女性に受けて欲しい健康診断の項目とは

背中に聴診器をあてる





女性であるあなたは、どんな人生を歩みたいですか?女性の体が男性と大きく異なるのは、一生のうちの多くが女性ホルモンに支配されている点です。妊娠、出産を経て閉経、高齢期へと続く中で、女性の心と体は各ライフステージで大きく変化するため、健康に興味を持ち続ける事が大切です。

 

今回のコラムでは女性が気を付けるべき体の変化と年代別の健康診断オプションを管理栄養士がお伝えします。

 

女性の働き方が変化し、女性の一生はとても忙しい

これまで日本女性の特徴の1つとして、20代半ばから30代の間に結婚・出産をして一時退職し、育児が落ち着いた40代から再就職する事がパターン化していました。しかし、現在はこのM字カーブも解消されつつあり、妊娠・出産・育児・介護をこなしながら働き続ける女性が増えてきています。

 

また、長時間働く女性の方が朝食の欠食率が高かったり、栄養を十分に摂れていないといった課題もあります。女性の体と心の健康は、女性ホルモンと深く関わっています。女性らしさを作るホルモンであるエストロゲンは女性のライフステージに応じて分泌量が変化します。それによって起こりやすいトラブルも変化します。

 

このような健康上の問題が深刻化しないよう、健康診断を定期的に受けましょう。

 

年代別で起こりやすい疾患と検査

健康診断には、通常の検査項目に加えて「オプション検査」というものが追加できる事をご存知でしょうか?女性はホルモンバランスの分泌に左右されるので、乳房や子宮など病気になりやすい部位があります。ライフステージや各年代別に見られる病気と検診を見ていきましょう。

20代

20代は自分のキャリアを探求して行く時期です。心身ともに活動的になる時期ですが、それゆえ仕事に一生懸命になりすぎて生活のリズムを崩してしまいがちです。食生活も不規則にならぬよう気を付ける必要があります。この時期の低栄養や貧血が後の不妊に影響するリスクは高く、日本がは先進国トップクラスの不妊大国である所以でもあります。

 

特に気を付けたい貧血

貧血の多くは体内の鉄分が不足する鉄欠乏貧血ですが、悪性貧血や消化器腫瘍やがん、痔などが原因で起こる出血の場合もあるので原因を確かめておく事が大切です。女性は毎月の月経で鉄をはじめとする栄養素を失うので、男性よりも体調に気を付ける必要があります。まずは毎日朝食を摂れているか確認しましょう。

 

詳しくはこちらをご覧ください。

若い女性や子供は特に注意!鉄欠乏性貧血を防ぐ食事

子宮内膜症・子宮筋腫

子宮内膜症は本来は子宮の内側にあるはずの内膜が子宮から離れた場所にできる病気です。20〜30代に多く、30代前半が発症のピークと言われています。子宮内膜は通常、月経の周期に合わせて厚くなったりはがれ落ちますが、その月経血の一部が逆流し、卵管や卵巣などに紛れ込む事で子宮内膜が増殖すると考えられています。

 

検査内容は血液検査でホルモンや貧血について調べ、腹部エコーで子宮や腹腔内を観察し、診断します。

 

30代

30代は重篤な疾患リスクが比較的低く、健康への関心もまだ少ない時期です。妊娠・出産を経験する女性が多く、女性ホルモンバランスの変化が起こりやすい時期と言えます。40〜50代に比べて企業などの健診で病気が指摘される事は少ないですが、40代以降に顕著になる健康トラブルの元は20〜30代からの生活習慣にあると言われています。そのため、るため注意が必要です。

子宮頸がん

子宮頸がんは初期症状ではほとんどが自覚症状がなく、自分で気づく事は困難と言われています。進行した子宮頸がんの症状としては、月経でないのに出血が起きる不正性出血やおりものの異常がみられます。更に進行すると、腰や下腹部の痛み、尿や便に血が混じる事があります。

 

子宮頸がんの発病のピークは50歳前後と言われていますが、子宮頸がんは妊娠適齢期と同等の20〜30代の若い年代に多い年代に多いがんであることから20歳から検診の対象となっています。自治体などで定期的に子宮がん検診を行っていますので、補助を上手に利用しましょう。

 

子宮頸がんは早期発見で治りやすいがんとされていますから、検診の頻度としては2年に1回受ける事が有効と言われています。

 

40代

40代は30代に比べて病気の発症率が徐々に上がってきます。いつもはA判定だった項目にBやCの判定がつきはじめます。特に大腸がんや糖尿病、脂質異常症といった病気は日本人に多く見られるため健康診断では早期発見・早期治療に努めましょう。

 

さらに40歳を過ぎた頃から、女性ホルモンの分泌を担っていた卵巣の機能が低下し始めます。これに伴い卵胞ホルモンであるエストロゲンの分泌量が低下していきます。

今までは卵巣から十分に分泌されていたエストロゲンが分泌されなくなった事で脳が混乱を起こし、更年期の症状が現れます。更年期はホルモンバランスだけでなく本人の気質や体質の問題、社会や家庭の環境も大きく関わっていると言われています。更年期のさまざまな不調を「更年期症状」といい、仕事や家事などの日常生活に支障をきたしてしまうほどの重い物を「更年期障害」といいます。

 

更年期についてはこちらをご覧ください。

更年期障害は怖くない!知っておきたい更年期症状と緩和する為の食事、生活のポイントを解説します

 

乳がん

乳がんにかかる女性は年々増加しており、30代後半に急激に高まり40代後半から60代後半にかけてピークを迎えます。日本人女性の実に9人に1人が生涯で乳がんと診断されています。

 

その原因の多くは女性の社会進出における晩婚化(出産経験がなく授乳経験がない女性は乳がんの発症リスクが高い)や食生活の欧米化などです。乳がんの増殖には女性ホルモンが関係しているものが多いとされています。

 

また、乳がんの5〜10%は遺伝性であると言われており、母親や姉妹などが乳がんにかかった事のある人はリスクが高くなるため注意が必要です。乳がんの主な症状は乳房のしこり、乳房や乳首の変形、乳頭からの分泌物(特に出血)などです。

 

乳がんは自分で触れて見つける事が出来ますから、30歳を過ぎたら月に1回月経が終わって数日〜1週間の間に自分で触診してみましょう。しこりがある場合、マンモグラフィーや超音波検査で良性か悪性かの診断をする事がある程度可能です。乳がんになりやすい人の傾向として、飲酒や喫煙の習慣がある、肥満や糖尿病の方も、当てはまらない方に比べて乳がんになる確率が上がるとされています。

 

50代

50代は今までエストロゲンに守られてきた中性脂肪などが上がります。男性同様にメタボリックシンドロームの危険も高まるため、お腹周りや体重の変化に敏感になりましょう。50代は具体的な病気のリスクを考え、積極的にオプション検査を組み合わせる事で発症リスクが高いと分かっている病気の早期発見・早期治療に繋がります。

子宮体がん

子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれ、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜に発生するがんです。国立がん研究センターの統計によると、50代の2020年の婦人科がんの罹患率は子宮頸がんに比べて子宮体がんや卵巣がんの増加が目立っています。

 

子宮体がんの発症年齢は50歳代が最も多く、近年増加傾向にあります。その理由の1つとして、食生活の欧米化が関与しています。脂肪細胞が子宮内膜増殖の原因となるエストロゲンを産生するため、動物性脂肪の多い食事やアルコール摂取の多さは子宮体がんの発症リスクになるとされています。

 

また、肥満も子宮体がんのリスクになります。特に閉経後はそれまで卵巣で作られていたエストロゲンが主に脂肪細胞で作られるようになるので、不健康な食事や肥満が原因で子宮体がんを発症するリスクが高まるとされています。検査は超音波や細胞診を行い、異常が疑われる場合は更に組織診を行います。

 

60代

60代は更年期症状は治まりますが、閉経後、エストロゲンによって守られていた骨や血管、肌、粘膜などに変化が現れやすく、生活習慣病を発症しやすくなります。

 

生活習慣病

女性ホルモンには血管をしなやかに保つ事で動脈硬化の予防や内臓脂肪の分解をしやすくするなどの嬉しい働きがあります。そのため男性よりも生活習慣病の発症が抑えられてきました。

 

しかし、閉経後は女性ホルモンのガードがなくなるため男性と同じように高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を起こしやすくなります。特に女性ホルモンのエストロゲンにはLDLコレステロールの上昇を抑える作用があるため、閉経後のエストロゲンの欠乏によりコレステロール値が急激に上昇しやすくなります。

 

まずは日頃からよく体を動かす事と、食物繊維の摂取がは少なくないか、甘いものや揚げ物でカロリーを摂りすぎていないかなど、食事のバランスを見直します。腹囲に大きな変化が無いかを確認するには昨年のスカートが同じように履けるか、など衣類を用いると変化が分かりやすいですね。会社を辞めた後も、生活習慣病を予防する為に1〜2年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。

骨粗鬆症

エストロゲンの減少は骨にも影響します。古い骨を溶かす骨吸収と、新しい骨を作る骨形成のバランスがとれた骨の代謝には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関係しています。

 

女性は閉経期を過ぎるとエストロゲンの分泌が低下し骨量も急激に低下するため骨がもろくなりやすく、骨粗鬆症のリスクが高くなります。50代女性の9人に1人、60代の3人に1人、70代の2人に1人が骨粗鬆症を発症しています。

 

骨粗鬆症はほとんど自覚症状がありませんが、進行するとちょっとした転倒などでも骨折しやすくなります。また、背中が圧迫されつぶれる圧迫骨折を起こすと背中が曲がったり背が低くなる原因となります。転倒して大腿骨を骨折すると寝たきりから認知症になってしまうケースも珍しくないため、検査をしておきましょう。

 

女性の骨粗鬆症の罹患率は実に男性の3倍で、女性の健康寿命を左右する病気と言えます。閉経後は骨の主成分であるカルシウムや、カルシウムの吸収を助ける栄養素であるビタミンDやビタミンKを意識しましょう。ウォーキングやかかと上げ運動など、日々の運動によって骨量を保つとともに筋力をつけて転倒しにくい体作りも忘れずに。骨粗鬆症は骨量の値と骨折の有無、骨量検査や骨のX線検査などが行われます。骨量検査は骨がスポンジ状にもろくなっていないか、骨の充実度を測定する検査です。他にも、以下のような検査があります。

 

〇DXA(デキサ法)

全身の骨を測定できる検査です。2種類のX線を使って撮影します。

 

〇超音波法

かかとやすねの骨で調べる事ができる検査です。

 

〇MD法

アルミの板の上に手をのせてX線撮影をし、測定します。

 

〇NTx(Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド)

尿を採取して骨を構成しているⅠ型コラーゲンの分解産物を調べ、骨粗鬆症の進行を測定する検査です。(午前中の第2尿)血液で調べる方法もあります。

骨密度の検査はドラッグストアなどでも無料でできる場合がありますので、若い方も是非活用してみましょう。

 

検査の前に準備しておく事

病気を早期発見するためとはいえ、検診前は何かと不安な事も多いものですよね。

事前の準備と心がまえを知っておきましょう。

 

検査当日の服装や気を付けるポイント

健診の時は脱ぎ着しやすい服装にしましょう。検査着のある施設もありますが、子宮の内部を調べる検査の場合はスカートを履いたまま内診台に上がる事ができるので、長めのスカートがおすすめです。

 

マンモグラフィーは上半身裸になるため上下が分かれたワンピースやパンツが良いでしょう。顔色がよく分かるよう、ノーメイクか薄いメイクにします。

 

月経中の検査

月経中でも受診OKな検査は月経にまつわるトラブル、不正出血や緊急の場合です。月経中に避けたい検査は子宮がん検査、卵巣がん検査、性感染症の検査、おりもものの検査などです。

 

検査当日の心がまえ

女性特有の病気の検査を受ける時、どのような検査を受けるのか不安を抱く事も多いと思います。最近は女医さんも増えていますので、希望する場合は電話で確認しましょう。問診で必要な事を話すのは意外と緊張するものですので、落ち着いて話せるように症状や心配な事、質問事項などを事前にメモしておくと安心です。

 

まとめ

いかがでしたか?

女性は妊娠、出産、育児とライフスタイルの変化が大きく、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていることも。それに加えて思春期に増えた女性ホルモンは年齢を重ねるごとに減少します。近年増加している乳がんや子宮がんなどの女性検診は忘れずに受けるようにしましょう。

 

仕事、家庭、趣味を大切に、自分が望む人生を歩むには健康な体が必要不可欠です。年齢別のオプション健診を受けておけば安心材料になりますし、自分の健康を守る為には飲酒や喫煙など、コントロールしやすい嗜好品を減らし、運動を定期的に行えば肥満も解消されます。

 

加えてバランスの取れた食事を意識する事が健康管理の近道となります。

 

社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。

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執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士

生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。