝、有害物質の解毒、胆汁を作り分泌するという重要な役割があるにも関わらず、重篤な状態になるまで症状が現れない事から「沈黙の臓器」と呼ばれています。

 

肝臓の機能を調べる指標としてAST、ALT、γ-GTP、などの肝機能指標となる値を調べます。ASTは肝細胞に多く含まれているため、肝細胞の障害が進むと血液中のASTの値が異常に上昇してきます。ALTはASTと共に肝障害の指標として重要な検査であり、AST、ALT共に高値の場合は肝疾患(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、脂肪肝、アルコール性肝炎など)、急性心筋梗塞、筋ジストロフィー症などが疑われます。γ-GTPが高値の場合はアルコール性肝障害の指標となり、検査前日に過度の飲酒をすると値が上昇する場合もありますので注意が必要です。

 

高値の場合はアルコール性肝炎、アルコール性脂肪肝、急性肝炎、肝硬変などが疑われます。アルコールが原因でγ-GTPが高値の場合は禁酒が必要で、禁酒2週間で数値は半分位に低下しますがアルコール性肝炎やアルコール性脂肪肝になっている場合は2~3ヶ月の禁酒を行わなければγ-GTPは正常になりません。

 

風邪をひいたり激しい運動をした場合にも一時的にこれらの数値が上がる事があり、精密検査をしたけれど全く正常だったというケースもあります。しかし、ウイルス性肝炎や自己免疫疾患が原因となっている場合もあるため、精密検査の通知が届いたら速やかに受診するようにしましょう。

肝臓の働きや病気についての詳細は、こちらをご覧下さい。

沈黙の臓器と呼ばれる頑張り屋の肝臓  肝臓を守る為の食事とお酒の付き合い方をお話します

 

腎臓

腎臓は腰のあたりに左右1つずつあり、そらまめのような形をしたにぎりこぶしくらいの大きさの臓器です。主に体の老廃物を尿として体の外に出す、体内の水分を調節する、血圧を調節するなど多くの重要な働きをしています。

 

腎機能の健康診断で「要精密検査」と判定された場合、医療機関では再度血液検査や尿検査が行われます。再検査でも同様の異常が見られた場合は精密検査が行われます。

 

血液検査で腎臓機能の低下が疑われた場合は、その詳しい原因を調べるために数日間の入院が必要な腎生検という検査を行う場合があります。血液検査ではクレアチニンの値が腎臓病の指標となる事が多いです。これは、クレアチニンは腎臓以外の影響を受けにくいという性質があるためです。クレアチニンが高値の場合は腎不全や肝硬変などの病気が疑われますが、クレアチニンは腎機能が正常の50~75%以下になるまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には使えないという難点があります。

 

その場合、腎臓の異常を詳しく調べる事ができる検査に、クレアチニンクリアランスという項目があります。これは低値になるほど腎機能の悪化(腎機能障害)を示しています。腎臓病は末期になるまで自覚症状が現れない事が多いばかりか、腎臓はある段階まで症状が悪化してしまうと治療が望めない事に加え腎臓機能の悪化を食い止める事も難しくなります。

 

腎臓の病気は発見が難しいため腎臓の働きが悪くなれば最後には透析へと繋がってしまいます。尿検査や血液検査で異常値を指摘された場合は出来るだけ早く精密検査を受けるようにしましょう。

婦人科系

婦人科健診では女性特有の病気が隠れていないかどうかを調べます。婦人科検診の項目である子宮頸がん、乳がんは2年に1回は公費で検診を受けられる自治体が多いので賢く利用しましょう。

 

乳がん

乳がんのしこりは痛みはない上に硬く、表面や凹凸の境界がはっきりしない事が特徴です。乳がん検診で異常を指摘され、要精密検査になった場合には専門医による詳しい検査を受けましょう。

 

精密検査は乳腺科、乳腺外来、乳腺外科で受ける事ができます。検査の内容は問診、視触診、マンモグラフィー、エコー検査を行う事が多く、必要に応じて病理検査(細胞診、針生検など)が追加で行われます。

 

マンモグラフィーは検査着に着替え、ネックレスなどの金属類は外します。上半身裸になって乳房撮影装置の前に立ち、乳房の厚みが4〜5㎝になるように乳房を圧迫筒で上下から圧迫します。多少の痛みが伴いますが、撮影時間は数秒の我慢で終わります。次に反対側の乳房を撮影し、正面からの撮影が終わったら斜位の撮影をします。全ての検査は数分で終了し、X線の照射は2〜3秒なので体に影響は無いと言われています。

 

乳がん検診では約1割の方が精密検査となりますが、しこりがあるからといって全てが乳がんであることはありません。

 

乳がんは早期発見で治療ができ、自分で発見しやすいがんです。胸のしこりの有無は自宅でも確認する事ができますので、20歳を過ぎた人は毎月生理が終わって数日以内に、閉経後や生理のない人は毎月決まった日にしこりの有無、へこみや違和感は無いかを確認しましょう。お風呂に入った時など、鏡の前で確認しやすいのでオススメです。

 

子宮がん

子宮のがんは子宮頸がんと子宮体がんに分かれます。子宮頚がんは40歳代前後の閉経前の女性に、子宮体がんは50〜60歳代の閉経後に多いという特徴があります。子宮がんの検査は子宮粘膜をこすって細胞を取り、がん細胞がないかを調べる検査を行います。

 

検査のための前処置は特になく、下着を全て脱いで婦人科用の検査台にあお向けになり、細胞をとる処置を行います。検査の目安は頸部の検査は20〜30秒、体部の検査は5〜10分程で終了します。細胞診でがんが疑われたりがん細胞が見つかった時はその組織の一部をとって顕微鏡で調べる組織診が行われます。

 

要精密検査にかかる費用や受診までの期限

精密検査の通知が来た時、いつまでに受診したらいいのか悩みますよね。再検査の場合、時期については医療機関によって異なりますが3ヶ月後もしくは6ヶ月後に再受診としている医療機関が多いです。精密検査の場合は「1ヵ月以内に受診を」などの受診時期の目安が記載されている場合もあれば、早めの受診を促す記載のみで具体的な受診時期の目安が書かれていないケースもあります。精密検査の費用は保険適用で、負担割合に応じた診療代が発生します。費用は検査内容や医療施設によって変わります。保険適用で3割負担の場合の費用の目安は以下の通りです。あくまで目安であり、検査項目や検査方法によっても費用は異なるため、詳細はあらかじめ医療機関へ確認しておけば安心です。

・血液検査 2500円~3000円

・尿検査  1000円~2000円

・MRI検査 5000円~20000円

・超音波検査(エコー)1000円~3000円

・心電図  400~1000円

 

もし、要精密検査の通知が届いたとしても決して落ち込む必要はありません。仮に精密検査によって病気が見つかったとしても、そこから治療をスタートすれば生活習慣を変えるきっかけになりますし、精密検査を放置するよりは良い結果になるでしょう。また、将来の医療費の削減にもなります。自分の体は自分で守っていきましょう。

まとめ

いかがでしたか?

 

健康診断の基準値が高く精密検査の通知が届くと不安が募りますね。健康診断で所見ありと診断される人の割合は2020年では約6割いるようです。しかし、健康診断で異常が見つかったとしてもその時点で自分は病気だと決めつける必要はありません。

 

健康診断で一時的に結果が悪くても、精密検査を受けて異常なしと判断されれば安心ですし、もし病気が見つかった場合でも早期に対応できるというメリットがあります。それは体への負担や精神的な負担の軽減にもなります。

 

要精密検査の通知が届いたけれど、病気が見つかるのが怖い、時間が無いなどの理由で精密検査に足が向かない理由は様々あると思います。しかし、40代に入ると生活習慣病にかかるリスクも上がって行くため早い段階で精密検査を受けていくと経済的にもメリットが多いです。精密検査を受ける事を悩んでいるよりも、早めに受けた方が病気の不安も解消し、安心して仕事に打ち込む事ができるでしょう。要精密検査の通知が届いたとしても、健康診断を受けていなければその病気の元に気づく事も無かったでしょう。そう考えれば、早いうちの発見はとても大切な事なのです。

 

再検査や精密検査について、社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。

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執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士

生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。