低体温という言葉を聞いた事はありますか?
基礎代謝の低下により日本人の体温は低下しています。冷えは万病のもとと言いますが、体温が低い事で私達の体にどのような影響があるのでしょうか。今回のコラムでは低体温の目安や原因、低体温を予防する食事と生活のポイントを管理栄養士が解説します。
低体温とはどんな症状?
低体温は病気ではありませんが、放っておくと病気や不調を招く原因となります。低体温について知っていきましょう。
低体温と免疫
はっきりとした定義はありませんが、体温計での測定結果が36.0℃以下の人は低体温の可能性があります。理想の体温は36.5~37.0℃とされ、体温が1℃下がると基礎代謝が10~20%、免疫力が30~40%低下すると言われています。
人間は体温を一定に保っていないと生きて行けない恒温動物であるため、エネルギーの約60%以上を体温を保持する為に利用しています。
体温よりも寒い場所にいると、視床下部が熱を逃がさないようにして熱を作る司令を出します。その指令から毛細血管を細くして皮膚からの熱の放出が少なくなる事により体を温めるよう働きます。逆に体温よりも暑い所にいると、視床下部から熱を外に出すための指令が出て毛細血管を広げ、熱の放出を始めます。それでも体の体温が下がらないと、汗をかくように指令が出て水分が水蒸気になる時に熱が奪われて体温が下がる仕組みになっています。
体温は脳にある視床下部という所で調節されていますが、1日の中でも体温は微妙に変化しています。多くの場合体温は目覚める直前がもっとも低くなり、そこから徐々に体温が上がるにつれて体が目覚めて活動的になります。体温のピークを迎えるのは夕方で、そこからゆるやかに低下する事で眠りに落ちて行きます。
低体温になると、血管が収縮して血流の流れが悪くなります。血液の中には免疫機能を持った白血球が存在しているため、低体温になると体の中を流れる血液の早さがゆっくりになり、血行が悪くなると体の隅々まで血液が行き届かなくなり病気から身体を守る働きをする免疫力も低下します。低体温により内臓や体の機能が低下することで関節や胃腸に不調が現れたり肩こりや腰痛を引き起こす原因になります。
また、耳にする事の多い低体温症とは雪山でのレジャーや雨風によって起こりやすいもので、低体温とは異なります。高齢者や女性に多い冷え性とも異なります。
低体温と基礎代謝
低体温の状態が続くと基礎代謝が下がり、痩せにくい体質になってしまいます。メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の改善も難しくなってしまうため、体温を高く保ち基礎代謝を上げる生活を心がけましょう。
基礎代謝についてもっと詳しく知りたいは、こちらのコラムをご覧下さい。
低体温になる原因
体温と深い関係があるのが基礎代謝です。基礎代謝の低い人はあまり運動をしない、体温が低いなどの傾向があります。つまり、低体温は基礎代謝を低下させ太りやすくさせます。
現代人に低体温の人が増えている原因としては、昔よりも便利な社会になった事により運動量が減ってしまった事やエアコンの普及により体温調節機能が弱くなってしまった事などが挙げられるでしょうます。
低体温によって肩こりや便秘、頭痛、月経痛、疲労などは放置すると悪化するケースもあり、仕事のパフォーマンスの低下にも繋がります。
低体温になりやすい人の特徴
女性や高齢者などは低体温になりやすいと言われています。また疾患などによって低体温が引き起こされることもあります。
女性に多い低体温と対策
男性よりも女性に多くみられる低体温ですが、それは熱を生み出す筋肉の量が少ない事や、妊娠・出産などの機能が備わっているため体を保護するための皮下脂肪が男性よりも多く蓄えられているため基礎代謝が低く低体温になりやすいという特徴があります。
特に月経中は基礎体温が下がるため、ランチは温かい食事を心がける、軽い運動をするなどの対策が出来ると良いですね。
高齢者と低体温
加齢に伴い体温が低下する事が分かっています。その理由は筋力が低下する事での基礎代謝のが低下や食事量が減る事でのエネルギー消費量の低下が主な原因とされています。
病気によって起こる低体温
甲状腺は喉の付け根にある新陳代謝を促すホルモンである「チロキシン」を分泌しています。病気などで甲状腺ホルモンが減少すると、熱を生む働きが弱まり体温が下がってしまいます。
甲状腺の機能が低下すると低体温の他にもむくみ、動悸、便秘などの症状を伴います。気になる症状があれば病院を受診するようにしましょう。
食事から低体温を防ぐ方法
低体温を防ぐ方法を見ていきましょう。
エネルギー不足を補う
熱を生み出すには1日の食事量を減らさない工夫が大切です。低体温を予防するには、まずは朝ごはんを食べる習慣をつけましょう。朝ごはんの役割は体を目覚めさせる事と、体温を上げる事です。
会社勤めの場合はランチ時は忙しく十分な食事を摂れない時もあると思います。そのような時は間食を上手く利用します。チョコレートや菓子パンよりも野菜や卵の入ったサンドイッチを食べる、大豆バーを常備してタンパク質を補うなどの工夫をしましょう。また、消化を良くする為にもよく噛んで腹八分目を意識する事も大切です。
タンパク質を欠かさない
タンパク質は筋肉や臓器など体を構成する最も重要な成分であり、酵素、ホルモン、免疫抗体などの原料になります。
タンパク質の質を評価する指標が「アミノ酸スコア」と呼ばれるもので、タンパク質を構成している20種類のアミノ酸の充足度を表したものです。一般的にタンパク質源となる肉、魚、卵、大豆、乳類はアミノ酸スコアが高いので、1日3食、片手の手のひら1つ分のタンパク質のおかずを目安に摂るようにしましょう。
例えばお米やパンだけではアミノ酸スコアが低いですので、ここに豆や卵、チーズをプラスする事でアミノ酸スコアを100に近づける事ができます。炭水化物に偏る食事ではタンパク質が足りない事を覚えておきましょう。
体を温める食材を利用する
一般的に、寒い地方でとれる食べ物や根菜類などは体を温める性質が多いとされています。たまねぎ、にんにく、しょうが、にんじん、ごぼうなどの食材を積極的に摂りましょう。
油を見方につける
脂質は三大栄養素のうちの1つで、エネルギー源や細胞膜、血液の材料になる重要な栄養素です。油には体温を保持する働きがありますので、健康の為に油を避けているという方は低体温予防の為にも体に必要な油を意識して摂る必要があります。
例えば30~40代の女性の場合、1日に必要な脂質の摂取量は
豚肩ロース 100g
さば1切れ
納豆1パック
牛乳 200㎖
炒め物の油 小さじ2
これらの合計が1日に必要な脂質の目安になります。揚げ物ばかりでなく、豆や魚からも良質な脂質を摂り入れていきましょう。
腸内環境を整える
体を守る免疫の大部分は腸にあると言われています。腸には小腸、大腸合わせて体の70%の免疫細胞が集中しています。これが「免疫は腸から生まれる」と言われる所以です。
体を温める食事として取り入れて行きたいのが腸内細菌の中の善玉菌です。善玉菌が増えるメリットは腸内の環境が整い消化が良くなる事で代謝がアップして体温が上昇する点です。和食には昔ながらの発酵食品や食物繊維が豊富な雑穀、豆類、根菜類など、善玉菌を優位にする食品を多く摂れるメリットがありますので、外食では和食をチョイスする事をオススメします。
体を冷やす冷たい食べ物を控える
昔は暑い夏には冷たい食べ物や飲み物を摂取して体の熱を冷ますのが一般的でしたが、どこに行くにも冷房が完備された現代で毎日冷たいものを摂っているとすぐに体温が下がってしまいます。
暑い時に冷たいものを摂ると気分が良く頭もスッキリしますが、これは一時的に体を緊張状態にしているのにすぎません。このような生活が続くと交感神経が優位になりすぎて血管が収縮され、血流の流れが悪くなってしまいます。夏でも常温の飲み物や温かい食事を心がけましょう。
低体温を防ぐ運動
冷えを防ぐには食生活にプラスして適度な筋力を付ける事です。人間の体温の40%は筋肉から発生しますので、まずは筋肉量を減らさない工夫が必要です。
しかしながら、いきなり運動を始めるのは心の負担になる事もありますよね。
朝はゆっくりした運動で血流を良くするためラジオ体操をするのはどうでしょうか?
下半身の筋肉をつけと血液を循環させるポンプの役割が強まり、体を温めるのに役立ちます。ウォーキング、スクワット、かかと上げ運動などを運動を習慣づける事もオススメです。
体温を上げる生活の工夫
基礎体温は、生活の中の一工夫によっても上げることが可能です。ここからは生活の工夫によって基礎体温を方法を見ていきましょう。
衣類
体を冷やさない衣類選びも低体温予防には大切です。冬に身体を温める以外にも寒暖差が激しい春や冷房の効いた夏も冷えに繋がります。冷房の効いた電車やオフィスなどの冷えやすい環境では服装を見直し、体を温める工夫が必要です。
夏は首まわりや腕を露出する服装が多くなるのでエアコンの強い冷気を直接受けてしまいます。寒さを感じたらすぐに対処できるように、薄い大きめのストールを持ち歩くと便利です。
質の良い睡眠を心がける
睡眠不足は自立神経のバランスを崩し低体温を招きます。睡眠時間が不規則であったり、飲酒や寝る直前に食事をすると睡眠の質を下げる原因になります。体に良い働きをするホルモンの分泌を促したり免疫機能を上げて低体温を防ぐ為には遅くとも夜12時には入眠するようにしましょう。
ストレスと上手に付き合う
いつもイライラを感じていると、自律神経が乱れやすく低体温を招きます。ストレスを完全に消し去るのは難しいかもしれませんが、考え方を変えて軽くする事は可能です。イライラしているなと感じたら、まずは呼吸を見直しましょう。
現代人はスマホやPCを使用する頻度が多く猫背になりやすいため呼吸が浅くなりがちです。仕事の合間に席を立ち、深呼吸してみましょう。鼻から息を吸い、おへその下の方を意識しておなかを膨らませ、鼻からゆっくりと息を吐きます。「忙しい時ほど深呼吸」を心がけるようにします。
まとめ
いかがでしたか?
低体温は免疫力に深く関係しており、低体温を放置していると風邪を引きやすかったり流行りの感染症にかかってしまう可能性が高まります。低体温の原因にはストレスによる自立神経の乱れ、無理なダイエットによる体重の減少、運動不足や加齢による筋肉量の減少などがあります。
低体温を予防する方法は食事からでも運動からでも続けやすい方法からスタートしていきましょう。健康的に長く働き続ける為にも日頃から体温を上げる生活を心がけ、仕事やプライベートに注ぐ力を存分に発揮しましょう。
社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。