産業医面談では何を聞かれる?話す内容や目的などを徹底解説!

問診票とキーボードと聴診器とペン

毎年の健康診断、これまで何か指導を受けられた方はいらっしゃいますか?

「こういう日常は健康によくないですよ、改善しましょうね」と具体的なアドバイスをくれる産業医。

産業医は、企業の従業員に対して健康管理を行う専門の医師であり、面談では主に働き方や健康状態について話し合います。

産業医との面談はストレスや体調不良の改善策、仕事と健康のバランスを保つためのアドバイスなど、労働者が健康的に働き続けるための具体的な指針となりますが、実際に受けてみないとその中身までは把握できないものです。

産業医面談はどういったものなのか、どんな目的があるのかなどを解説していきます。

 

産業医面談の目的

産業医面談は、労働者の健康管理を目的として執り行われます。働く環境や業務内容が健康に与える影響を評価し、心身の負担を軽減するための助言や対策をします。

特に、長時間労働やストレスが原因で健康にリスクが生じる場合、産業医は労働者に適切な改善策を提案します。これは、労働者の健康の保持・推進を図ることが最大の目的だからです。

また、企業にとってはこの面談を通じて、労働者が健康的に働き続けるための環境づくりが促進されるきっかけになります。もっと具体的には、どんなことが産業医面談の目的なのでしょうか。

 

目的①労働者の健康状態の把握

産業医面談は、労働者の健康状態を把握することが目的です。

職場環境や業務内容が心身にかかる過度な負荷があり健康に悪影響を与えることが懸念される場合、産業医面談を通じて早期にリスクを発見し健康を守ることが最大の目的だと言えます。

産業医面談では、該当の労働者が直面している具体的な健康課題や体調不良の要因を確認し、必要に応じて職場環境の改善や勤務形態の変更、医療機関への受診を推奨します。

 

目的②適切な就業上の措置の提案

産業医面談で改善案を提案するのは従業員に対してだけではありません。従業員の健康状態を基に、適切な就業上の措置を企業側に提案することもあります。

特に、心身の負担が業務に影響を与える場合、企業は早期に対策を講じることが重要です。産業医は面談を通じて、従業員の体調不良や過度な疲労、ストレスの原因を特定し、必要に応じて業務内容の調整や労働時間の短縮、休養の推奨など、従業員が安心して働ける環境づくりを提案します。

企業に求められる就業上の措置とは具体的に、勤務形態の変更や配置転換、在宅勤務の導入など、全般的な職場環境の改善などが当てはまります。

 職場環境改善に関してはこちらのコラムで詳しく解説していますのでぜひ合わせてお読みください。

働きやすい職場で人材の定着を目指す!職場環境改善を正しく遂行するポイント

 

目的③メンタルヘルス不調の回避

ストレスチェックの結果で高ストレス者と判断された従業員には産業医面談が推奨されています。これにより、労働者のメンタルヘルス不調を回避する可能性があり、労働者の心を守ること、そして企業にとっては戦力を守ることができます。

長時間労働や業務上のストレスが原因で、精神的な不調を抱える労働者は未だ多いのが現実。

 

高ストレス者にとって産業医は早期にメンタルヘルスの問題を把握し、労働者のストレス要因や心理的負担を把握したうえで、必要に応じて業務の軽減や休職、リフレッシュ休暇の提案など、心身の回復を促す支援策を提供することが可能となるのです。

 

目的④ヘルスリテラシーの向上

ヘルスリテラシーとは、健康に関する知識や自己管理能力を意味し、労働者が自らの健康状態を適切に理解し、日々の生活や働き方に反映する力のことを指します。

産業医面談は、労働者のヘルスリテラシーを向上させることもまた目的として機能しているのです。

 

産業医面談では、労働者が抱える体調の不調やストレスの要因について医師の視点からアドバイスを受け、健康に対する理解を深めることができるため、食生活、睡眠、運動の見直しといった日常生活の改善点が浮き彫りになることでしょう。

自分自身の生活のどこが改善できるのかがわかれば、自身の健康を積極的に管理する力が養われていきます。

 

産業医面談を通じて、労働者は自らの健康課題を認識し、予防的な行動を取ることができるようになると病気やケガ、メンタルヘルス不調が理由での休職・離職のリスク軽減へと繋がります。

結果として、産業医面談は従業員だけではなく企業にとっても大きなメリットだと言えるのです。

 

目的⑤健康経営の推進

産業医面談は、企業の健康経営を推進するための非常に重要な取り組みとなります。

健康経営とは、労働者の健康管理を経営課題の一環として捉え、労働者の健康維持や生活の質の向上を図ることで、企業の生産性向上や組織の活性化を目指す経営手法です。

 

産業医は、面談を通じて労働者の健康状態や職場環境に関する問題点を把握し、企業へ適切な改善策を提案する役割を担います。これには、労働者の健康リスクを軽減するための労働時間の調整や、ストレス対策、職場の衛生管理の強化など、具体的な就業上の措置、すなわち健康経営に必要な「イロハ」が含まれると言えます。

全ての従業員にとって健康で働きやすい職場環境が整備されると、モチベーションや業務パフォーマンスが向上することが期待できるようになり、健康経営の実現に期待できるようになるのです。

 健康経営についてこちらのコラムにて詳しく解説していますのでぜひ合わせてお読みください。

健やかな企業成長に健康宣言を!従業員を守る姿勢が企業ブランドを高めます

 

 

 

実は、産業医面談は義務ではありません

産業医面談は、従業員の健康を守るために企業が提供するサポートの一環ですが、面談の受診自体は、実は義務化されていません。

企業は労働者が心身の健康を維持できるように、該当となる従業員に産業医による面談を勧めるように推奨されますが、該当の従業員本人に産業医面談を強制することはできないのです。

 

産業医面談は従業員自身の健康を守るために設けられた重要な制度ですが、従業員のなかには産業医面談を面倒に感じたり、人事評価への影響を考えたり、個人情報を把握されるようでネガティブなイメージを持つ場合もあります。

産業医面談を安心して受けてもらうためには、産業医面談は企業のためだけではなく、従業員の心身の健康を守るためのものであること、産業医には守秘義務があることなどをしっかりと伝えて、安心して面談を活用できるように促すことが大切です。

 

産業医の守秘義務と報告義務

産業医面談を受けたくないという人のなかには、自分自身の心身に関わる個人情報が筒抜けになるのではいかという不安から、面談を拒否したくなる場合があるのだとか。

しかし、先述のとおり産業医には守秘義務があります

 

産業医の守秘義務は、労働安全衛生法第105条に定められており、「面談指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない」とされています。

医師としての倫理規範に従い、健康診断や面談で得た情報は、たとえ企業の人事部門に求められたとしても、本人の同意なく企業に提供することは禁じられているのです。

 

一方で、産業医には報告義務もあります。(労働安全衛生法第13条)。職場の安全衛生管理のために必要な情報を会社に報告しますが、労働者の健康を守るために必要な範囲に限定されています。たとえば、労働者が抱えるプライベートな悩みを報告することはありません。

労働者の健康状態が業務に重大な影響を与える場合や、安全に関わる場合には、本人の同意を得て報告を求められることがあります。このように、産業医には守秘義務と報告義務の両立が法律により課せられているのです。

 

産業医面談はオンラインでできます!

産業医面談は膝を付き合わせて、というイメージがある人も多いかと思いますが、2020年11月より一定の条件の元下オンラインでの面談が可能となっています。

仕事で多忙な方や遠隔地の企業にとってオンラインでの面談はメリットが多く、また産業医にとっても移動時間の削減ができるため、より多くの人に面談の対応が可能となるメリットがあります。

しかし、全ての産業医がオンライン面談をできるかと言えばそうではありません。

 

厚生労働省によると

〇対象の労働者が所属する事業場の産業医

〇少なくとも過去1年以上業務を担当している産業医

〇過去1年以内に、対象の労働者が所属する事業場を巡視している産業医

〇過去1年以内に、対象の労働者に指導等を実施したことのある産業医

といった条件を満たしている必要があります。

参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、 第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導 の実施について」https://www.mhlw.go.jp/content/000536467.pdf

 

状況別!産業医面談の内容

産業医面談はどんな内容を話されるのか気になる方も多いかと思います。そこで、それぞれのタイプ別で、どのような内容が産業医面談で話をされるのかをみていきましょう。

定期健康診断後

定期健康診断後の産業医面談では、健康診断結果を基に何らかの異常所見があった場合に面談が行われます。従業員の健康状態やリスク要因について詳細に確認し、健康診断後3ヶ月以内に産業医による面談が推奨されています。

面談内容は、血圧やコレステロール値、血糖値などの数値が基準範囲内かを確認し、生活習慣に起因するリスクが見られる場合は、食事や運動の改善が推奨されるでしょう。

また、肥満や喫煙、ストレス過多などの生活習慣が病気のリスクを高める可能性があるため、産業医はこれらの要因についても適切なアドバイスを行います。

もちろん、重度の異常が見られた場合には、専門医療機関での受診が勧められ、職場環境が原因なのであれば働き方や業務内容の見直しなどを企業に提言することもあります。

 

ストレスチェック後

常時50人以上の労働を使用する事業場において、年に1度のストレスチェックは義務化されています。そのストレスチェックにおいて高ストレスと判断された人に対して産業医面談が推奨されています。

 

産業医面談では、ストレスの状態や要因を確認し、労働者のメンタルヘルスをサポートするためのアドバイスや具体的な対策を提案し、仕事量や職場の人間関係、業務環境などに改善が必要な点がないかを検討します。

面談ではストレスチェックの結果について詳しく説明され、どういった項目において高ストレスなのかを解説がされます。リラックスする方法や適切な休息の取り方についての指導を行うほか、業務負荷の軽減や、配置転換、勤務時間の調整など具体的な就業上の措置が必要かも確認され、必要な措置を企業へも提言していくのです。

ストレスチェック後の産業医面談は、労働者のメンタルヘルスの維持・向上を目指し、働きやすい環境作りに向けた重要な機会となるでしょう。

 

長時間労働者との面談

長時間労働者とは、労働安全衛生規則第52条により、休日労働時間が1月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者とされています。

この長時間労働者との産業医面談では、過度な労働負荷が労働者の健康に及ぼす影響を確認し、適切な対策を提言していきます。

従業員の疲労の蓄積状況、睡眠時間、生活習慣の乱れ、ストレスレベルなどについて確認し、企業側に適切な労働時間管理や業務改善についての提言をします。

 

長時間労働についてはこちらのコラムで詳しく解説していますので、ぜひこちらも合わせてお読みください。

長時間労働の対策ポイント!法定労働時間と残業代についてもわかりやすく解説します

メンタルヘルス不調者との面談

メンタルヘルス不調者との産業医面談では、労働者の心身の状態を確認し、適切なサポートや改善策を提案することが目的です。面談では、まず不調の原因として考えられる職場環境、業務量、人間関係、プライベートなストレス要因などを丁寧に聞き取り、具体的な要因を明確化します。

メンタルヘルス不調のは早期発見は、がその後どれくらいの期間が回復に必要となるのか、その期間に大きな影響を与えます。

 

そのため、メンタルヘルス不調の症状と経過はもちろん、これまでの治療歴や服薬状況についても確認がされる場合があります。

それらの内容をふまえて、産業医は専門医療機関への受診を勧めることが多いとされます。医療的サポートにつなげるだけではなく、休職を検討する必要があるのかもヒアリングし、休職が必要な場合はその期間についても助言がされるでしょう。

 

休職復職対応

メンタルヘルス不調でこれから休職する人や、休職から復帰する人に対しても産業医面談の実施が望ましいとされています。とくに復職の場合、従業員がスムーズに職場へ復帰できるための重要なプロセスとなるとされます。

たとえば休職前の不調が改善しているか、業務への復帰が可能かを確認し、無理のない復職プランを立てるため面談はとても重要です。また、再発予防とセルフケアの提言をすることで、長く勤められるように環境を整えていきます。

そのため、復職には段階的な復職プランを提案することが多く、時短勤務から始めたり、業務量を調整したりして、徐々に通常勤務に戻れるようマネジメントするのです。

 

産業医面談は心と身体を守る重要な取り組み

従業員が気持ち良く、長い期間働ける職場環境作りに産業医面談はとても大切な役割を担っています。「義務ではないから」と蔑ろにするのではなく、安全配慮義務を果たす上でぜひ積極的に執り行って頂ければ幸いです。

弊社では、従業員の心身を守るための健康経営についてあらゆるご質問・ご相談を承っております。

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