いつも穏やかで滅多に怒らない人っていますよね。本来なら「キレても」おかしくないような事が降りかかっていても、冷静に対応ができる人。
そういった穏やかな人が上司であれば、コミュニケーションも円滑に行われ、職場環境も良いことでしょう。
正直、怒らない人だって人の子ですから、お腹の中では何を思っているかはわかりません。たとえ怒りを感じていてもそれを表に出さないで冷静にいられるのは、一体どのように自分をコントロールしているのでしょうか。
怒らない人は本当に怒ってない?
怒らない人、とは言っても人間ですから感情があります。職場で冷静に対応ができているのはオフィシャルな場所であるからであって、本当に怒りを感じていないのかどうかは、本人でしかわかり得ないところ。
表面では菩薩の笑顔、内心では仁王、なんてこともあるでしょう。
感情を表に出さず、冷静な態度を維持することは、コミュニケーションを円滑にします。仁王の方と菩薩の方、誰だって質問があれば菩薩様にお聞きするはず。
こういった円滑なコミュニケーションは、職場環境を良くするのに必須事項です。怒らない人は意図的に感情を出さないことで、周囲との摩擦を避けているのでしょう。
しかし、怒らない人全てが怒らないわけではありません。心理的な側面から考えると、怒らない人は「怒ることができない人」であることも。
たとえば、自己制御や他者への配慮が強すぎて自分よりも他人を優先してしまう人は、怒りだけではなく全ての感情を抑えることが習慣化している場合もあります。
怒らない人の「本当の怖さ」
怒らない人は怒っていないから優しい、という安易な構図はなりたたないかも知れません。後に、なぜ怒らないのかを詳しく解説しますが、大前提として怒らない人は怒る人より「見切りのタイミングが早い」と言われることがあるのです。
怒らない人は怒らない代わりに、相手を良く観察し、「これ以上成長が無い」と判断した際、比較的あっさりと見放すことが多い傾向にあると言われます。
自分の感情を抑えることで表面的には穏やかさを保ちますが、その裏には相手に対する期待をすでに切り捨てている場合があるのです。
感情的になる代わりに、関係そのものに対して距離を置くか、切り捨ててその人から去る選択をしている可能性があります。ニコニコしながら冷酷かもしれませんね…。
一方で感情的に怒る人は、相手に対して「言えばわかる」という期待や信頼を持って怒る場合があります。怒りを表すことで、相手に自分の感情や意見を伝え、関係の修復や相手の成長を期待しているのです。
怒る人にとって「感情を外に出す」とは、相手と真剣に向き合い、相互理解を求めるプロセス。もちろん、パワハラになるような起こり方は言語道断ですが、いわゆる昭和の熱血教師のようなタイプは、怒っているけれども愛が深い、と表現できるのかもしれません。
怒らない人の特徴とは?なぜ怒らないのか
怒らない人にもさまざまなタイプが存在します。どんなときも穏やかな態度でいられるのか、その不思議を探してみましょう。
関心のある物事が少ない
怒らない人は、他の人よりも「関心を持つ物事」が少ない傾向にあると言われます。自分のエネルギーや時間を費やすべき対象を厳選し、熱を注ぐ物事以外は低燃費で過ごす、ということです。
関心の範囲が限られているため、日常の些細な問題や他人の行動に対して、あまり感情を動かされることがありません。
小さなことにこだわらず、重要だと感じることにだけ注意を向けるため、他の人であればキレそうな状況でも、あえて反応しないでいられるのです。
怒らない人として映っていたとしても、全てに熱がないわけではなく、無関心や関心を限定化する独自の価値観の下で養われた感覚だと言えます。
視野が広い
怒らない人は、他の人に比べて視野が広いという特徴があります。
物事を一方向から見るのではなく、多角的な視点から捉える力に長けています。そのため、問題や困難に直面してもさまざまな視点で解決策に辿り着くことができるのですます。
視野が広いことで、他人の行動や言動に対して「なぜそういう言動をするのか」といった背景や意図を考慮します。
感情的になる前に深く理解しようとするため、無駄な衝突を避け平穏な人間関係を築くことができるのです。
視野を広く持っていると、多様な意見を受け入れることができるようになります。これを「オピニオン・ダイバーシティ」といい、円滑なコミュニケーション方法として注目がされています。
興味のある方はぜひこちらも合わせてお読みください。
感情のコントロールが得意
怒らない人の最大の特徴が、感情のコントロールです。自分自身を内観し感情をよく理解することで、状況に応じて適切に対応する術を知っています。
怒りも感情ですが、怒りを感じている、と俯瞰して認識ができるのでその感情に振り回されることなく、自分を冷静に保つことができるのです。
ここで大切なのは、感情のコントロールとは感情を抑え込むのではなく「適切に処理する」ということ。
感情を抑え込んで我慢するのはストレスとなり、建設的な解決方法ではありません。感じていることを無視したり、抑え込んだりすることで、表面上は落ち着いた態度を保ちますが、内面的には不満やストレスが溜まってしまいやすい状況です。
対して、感情のコントロールとは自分の感情を認識し、その感情をどう扱うかを意識的に選択することです。感情が生じたときに、自分の反応や行動を適切に調整し、適切な表現方法を選択して相手に感情を伝達します。そのため周囲とのコミュニケーションに軋轢が生まれにくく、ストレスも軽減されやすいとされます。
こういった感情のコントロールは「アンガーマネジメント」で実現が可能です。アンガーマネジメントに関してはこちらで詳しく解説していますのであわせてお読みください。
「怒ると損!アンガーマネジメントで人間関係も職場環境も改善しよう!」
https://www.lifesupport-service.com/blog/20240731/
怒ることが面倒くさい
怒ることで疲れた経験はありませんか?誰かを怒るのは、意外とエネルギーを消費します。怒らない人が感情を露わにしないのは、単に面倒くさいから、という理由であることも。
怒らない人は、怒りを表すことや人との衝突が、エネルギーや時間を浪費するに値しないと考える傾向があります。るため、そのため感情を爆発させるよりも、無視したり、違う方法で対処するなど穏やかな手段を選びます。
怒りでエネルギー消費されて疲労やストレスが増すのを防ぐ手段、ともいえるでしょう。
他人に期待していない
先述で少しお伝えしたとおり、怒らない人は他人に対してあまり期待をしない傾向にあります。他人の行動や反応に過剰な期待を寄せることがないため、期待外れの結果に対しても過剰に怒ることがありません。
期待をしないことで、他人の行動に左右されることなく自分の感情を安定させることができるのです。
他人の行動に対して柔軟に対応し、結果的に自分の期待を超えることがあればラッキーぐらいに考えていれば、期待値のハードルはとても低くなります。
ただしそれは同時に、あっさりと人を見切ることも意味しています。怒ってまで相手にクオリティの上昇は求めない代わりに、違う人選をすぐに考え出はじめるドライさは否定できないでしょう。
怒らない話し方を心掛けている
怒らない人は、日常のコミュニケーションにおいて怒らない話し方を心掛けています。言葉遣いや「トーン」に気を付け、冷静かつ穏やかに話すことを意識しているため、感情が高ぶりそうな場面であっても意図的に平静を保ち、相手に対して攻撃的なアプローチをしません。
冷静な話し方をすることで、誤解や対立を未然に防ぐことができます。相手に対して穏やかな態度で接することで、相手は緊張せずに本意を伝えることができ、誤解も早い段階でとくことができる上に、一緒に問題解決へと取り組む健全な関係性を築くことができるのです。
怒らない人に起こるデメリット
怒らない人でいることは、一見して良い手段に思えます。しかし実際には「怒らない」ことで招くデメリットがあることもお伝えしておきましょう。
怒らない、ということは感情を常に処理していることです。上手く処理しきれなかった場合、内面的なストレスや不満が蓄積される可能性も否定できません。
怒れないでいることには、どんなデメリットが考えられるのでしょうか。
自己主張ができなくなる
怒らない人でいると、自己主張が難しくなることがあります。常に感情を内観して穏やかに振る舞うことで、自分の意見や要求をはっきりと伝える機会が減少することがあるためです。
怒らないことが一見して良い印象を与えるかもしれませんが、その反面、自分の立場や考えを適切に表現することが難しくなり、他人に自分の意見を理解してもらう機会を逃してしまうことも。
結果として、自分のニーズや希望が無視されたり「この人は要求がない」と誤解されたりする可能性があるのです。
また、自己主張が不足すると、対人関係において不公平な状況に置かれる場合があります。たとえば、相手から傷つけられるような言葉を突きつけられても、自分の感情をコントロールして受け入れた場合「この人にはそういった言葉遣いをして良い」と誤ったGOサインを出してしまうことに。
自己主張は自己の権利や意見を守るために重要です。自分の意見や感情を表現することは「怒りの表現」とはまた別の次元であり、イヤなことはイヤだときちんと表明する適切な術も身に着けておきましょう。
どうしてもストレスが溜まる
怒ることで人間関係のストレスは溜まりやすくなりますが、怒らないからと言ってストレスが溜まらないわけではありません。
もちろん、感情をその場で出さないのですから、心的に緊張しやすくなるのです。
感情を爆発させないので人間関係でのストレスは軽減できますが、怒りを感じたことに違いはありません。
感情を処理することで怒りを表に出しませんが、代わりに内面的な緊張や不満が積み重なりやすくなります。
適切に発散せずに抑え込むばかりであると、感情の処理が十分に行われないため、心の中に未解決の問題として残ってしまいます。
蓄積されたストレスはやがて精神的にも身体的にも影響を及ぼし、疲労感や不安感、さらには健康面に悪影響を与えることがあります。
怒らないことが常に良いとは限らず、時には適度に感情を表現し、ストレスを解消することが必要です。
ストレスでメンタル不調になってしまうと最悪の場合仕事を長期で休まざるを得なくなる場合もあります。
「メンタル強い人になりたい!」と思った方はぜひこちらも合わせてお読みください。
アンガーログを書いてみよう
アンガーログは、怒りの感情をその都度書いて記録する方法です。しばしば日記と混同されますが、日記は1日の振り返りを書くもの、アンガーログはその都度書くものといった違いがあります。
アンガーログは怒りを感じた内容とその度合いだけを書くもの。
たとえば「〇月〇日、◇◇駅にて電車が遅延 怒り度4」
といった具合です。ここに解決策や対策は書きません。ただ怒りの内容と度合いを書くだけです。
アンガーログはその場で怒りを相手にぶつける手段に取って変わります。その場で表現できるため、ストレスとして蓄積が緩和されるのです。
また、感情が落ち着いた後にアンガーログを見返すと、自分の感情パターンを客観的に把握し、どのような状況でどのように反応しているのかを理解することができます。
怒りがどのように生じ、その時自分がどのように反応しているのかを知ることで、今後の対応を改善し、感情のコントロール力を高めることができるのです。
冷たい人だと思われる
怒らない人は、しばしば冷たい人だと勘違いされることがあります。
昔の学園ドラマにあったような熱血教師的な人であれば、ある意味「愛のある人」という印象を持たれるかもしれません。喜怒哀楽を相手にぶつけて「一緒に頑張ろうよ!」という人に対して、感情を表に出さず何を考えているのかあまりわからない人…印象はかなり違います。
怒らない人は怒りを抑えることで、対立を避けようとしているにもかかわらず、その態度が感情を欠いたものと見なされる可能性があるのです。
特に、相手が感情を共有することに価値を置いている場合、怒らない人は自分の気持ちを分かち合わないために、距離を感じさせる存在として捉えられることでしょう。
その上、他人に期待しない分あっさりと相手と距離を置くことがあり、他人からは無関心や冷淡であると誤解されることも。
当たり障りのない人間関係の構築はできますが、相手によっては「物足りない」と感じられる場合があるかもしれません。
ただし昨今の風潮を考えると「職場の人間関係はドライなくらいが良い」と感じている人がいることも事実。
結局「冷たい人」「アツイ人」というのも他人の尺度ですから、そこに気を取られ過ぎるのではなく、自分の心を守るためにどう感情を処理していくのかを考えることが大切だと言えるでしょう。
怒らない人の特徴を捉えて実践してみよう
怒らない人の最大の特徴は「感情のコントロール」です。今その場で感じたことをすぐに表明するのではなく、一呼吸置くことで「冷静な人」でいられるようになります。
ただし完全に感情を無視することはNG。その場でアンガーログに書くか、たまには誰かに聞いてもらうことも良いでしょう。
昨今は注意をすることがハラスメントと言われる場合もありますが、もちろん、職場において注意をするべきことにはきちんと指摘をする必要があります。
怒るのではなく相手にいかに伝えるか、言葉やトーンを考えながら「適切な怒り方」を心掛けてみてください。
全く怒らないことが、相手のためになるのかと言われればそうではないのです。
そして同様に、自分のためにも感情を出す必要がある場面だってあります。
建設的なコミュニケーションが取れるよう、意思表示の術を習得することがこれからの職場においてもっと求められるようになるでしょう。