骨粗鬆症という病気は有名ですが、歳をとったら骨がもろくなるのは避けられないと思っていませんか?
骨折や寝たきりにも繋がってしまう骨粗鬆症を予防し、強い骨を作る為には日々の食事と運動が大切です。強い骨を維持するポイントについて管理栄養士がお話します。
骨粗鬆症はどんな病気?
骨粗鬆症の症状やかかりやすい年齢についておさらいしていきましょう。
骨粗鬆症のリスクは誰にでもある
骨粗鬆症とは骨密度が低下して骨が弱くなる病気です。骨粗鬆症の原因として、加齢は避ける事ができないため高齢者の人口増加に伴い患者数は増える傾向にあります。
私たちの骨は皮膚や粘膜と同様に新陳代謝を繰り返し、日々新しい骨を生み出しています。その仕組みは骨を壊す働きをする破骨細胞と骨を作る骨芽細胞の働きにより、驚く事に約3年で全身の骨が入れ替わっているのです。
成長期には骨芽細胞の働きが優位になって骨が成長し、大人になってからはこの2種類の細胞がバランスを取りながら働く事で健康な骨を維持しています。
しかし加齢などで骨量が減少し、骨の内部がスカスカになると状態が骨粗鬆症が引き起こされます。骨粗鬆症によって骨折しやすい部位は背骨、脚の付け根、手首、腕の付け根です。骨がもろくなるとちょっとした転倒で骨折しやすくなったり、くしゃみや咳などのわずかな衝撃でも骨折してしまう事があるのです。
背骨が体の重みで押しつぶされていく圧迫骨折は背中が曲がる原因となる他、内臓を圧迫して消化不良や胸焼けなどの内臓不調を引き起こします。足の付け根にある大腿骨などの大きな骨を骨折してしまうと、寝たきりや認知症のリスクを高めてしまいます。
また、若い人がやってしまいがちな過度なダイエットなどによる栄養バランスの偏りも、将来的に骨粗鬆症のリスクを高めてしまうので注意が必要です。若い女性の痩せは深刻化しています。間違ったダイエットの危険性について、詳しくはこちらのブログをご覧下さい。
なぜ閉経後に骨折しやすくなるの?
骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い病気です。その理由は、閉経後に骨芽細胞を活発にしたりカルシウムの吸収に役立っていた女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することにあります。これにより閉経後には骨量が急激に低下して骨粗鬆症のリスクが上がってしまうのです。
更に女性はエストロゲンの働きでカルシウムの吸収を助けてもらっていましたが、閉経後にはエストロゲンが減少する為に急速に骨が弱くなってしまうのです。
骨折して初めて骨量が減ってきた事に気が付く事が多いので、骨量測定を積極的に受けるようにしましょう。また、歳をとるにつれてカルシウムの吸収率も低下しますので閉経前から骨の健康を保つ栄養素を積極的に摂る必要があります。
強い骨を作るための食事のポイント
骨粗鬆症を予防する食事は難しくありません。骨は食事から摂取した栄養素を材料にして作られますので、骨粗鬆症予防の為には1日3回バランスのとれた食事を摂る事を心がけましょう。骨に良い栄養素を摂るための食事のポイントをお伝えします。
強い骨を作るために必要な栄養素
強い骨を作る栄養素と成分、食事のポイントについてご紹介します。
コラーゲン
意外かもしれませんが、コラーゲンは骨粗鬆症を予防する成分です。皮膚、骨、腱などに多く含まれており、人体のタンパク質の約30%を占めています。
コラーゲンは骨芽細胞などの特定の細胞でアミノ酸から作られ、骨や軟骨を作る重要な役割をしています。動物性食品の骨や皮に多く含まれていますので、魚の皮や鶏手羽などのから摂ると良いですね。
カルシウム
骨の健康といえばカルシウム!と一番に思いつく栄養素ではないでしょうか。
体内のカルシウムの実に99%が骨と歯に存在しています。丈夫な骨や歯を作る以外にも、筋肉の収縮や心臓を規則正しく動かす働きもしています。
日本人がカルシウムを不足させやすい原因の1つに、日本の土壌の特性が挙げられます。日本の水は軟水で、河川のカルシウム含有量はヨーロッパの約1/4と圧倒的に少ないのです。水だけでなく野菜をはじめとした植物に含まれるカルシウム分も硬水のヨーロッパと比べて必然的に少なくなります。慢性的なカルシウム欠乏になると骨から血液中へカルシウムが流れ出て余分なカルシウムが血管などに沈着し、高血圧や動脈硬化などの生活習慣の原因となってしまう事もあります。
密度の高い骨を作るには20歳までの食事や運動が重要になりますが、骨の強度を保つためには生涯を通してカルシウムの摂取を心がける必要があります。
成長期の子どもや歯や骨が弱い方、更年期の女性、高齢者は特にカルシウムを意識して毎日の食事を摂る事が大切です。18~70歳代の女性が1日に必要なカルシウムの量は650mgです。
食品ではおよその数値ですと牛乳200㎖、プロセスチーズ1個、小さいヨーグルト1個、茹で小松菜の小鉢、モロヘイヤ50g、しらす大さじ2でカルシウムを約600mg摂る事ができます。カルシウムを多く含む以下の食品をローテーションして組み合わせ、積極的にカルシウムを摂りましょう。
〇乳製品
・牛乳
・ヨーグルト
・チーズ
〇魚介類
・干しエビ
・ワカサギ
・丸干しマイワシ
・シシャモ
・しらす干し
〇豆類
・もめん豆腐
・納豆
〇野菜類
・モロヘイヤ
・小松菜
・大根の葉
・水菜
・チンゲンサイ
・切干し大根
マグネシウム
マグネシウムはカルシウムと共に骨や歯を強くする重要なミネラルです。50~60%は骨に含まれ、残りは肝臓や筋肉、血液にでタンパク質と結合しています。魚介類、海藻類、豆類、アーモンドなどに多く含まれています。日常的に白米を雑穀米に変えてみたり、お味噌汁にワカメを入れてみるなどの工夫で簡単に摂る事ができます。
☆注意点☆
カルシウムとマグネシウムは摂取する比率が大切です。カルシウムを多く摂りすぎるとマグネシウムの排泄が増えてしまうのでマグネシウムとカルシウムの摂取の割合は1:2が望ましいとされています。カルシウムとマグネシウムはセットで摂りましょう。
ビタミンK
ビタミンKは血液中のカルシウムが骨になるのを助ける栄養素で、骨粗鬆症の治療薬としても使用されています。また、ビタミンKは骨からカルシウムが排出されるのを防ぎ、骨を丈夫に保つ働きがあります。不足すると骨にカルシウムが沈着せず、もろくなってしまいます。
ビタミンKは納豆や海藻類、緑黄色野菜に多く含まれています。
ビタミンD
食物として体内に入ったビタミンDは肝臓と腎臓で少しずつ作り変えられて活性型のビタミンDになります。活性型になるとカルシウムの吸収に必要なタンパク質の合成を盛んにし、小腸からのカルシウムの吸収を高めてカルシウムの働きをサポートできるようになります。
ビタミンDが多く含まれる食材はキノコ類、魚、卵などです。
いつものメニューに取り入れたい食材
じゃこや桜えびはチーズトーストやピザにパラパラとかけるだけでカルシウムたっぷりの一品になります。厚揚げや豆腐にもカルシウムが含まれますので大豆製品の副菜を増やしましょう。
また、効率よく骨粗鬆症予防をする食べ方のコツもあります。
ビタミンDが豊富な魚やキノコ類、ビタミンKが豊富な緑黄色野菜を一緒に摂るには
焼き魚と野菜炒めを食卓に並べると効率良く骨粗鬆症予防食が出来上がります。
骨の生成を妨げる成分
カルシウムの吸収を低下させ骨を弱くする成分についても知っておきましょう。
リン
聞き馴染みのない栄養素ですが、体内にあるミネラルのうち、リンはカルシウムの次に多く存在します。体内の約80%のリンはカルシウムと結合してリン酸カルシウムに変わり、骨や歯の成分となります。
リンは骨を作る為に必要な栄養素ですが、カルシウムとのバランスがとても大切です。多くとりすぎるとカルシウムとリンのバランスが崩れる事で腸内でカルシウムと結びつき体外に排泄されてしまいます。リンは加工食品に多く含まれるため、インスタント食品の過剰摂取はカルシウム不足に繋がります。
塩分
塩分のとりすぎはカルシウムの利用効率を悪くします。骨の健康の為にも薄味を心がけましょう。
アルコール
アルコールはカルシウムの吸収を悪くしビタミンDの働きも抑えてしまいます。飲酒の頻度が高い方は注意しましょう。
カフェイン
カフェインはカルシウムの吸収を悪くします。コーヒーや紅茶を多飲する方は水分摂取のを水かノンカフェインのお茶に切り替えましょう。
骨を強くする運動
日常生活で骨を強くする方法を見ていきましょう。
どんな運動で骨が強くなる?
吸収したカルシウムを効率よく骨に利用させるためには適度な運動が必要です。運動を続ける事により、骨の強度が高まった事例もあります。骨への適度な刺激は新しい骨を作り出す働きを活性化させるので、健康的な骨作りの為には毎日コツコツと軽い運動を取り入れる事が理想です。
特にかかとへの刺激が骨の合成を活発にすると言われているため、ウォーキングや階段の上り下りが効果的です。転ばない、歩ける脚を作る為には片足立ち運動やスクワットを日常的に行うのがおすすめです。
日光を浴びると骨が強くなる
日光を浴びると骨が丈夫になる事を知っていますか?日光に含まれる紫外線はビタミンDの生成を促し、カルシウムを体内で吸収しやすくする働きがあります。
都道府県によって日照
時間に差がありますので、冬場の日照時間が短い東北や北陸に住んでいる方は特に晴れた日に散歩をするように心がけましょう。毎日室内でデスクワークをする場合も、休憩時間に外に出てみるのも良いですね。
睡眠と骨の関係
睡眠中、私達の体内ではさまざまなホルモンが分泌されていますが、中でも骨にとって重要なのは「成長ホルモン」です。成長ホルモンは直接骨に働きかけて骨の成長と修復の役割をしています。眠っている時には脳の休息の為に深い眠り(ノンレム睡眠)と筋肉の休息のための浅い眠り(レム睡眠)が交互に現れますが、良い睡眠はノンレム睡眠が大半を占めており、眠りの前半に集中しています。この時に成長ホルモンが大量に分泌されます。
寝る前には照明を暗くしたりテレビやスマホをOFFにするなど、深い眠りにつく準備をしましょう。骨の健康の為にも深い睡眠をとる事が大切です。
まとめ
いかがでしたか?骨粗鬆症は閉経を期に症状が出やすく女性がかかりやすい病気と言えます。加齢やホルモンの関係で骨がもろくなってしまう事は避けられませんが、カルシウムを含む骨を強くする栄養を摂ったり、運動をして骨を強くする事は可能です。骨折や寝たきりの生活を予防する為に、今日から骨粗鬆症予防を始めて健康で働き続けられる体を作っていきましょう
社員の健康管理については、ぜひライフサポートサービス株式会社にご相談ください。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。