食物繊維とは?食物繊維の働きと増やし方

ひじきの煮物





食物繊維を毎日意識して摂れていますか?

 

食物繊維をきちんと摂る事は生活習慣病をはじめとする様々な病気の予防に役立つとされ、その効果が期待されています。しかしながら日本人の多くが目標量を摂る事は難しいとされています。

 

今回のコラムでは料理が苦手な方でも忙しくても食物繊維を増やす事ができる食事のポイントを管理栄養士がお伝えします。

 

食物繊維とは

食物繊維は消化管の酵素によって分解されるタンパク質や脂質、糖質などとは異なり、消化酵素によって分解される事なく小腸を経て大腸まで届けられる性質を持っています。これによって便秘の予防をはじめとする整腸効果や血糖値の上昇をゆるやかにし、血中のコレステロール濃度を低下させるなど身体に有益な機能がある事が明らかになっています。

 

3大栄養素である炭水化物は、体内で消化されやすくエネルギーとして利用しやすい「単糖類、二糖類、デンプン」などと、消化されにくく体内で利用されにくい「食物繊維、糖アルコール」に分類されます。

 

2015年まで食物繊維は食べカスであり炭水化物の一部であるという扱いをされてきましたが、日本食品標準成分表2020年版(八訂)では炭水化物を「利用可能炭水化物」「食物繊維」「糖アルコール」に細分化し、それぞれ個別にエネルギー換算係数が定められました。

 

すなわち、食物繊維は少量ながらエネルギーになるという事です。糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルに次いで第6の栄養素として注目されています。エネルギー効率は低いものの、健康維持に欠かせないその理由を見ていきましょう。

 

食物繊維の働き

食物繊維は腸に届いてその力を発揮しますが、意外にも腸に届くまでの消化器官でも重要な役割を果たしています。

 

【口腔内(口の中)】

噛む時間を長くしたり、唾液分泌を促進する。また、歯垢を作る事を阻止したり虫歯を予防する。

 

【胃】

胃液の分泌促進や高い吸水力で食べ物の重さを増やし、滞留時間を長くする事で満腹感が得られる。

 

【小腸】

食べ物の吸収速度を遅らせて血糖値の急な上昇を抑え、コレステロールやミネラル、その他有害物質を吸着し、体内への吸収を抑制する。

 

【大腸】

腸内細菌叢に働きかけ、腸内細菌を整える働きをする。腸壁を刺激して腸の蠕動運動を促進し、排便を促す。

 

食物繊維の種類と働き

食物繊維には2つの種類がある事をご存知ですか?

 

食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分類され、それぞれの働きは異なりますが、現代人が抱える様々な病気の予防に役立ちます。

 

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維は植物の茎や葉を作る細胞壁の主成分で、水分を吸収する保水性が高いという特徴があります。不溶性食物繊維は水に溶けにくい性質であるため、消化管内で水分を吸い込んで膨張する事によって満腹感を生み出したり、便秘を改善させる働きがあります。

 

不溶性食物繊維の働き

 

・便秘予防

不溶性食物繊維は水を吸収して増す事で便をやわらかくし、量を増やす事で排便が促され、便の消化管通過時間を短くします。不溶性食物繊維を多く含む消化された食べ物が水分を吸収する事によりふくれると、腸の壁が伸び縮みします。その刺激によって腸の蠕動運動が促進され、排便をサポートしています。

 

・大腸がん予防

不溶性食物繊維は排便の量や回数を増やすため、有害物質を含む便が大腸を通過する時間が短縮されると大腸がんのリスクも下がると言われています。

 

・肥満予防

不溶性食物繊維は噛み応えのあるものが多く、多く摂る事で早めに満腹感を得やすいです。

 

※ただし、便秘がひどい場合には不溶性食物繊維を摂ると悪化してしまう可能性がありますので注意しましょう。

 

不溶性食物繊維の主な種類

 

・セルロース 

ごぼう、玄米、大豆に多く含まれます。植物の細胞壁の主成分で、腸内で水を吸収して膨らみ腸管を刺激して有害物質を吸着。この働きから便秘の予防や解消、体内の有害物質を排泄する効果があります。

 

・リグニン

いちご、梨、豆類、ココアに多く含まれており、植物の細胞壁を強くする性質があります。化学的変化を受けにくく、酸やアルカリにも強く大腸でも全く消化・吸収されない性質を持ちます。胆汁酸を吸着する作用があり、コレステロールを調整する働きがあります。

 

・キチン、キトサン

キチンはエビやカニなどの甲殻類の主成分で、人間の消化酵素で消化されない性質を持つものです。消化管内で胆汁酸を吸着して余分なコレステロールを排泄したり、体内に取り込まれた食品添加物や塩分、プリン体の排泄についてもその効果が認められています。また、キトサンはキチン精製したもので、加工食品の食物繊維成分として利用されています。エビは殻ごと食べる方がキチンを多く摂取する事ができます。

 

水溶性食物繊維

水に溶けやすい水溶性食物繊維は、腸内で不溶性食物繊維とは異なる働きで様々な効果を発揮します。海藻類全般に含まれている食物繊維であり、植物では柑橘類やコンニャク芋などに多く含まれます。

 

水溶性食物繊維は水分に溶けて混ざると粘性を持つというのが性質の一つです。消化物の中の糖を吸着させますが吸収されるまでに時間がかかるため、食後の血糖値の上昇をゆるやかにします。発酵性が高いため、乳酸菌やビフィズス菌を増やして腸内環境を整える働きも担っています。

 

水溶性食物繊維の働き

〇高血圧予防

ナトリウムと結びついて排泄を促します。

 

〇糖尿病予防

水溶性食物繊維の粘りにより、胃から十二指腸への食べ物の移動を遅らせる事によりでんぷんの消化吸収速度をゆるやかにします。その結果食後の急激な血糖値の上昇が抑えられ、インスリンの分泌も抑制されます。

 

〇コレステロールを排出して動脈効果予防

水溶性食物繊維には吸着性があり、小腸でコレステロールや胆汁酸を吸収して便の中への排泄を促進します。

 

水溶性食物繊維の主な種類

 

・βグルカン 

しいたけやマイタケなどのきのこ類に多く含まれ、免疫力を高めてウイルスや細菌に対する抵抗力を高めます。

 

・ペクチン

キャベツ、大根、みかん、りんご、柿などに多く含まれます。不溶性と水溶性のペクチンが存在しますが、不溶性のペクチンは未熟な果実に含まれており熟成するにつれて水溶性に変わります。水溶性ペクチンは血糖値の急な上昇を防ぎコレステロールの吸着を抑える作用があります。

 

・グルコマンナン

こんにゃくに含まれる食物繊維で、水を吸収しやすい性質から胃の中で膨らみ満腹感を得る事ができます。食べたものを胃で包み込んで消化・吸収を低下させる働きがあるため、糖尿病や脂質異常症の予防効果が期待されています。

 

・アルギン酸

昆布、わかめ、もずく、ひじきなどの海藻類の細胞間に含まれているゼリー状の多糖類で、海藻のぬめり成分を作っています。アルギン酸はナトリウムを吸着して体内での吸収を阻害するため、高血圧の予防に効果的です。その他にも血糖値の上昇を抑制したり、便秘の解消や動脈硬化の予防、大腸がんの予防作用もあります。

 

・フコイダン

昆布、わかめ、もずく、めかぶなどの海藻類に含まれるヌルヌル成分の元で、肝機能の向上や抗アレルギー、高血圧予防などの効果があります。昆布を原料としたフコイダンはがんの抑制効果があると言われており、注目されています。

 

効率よく水溶性食物繊維を摂るには、ひじき、めかぶ、もずく、焼きのり、わかめなどを食卓に増やしましょう。めかぶ、もずくなどはパック入りの商品が安価で購入できるので、冷蔵庫に常備するとよいでしょう。

 

日本人の食物繊維量が不足している原因

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日あたりの食物繊維の目標量(生活習慣病の発症予防を目的として現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は男性21g以上、女性18g以上(共に18~64歳の場合)です。

 

しかしながら「平成29年国民健康・栄養調査」によると、食物繊維は男女問わず全ての年代で不足しているのが現状です。

 

30〜49歳では約12〜13.5g程度しか摂れておらず、若年化するほど食物繊維の摂取量は減少しています。不溶性食物繊維と水溶背食繊維の理想的な摂取比率は不溶性2:水溶性1の割合が望ましいとされており、不溶性と水溶性を2:1の割合で摂る場合、男性は不溶性を14g以上、水溶性を7g以上、女性は不溶性を12g以上、水溶性を6g以上摂る事によって1日の摂取目標量が満たされます。

 

日本人の食事が欧米化し、軟らかく噛みやすい食事が好まれていった事が、食物繊維量の低下に繋がったと予想することができるでしょう。

 

食物繊維が不足すると便秘を引き起こします。さらに、腸内でつくられた有害物質が長く留まる事で腸内環境が悪化し、発がんのリスクが高まります。これらの疾病を未然に防ぐ為にも、1日あたり3~4gあたり食物繊維をプラスする事を目標に、積極的に摂取する事が求められます。

 

食物繊維の簡単な増やし方

便秘を始めとする疾病のリスクを下げたいが、どうすれば簡単に食物繊維を増やす事ができるのか、難しいと考える方もいますよね。食物繊維は以下の食材を用いて簡単に摂取量を増やす事が可能です。

 

キノコ類で増やす

キノコ類は天候に左右されず、価格が安定しているので食卓に並べやすい食品です。不溶性食物繊維に富んでいる事が特徴で、うまみ成分が豊富です。

 

きのこは未開封ならば温度が一定の冷蔵庫の野菜室で保存するのがベストです。1週間くらいで使い切るようにしましょう。使いかけの場合はきちんとラップで包んで冷蔵庫の野菜室で保管します。

 

買ってもすぐに使わない場合はばらばらにして冷凍しておくと味を損なわず使いたい時に取り出せて便利です。ちぎって炊き込みご飯に入れる、細かく刻んでギョーザやハンバーグの具に混ぜる、様々はキノコを炒めて醤油、みりんで佃煮にするなど、作り置きにも向いています。

 

大豆製品で増やす

定食屋でよく目にする小鉢のお皿に入っている豆類のおかずを想像してみて下さい。ゆで大豆を45g使用すると、約6gもの食物繊維を摂る事ができます。60gの枝豆だと約3gの食物繊維を摂る事ができ、納豆1パックでは約2.5gの食物繊維量を増やす事ができます。主食の肉や魚に加え、副菜に大豆製品を選択する事で効果的に食物繊維を摂る事ができます。

 

乾物で増やす

乾物で食物繊維の量が多く使い勝手が良い食材は切干し大根です。同じ量を摂るにしても、ただ茹でただけの大根に比べると食物繊維の含有量は2倍近くにもなります。また、油で炒めると更にカサが減るので更に食物繊維量が増加します。

 

その他にも、干ししいたけや乾燥ひじきにも食物繊維が豊富に含まれていますので、常備しておくと便利です。乾物は彩が少なくあまり魅力的に見えないかもしれませんが、栄養価は凝縮されており、日本人にもっと利用してほしい食材です。

 

コンビニや外食で増やす

コンビニ食では食物繊維を摂ることは難しいという先入観はありませんか?実は、コンビニに売られている食べ物でも食物繊維を増やす事が可能です。

 

例えばパンを選ぶ時は普通小麦からライムギパンやふすま入りのパンにチェンジした方が食物繊維を手軽にアップする事が出来ますし、おにぎりを選ぶ際も昆布や納豆巻き、大麦入りのおにぎりに変更すると食物繊維を手軽に摂る事ができます。

 

不溶性食物繊維は野菜全般に含まれていますが、ごぼうは特に含有量が多いため、ごぼうを使ったサラダがあれば選ぶようにしましょう。また、カボチャにも食物繊維が多く含まれているのでかぼちゃの煮つけなどのお惣菜もオススメです。外食では丼や麺類などの単品買いになりやすいですが、キノコが入ったパスタや海藻サラダなどがあれば選ぶしょうにしましょう。

 

果物で増やす

普段の食事にプラスして、食物繊維を果物で増やす方法も手軽で良いですね。食物繊維が多く含まれる果物は、キウイフルーツ(グリーン)、パパイア、リンゴ、柿、パイナップル、桃、マンゴーなどです。普段のおやつがお菓子やアイスに偏りがちなら、上記以外にも旬の果物を優先的に食べる習慣を付けるよう工夫してみましょう。朝食に取り入れるのもオススメです。

 

最後にこれだけ覚えておくと安心

食物繊維が野菜に多いとはいえ、生の野菜ばかりではカサが多く量をとる事は難しくなります。野菜を増やす場合は煮物やお浸しなど火を通した方がたっぷりと食べられます。

 

食物繊維を増やす事に難しさを感じてしまう方は、まごわや(さ)しいが入った昔から日本にあるお惣菜を意識すると、簡単に継続して食物繊維を増やす事ができます。ぜひ思い出してみて下さいね

 

【まめ】納豆を1品増やす、大豆のパックをサラダやカレーに入れる、おからをハンバーグに混ぜるなど

 

【ごま】ごま塩をごはんにかける、すりごまを冷やっこにかけるなど

 

【わかめ】サラダにカットワカメを乗せる、味噌汁にとろろ昆布を入れるなど

 

【やさい】切干し大根を利用する、焼肉は野菜を巻いて食べるなどの工夫をする

野菜の中でも小松菜、ほうれん草、ケール、ごぼうは食物繊維を多く含む

 

【しいたけ】炊き込みごはんに入れる、味噌汁に入れるなど

 

【いも】焼き芋やイモの天ぷらを選ぶ、干芋をおやつに食べるなど

 

まとめ

いかがでしたか?

 

平日は仕事が忙しくコンビニ食や外食が増えがちになり、食物繊維を意識する事が難しいかもしれません。しかし、コンビニではライ麦や大麦などの商品を選べるようになりましたし、外食では小鉢に野菜や納豆を選びやすくなりました。

 

週末には豆やキノコ類を意識して増やすようにすれば、1週間単位で無理無く食物繊維を増やす事ができます。洋食や外食続きで栄養のバランスが崩れてきたなと感じる時は、ぜひまごわやさしいの頭文字を思い出してみて、1gでも食物繊維を増やしてみて下さいね。

 

食物繊維の不足状態は便でチェックする事もできます。理想的な便の状態は、

 

①色が黄色~茶色(黒っぽくない)

②バナナ2本分位の量で硬くない

③水洗トイレの水に浮く 

 

です。便は体からの健康通知表ですので、ぜひ毎日トイレでチェックする習慣を付けて下さいね。

 

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執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士

生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。