毎年健康診断を受けていますか? 定期健康診断は従業員が受ける義務があります。もし今年の健康診断の結果が望ましいものでなかったとしたら、食生活を見直す必要があるでしょう。今回のコラムでは、健康診断の結果を未来に生かすための食事のポイントを管理栄養士がお伝えします。
健康診断の基本をおさらい
健康診断とは、労働安全衛生法により会社に定められた義務です。健康診断を受ける場所については、会社側が指定しているケースが一般的です。健康診断の費用については実施義務を負う会社側が全額負担し、健康診断を受けている時間も労働時間とみなし賃金も会社が支払う事が望ましいとされています。
健康診断を受ける時の心がまえ
「健康診断」を受ける前に楽しみと考える人はまずいないと思います。去年の検査結果よりも悪化していたらどうしようと考えてしまいますよね。糖尿病や脂質異常症、高血圧は単独でも動脈硬化の危険因子となり、メタボリックシンドロームは動脈硬化の危険因子が重複している状態のため、動脈硬化性疾患の発症率とそれによる脂肪率がより高くなります。
しかし、どんな病気でも通常は早期に見つけておけばそれだけ後の治療がスムーズに進む大きなメリットがあります。できるだけリラックスして健康診断を受けるようにしましょう。
定期健康診断
定期健康診断の実施は労働安全法によって会社に定められた義務であり、企業に常時雇用されている社員は企業が実施する定期健康診断を1年に1回受診します。これはパートタイマーやアルバイトでも一定の条件を満たせば対象となります。
定期健康診断では、以下の11の検査項目を受診する事とされています。
・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の調査
・身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査および 喀痰検査
・血圧の測定
・貧血検査
・肝機能検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
・心電図検査
雇い入れ時健康診断
雇い入れ時健康診断は、これから入社する社員の健康管理や適切な配置などのために実施されるものです。雇い入れの場合は健康診断の明確な期限は定められていませんが、従業員が業務を開始する前あるいは開始後の速やかな実施が望ましく、雇い入れから3ヶ月以内に健康診断を行うのが理想です。
企業は健康診断の結果で内定を取り下げる事は禁じられていますが、健康診断の結果で何らかの異常が見つかった場合には再検査が勧められ人事配置の対応も行われます。再検査は本人の判断に委ねられますが、できるだけ検査を受けて仕事をするまでに体調についての心配点を無くしておきましょう。
健康診断結果が届くまでの日数
健康診断の結果は、一般的に受診後2週間〜1ヶ月で受け取る事ができます。定期健康診断の場合、検査診断結果は会社にまとめて送られた後にそれぞれの従業員に配布されるケースが多く、個人宅への郵送の場合もあります。
通知のタイミングは会社や検診機関によって異なります。結果が届く時期を把握したい場合は、社内の担当者や健診予定の医療機関へ届く時期を確認しておきましょう。
健康診断結果の基本的な見方
健康診断の判定基準は医療機関や検査機関によって異なるため、いつも受診している病院と検査値の値が違うと感じる事もあるでしょう。疑問に思う事があれば医師に相談し、以下に示す判定区分を元に検査結果の意味を正確に理解して今後の健康管理に生かして行きましょう。
【健診結果の判定区分】
A:異常は認められない
B:軽度の異常が認められるが日常生活に支障はない
C:日常生活に注意して生活改善を行い、症状があれば受診をする
D:精密検査・治療が必要
E:治療を継続すること
健康診断結果が思わしくなかった場合の今後の生活への生かし方
健康診断の結果は、去年よりも良くなっているか、変化無しか、悪化しているかのどれかに該当するでしょう。もし昨年よりも悪くなっている項目が見つかれば、落ち込んでしまうのも無理はありません。しかし、何も行動しなければ体は良くならないばかりか来年の検査値にも響いてしまいます。この段階で良いアクションを起こせば検査結果が改善する可能性が高くなると言えます。過去のデータと比較し、検査値が悪化した原因を探ってみましょう。
体重
健康への第一歩はなんといっても第一に体重を適正な値にし、それを保つ事です。脳血管疾患や心筋梗塞などの健康障害は、元をたどればBMIや腹囲を指摘された時に改善できていれば防げる可能性が高いのです。
例えば体重が明らかに増加した場合、通勤で歩く時間が減った、階段を使わなくなった、趣味にランニングを始めたが梅雨に入り辞めてしまった、子どものお弁当を作らなくてよくなったので自分も外食が増えたなど、生活週間を振り返ると体重が増えた原因が把握でき、対策も立てやすくなります。
体重が1㎏減れば腹囲が1㎝減ると言われています。内臓脂肪の減少は様々な検査値の改善に繋がりますので、減量をする場合は1ヶ月に1㎏減を目標にしてみましょう。
血糖値
生きて行く上でエネルギー源となるブドウ糖は全身の細胞に供給されるため血液中の濃度はほぼ一定に保たれています。ブドウ糖の血中濃度が高くなると、上がり過ぎた血糖値を下げるためにインスリンの分泌が高まり、肝臓や筋肉、脂肪細胞などに送り込んで貯え、血糖の上昇を抑えています。
また、血糖値を調べる時にヘモグロビンA1という値を見た事はありますか?これはブドウ糖がタンパク質とくっつく性質を利用して行う検査で、過去1〜3ヶ月の血糖値を反映しています。
インスリンの効きが悪くなると糖尿病に進展しますが、糖尿病が悪化すると糖尿病網膜症で失明したり糖尿病神経障害で足が壊死したりと、将来のQOLに大きなダメージを与えてしまいます。
血糖値を上げすぎない工夫は、炭水化物や砂糖、甘いジュースやお菓子を単体で食べない事です。血糖値が高めの方は、血糖値の上昇を抑える効果が期待できる野菜や海藻類、キノコ類などの食物繊維が十分に摂れてるか毎日確認してみましょう。また、食後は歩くなど、体を動かす事でも血糖値の上昇を抑制する事ができますので実践してみてはいかがでしょうか。
血圧
自覚症状が全く無くても、高血圧は命に関わる病気です。
高血圧の原因は塩分を摂りすぎる事のみだと思っていませんか?
高血圧の3大原因は
①ストレスや遺伝による心臓の拍出力の増強
②動脈硬化による末梢血管の抵抗
③塩分過多や肥満による血液量の増加
と考えられています。
循環血液量が増えるタイプの高血圧はメタボリックシンドロームの人に多いと言われています。減塩する事で血中のナトリウム濃度をコントロールして血液量を減らして血圧を下げる効果が期待できます。
また、心臓の拍出量が増えたり末梢血管の抵抗が強くなるタイプの高血圧は若い頃から血圧が高い人やイライラしやすい人に多いという特徴があり、減塩が効きにくいと言われています。この場合は、ウオーキングなどの有酸素運動や腹式呼吸などのリラックスタイムを設けると良いでしょう。
肝機能
肝機能の数値が高いという事は、多くの肝細胞が壊れているという事です。肝臓は痛みを感じる神経が通っていないので、少々無理をしても黙ってもくもくと仕事をします。
一部の肝細胞が壊れても、全体の仕事量が変わらなければ残された他の肝細胞の仕事が増え、肝臓は機能し続ける事ができます。そして、オーバーワークになり更に肝細胞が壊れると再生したばかりの肝細胞もすぐに働く事になり、それが肝硬変や肝がんとなるメカニズムとなります。
この肝臓の仕組みが「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんです。だからこそ肝機能検査で肝臓の状態を知る事が大切なのです。
肝機能について、くわしくはこちらをご覧下さい。
腎機能
腎臓は脳や心臓、眼底と同じく血管が細いため、血圧の影響を受けやすいです。高血圧は腎機能低下の最大の危険因子であり、脱水、肥満、糖尿病も腎機能の低下に繋がります。
食事では高血圧同様に塩分を6g以下に抑える事と、腎臓に負担をかけるタンパク質を処理する段階で出る老廃物を増やさないように、食事からのタンパク質の摂取を減らす事が大切です。
実際の食事量は医師の指示に従うようにして下さい。
健康診断の再検査についてはこちらをご覧下さい。
健康診断の結果が出た後の企業の対応
労働安全衛生規則において、健康診断の結果は会社が把握し、本人に通知する事が義務づけられています。さらに、健康に問題がある従業員がいた場合には医師の意見をもとに労働時間の短縮や労働作業の見直しなどの必要があります。
しかし、健康診断の結果は健康診断を受けた従業員の個人情報になりますので、本人以外の誰もが内容を見て良いものではなく、健康診断の結果を取り扱う担当者を決めておく必要があります。
健康診断の結果を見られるのは健康診断の実務に従事している人、人事労務部門の担当者、職場の管理監督者などです。個人の健康診断の結果は単純に管理職だからといって誰もが見て良い物ではない事を理解しておきましょう。そして取得した情報は後々に情報漏洩などの問題が起きぬよう厳重に管理する必要があります。
まとめ
いかがでしたか?
健康診断の結果が思わしく無い場合、この結果は怒られてしまうかもと思うとその後の行動もおっくうになってしまうかもしれません。しかし、健康診断の結果で再検査の通知を受ける人は年々増加しています。早めに対処すればするほど大事に至らずに済むのです。
50代や60代で重篤な病気を発症してしまった場合、40代からの検査結果の変化でその兆しがあったかもしれません。仕事を長く続けていく為にも、健康な体が基本です。多くの方は痛みなどの自覚症状が出てから病院に行けば良いと考えるかもしれませんが、高血圧や糖尿病などの生活週間病は自覚症状が出た時にはすでに重症である場合が多いのが事実です。いくら日本の医療が進んでいても、いったん悪くなってしまった体を元に戻す事は難しいのです。
人生100年時代を寝たきりにならずに過ごそうと決意し、行動できるかはあなた次第です。まずは、今日を健康的に過ごしてみましょう。
健康診断の結果が思わしくなく心配な事がある場合は医師や保健師、管理栄養士に相談し自身の健康維持や増進に役立てましょう。
社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。