突然ですが、想い出してみてください、最後に「あー、良く寝た!」とスッキリ目覚めた朝のことを。
なかには、大人になってからスッキリ目覚めた朝などない、なんて人もいるかも知れません。
「寝たのに眠い」「目覚めが悪い」「仕事中ボーっとしていることが多い」など、睡眠を取ってもスッキリしないのは、睡眠の質が悪い可能性があります。
睡眠の質は、日頃の「ちょっとした工夫」で改善の期待が大いにできるものです。スッキリした目覚めのために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
あなたは何時間寝ていますか?
厚生労働省の調査によると、睡眠時間が6時間を切っている人は男性で37.5%、女性で40%とともに高い割合となっています。
参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf)
個人差はあるとしても、適正な睡眠時間は6時間以上とされているため、日本全体で睡眠不足気味であることがこの調査からわかります。
この結果を裏づけるように、実体験としてほとんどの方が「寝不足でのパフォーマンス低下」を知っているのではないでしょうか。
身体はだるく、あくびが頻発して些細なミスを起こしてしまう。
仕事上のこういった非効率は寝不足がもたらす産物ですが、それ以上に深刻な問題があります。それは寝不足がもたらす「重大な健康問題」です。
「睡眠の質が高い」とはどういう状態?
睡眠の質が高い状態とは、心地よい睡眠が続き、目覚めたときに熟睡した実感がある状態を指します。深い眠りで体と心がゆっくりと休息し、朝にはスムーズに目覚めて疲れやだるさを感じず、エネルギーが充実している実感があるかどうかが、睡眠の質の判断基準となります。
睡眠の質を推し量るポイントは睡眠時間が「一晩を通しての連続性」であることです。眠りが途切れず、浅い眠りが少ないことが良質な睡眠とされます。睡眠から目覚めたとき、身体全体がリフレッシュされ、新たな一日に備えている感覚が大切です。
そして、日中の生活リズムや活動感も睡眠の質が高いかどうかの判断基準に含まれます。
日中、心拍数や呼吸が安定していてストレスや緊張感を感じにくくメンタルヘルスが安定しているかどうかも重要です。
このように心身ともに健康的な特徴が揃ったとき、睡眠の質が高いと認められます。
睡眠休養感
6時間以下の睡眠時間であっても1日元気な人もいれば、8時間以上の睡眠を取っているのに慢性的な寝不足感に悩まされる人もいます。この違いは「睡眠休養感」にあります。
睡眠休養感とは「夜間の睡眠により休めた主観に基づく睡眠の指標」とされ、わかりやすい言葉で表すと「しっかり眠れたかどうかの指標」です。これが「睡眠の質」として今、睡眠時間と合わせて重要視され始めています。
最も健康被害を与える組み合わせとしては、睡眠時間が6時間よりも少なく睡眠休養感が低い場合です。30代から40代のいわゆる「働き盛り」の世代は睡眠時間が短くなる傾向にあるとされます。いかに睡眠の質をあげて休養を補填するかが、忙しいなかでも健康的な生活を送るポイントとなるわけです。
なぜ睡眠の質が大切なのか
睡眠の質が高いことで心身の状態を健康に保てることは、多くの方が身をもって経験したことがあるでしょう。睡眠の質が高ければ疲労回復に繋がることはもちろん、記憶力の定着や免疫力の向上など、さまざまな身体機能を活性化してくれます。
仕事にも影響する睡眠の質、高めることでどんなメリットがあるのでしょうか。
免疫機能の強化
睡眠の質は体の免疫機能と深い関係があります。質の高い睡眠を確保することは、体の防御機構を強化し、健康を維持するために不可欠です。
睡眠中、私たちの身体は修復と再生のプロセスに入ります。身体を修復する「成長ホルモン」や免疫細胞の「T細胞」、免疫を上げる「メラトニン」などは睡眠中に分泌されます。私たちの身体は眠ることによって、あらゆる感染症や病原体と戦うための力を蓄えているのです。
睡眠不足に陥ることは、この回復プロセスを妨げ、免疫細胞の機能低下を引き起こし、感染症に対する抵抗力が弱まりかねない状態になってしまいます。
そして質の悪い睡眠は、ストレスホルモンである「コルチゾール」の調節にも影響を与えます。コルチゾールとは副腎で合成・分泌されるホルモンで、肝臓での糖の新生、筋肉でのタンパク質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝促進、抗炎症などといった身体機能に必要な働きをします。
コルチゾールが増加すると、体重の増加や高血圧といった症状を引き起こすとされ、睡眠不足がコルチゾールの分泌過多につながるとされています。
健康な生活を維持するために十分な睡眠時間を確保し、良い睡眠習慣を整えることは、心身の健康を維持する鍵なのです。
認知機能の向上
睡眠不足のとき、ぼーっとして忘れ物やうっかりミスが頻発した経験がありませんか?注意不足でもありますが、実は睡眠不足と認知機能の関係性も指摘されています。
睡眠は脳や神経系にとっても重要な修復と再生の時間です。
認知症の原因ともされる「アミロイドβ」は通常、睡眠中に脳から血液中に排出され、肝臓で無毒化されます。しかし睡眠不足では、アミロイドβは脳からの排出が低下し、蓄積がされていきます。そのため、長年の睡眠不足は認知症の原因の1つとなるとされているのです。
適切な睡眠を得ることは認知機能の向上を促します。睡眠の質を高めることは健康寿命を高める方法でもあるのです。
生活習慣病のリスクを下げる
高血圧やメタボリックシンドローム、糖尿病など、すぐそこにある生活習慣病。中年以降の疾患のイメージが強いですが、昨今では若年層の生活習慣病が増加していると警鐘が鳴らされています。
生活習慣病はまさに「生活習慣」の乱れに起因するものが多く、睡眠不足もその原因の1つとしてカウントされます。
睡眠不足が続くと、食欲を調節するホルモンのバランスが崩れます。食欲を抑える「レプチン」が減少し、食欲を増進する「グレリン」が増加することによって、過食や不健康な食生活の傾向が強まるのです。
さらに、食欲を亢進させる「オレキシン」が増えることにより「糖質の高い食べ物」を身体が欲するようになり、糖尿病のリスクを高めるのです。仕事の休憩中、甘い物ばかり求めてしまうのは、ストレスのサインとみせかけた「寝不足」かも知れません。
睡眠不足と糖尿病は深い関係が指摘されています。睡眠の質が低下しているときや睡眠不足は、血糖値の調節を担当するホルモンに影響を与え、基礎インスリンの分泌が低下し、2型糖尿病の発症リスクを増加させる可能性があります。
他にも、睡眠不足は高血圧や動脈硬化、心臓疾患のリスクなども高めるでしょう。睡眠の質を改善してしっかり身体を休めることは、生活習慣のリスク回避となるのです。
メンタルヘルスの安定
睡眠不足でイライラしている人、いますよね。睡眠は感情や精神の安定にも影響を与えます。
これは、身体機能に大切な「自律神経」が乱れることで生じるとされています。
寝不足の状態では交感神経優位な状態が続きアドレナリンの過剰分泌がイライラや不安につながります。そのため、些細なことで攻撃的になったり、不安から怒りに繋がったりと精神状態を不安定にさせる恐れがあるのです。
十分に質の高い睡眠を取ることで、交感神経と副交感神経とのバランスが整い、ストレスや不安の軽減へと繋がっていくのです。
それでも仕事中、イライラしてしまうことありますよね。そんなときはぜひ「オフィスでできるいらいら解消」を行ってみましょう。こちらの記事で詳しく解説していますので併せてお読みください。
どうしてなの?イライラが止まらない…オフィスでのイライラ解消に役立つあれこれ!
睡眠の質を上げる習慣を取り入れよう
睡眠の質は心掛けで向上することができます。しかも「心掛け」ですから導入コストゼロ!睡眠改善の高級なサプリメントや高価な寝具に買い替える前に、出来ることから睡眠の質改善を始めてみませんか?
規則正しい生活
規則正しい生活は、睡眠の質向上の基礎です。
私たちの身体には「体内時計」が備わっています。この体内時計は体温やホルモン分泌などを調整してくれます。
約1日周期でリズムを刻む体内時計が正常に機能していることで、私たちは意識していなくても日中は心身が活発化し、夜間は休息状態に切り替わるのです。
基本的には、同じ時間に寝て同じ時間に起きることで、体内時計は整うとされています。自然な睡眠と目覚めのサイクルが整い、就寝前や覚醒時の体温やメラトニンの分泌が理想的な状態に整えられていくのはまさに身体の神秘です。
そして朝に太陽を浴びるのも大切です。
先ほど「体内時計は約1日周期」とお伝えしました。実は1日が24時間であるのに対し、体内時計は25時間の周期を刻みます。そしてこのずれを調整してくれるのが、太陽光なのです。
体内時計に指示を出しているのは脳の視床下部にある視交叉上核と呼ばれる部分です。朝に太陽光を浴びて目からその光の情報を視交叉上核が受け取ると、体内時計は一旦リセットされズレの修復がなされます。
この工程がなければ、体内時計のリセットがされずにズレが蓄積され、ホルモンバランスの崩れなどが起こってくるとのこと。
規則正しい生活をして毎朝太陽光を浴びていれば、まず睡眠の質改善の基礎は出来上がります。
起きたら白湯を飲む
白湯が身体に良いことは多くの方に広く認知されていることでしょう。睡眠と白湯の関係は、夜寝る前に飲めば身体が温まりリラックスしやすいというメリットがあります。
そして、何よりも起きてから飲む白湯が睡眠の質改善に大きな期待ができるのです。
朝に白湯を飲むことで体内の新陳代謝が促進されます。睡眠中、私たちの体は水分を失い、代謝が鈍る傾向にあります。
乾いた身体に白湯を摂ることで、水分を補充し、新陳代謝がスムーズに始まるのです。
そして寝起きの冷えた胃腸を白湯が温めることによって、消化機能が活発になり、食事の摂取や栄養の吸収が効果的に行われます。
睡眠中に処理しきれなかった栄養素を効率的に取り込む手助けとなるだけでなく、夜間に蓄積した老廃物や毒素を排出しやすくなります。腸内環境が整うことも睡眠の質改善の1つです。
眠る前にスマホを見ない
眠る直前までスマホを見ている方は、少なくありません。なかにはスマホを見ながら「寝落ち」することが日常茶飯事なんて人もいることでしょう。
しかしこれは、睡眠の質を低下させる行動ですので思い当たる方は今夜から改善しましょう。
免疫を上げるメラトニンは、睡眠を促す働きも同時に担っています。通常、メラトニンは夜に分泌されるのですが、スマホから放たれるブルーライトを目がキャッチしてしまうことで、脳が時間帯を昼と勘違いしてしまうのです。
そのため、体内時計にくるいが生じ、睡眠の質が低下してしまう恐れがあります。
また、スマホから新しい情報をキャッチした脳は、交感神経優位となり覚醒してしまいます。
睡眠の質を高く維持するには、睡眠導入時には副交感神経が優位であることが絶対条件です。脳が興奮した状態で眠ると、体は休んでいるが脳は休んでいない状態が続き、眠りが浅く慢性的な疲労感へと繋がってしまうのです。
寝酒は逆効果
夜眠る前に晩酌をしている方、残念ながら寝酒は睡眠の質を低下させる行動です。お酒を飲んでから眠ると、ぐっすり深い睡眠を取っているように感じますが、実はアルコールの入眠作用は3時間程度で切れてしまい、その後は代謝されてできるアセトアルデヒドの覚醒作用によって浅い眠りが増えていきます。
また、アルコールを接種していたことによってその利尿作用から夜間のトイレへ目覚めることもあります。睡眠の質が高い状態は「一晩を通しての連続性」ですからその時点で質の高い睡眠から逸脱してしまうのです。
他にも、アルコールの筋弛緩作用によっていびきをかきやすくなります。軌道が塞がれることで呼吸が一時的に途切れる睡眠は、睡眠の質の低下はもとより直接的な健康被害に繋がりかねません。
寝酒が習慣化してしまうと、最悪の場合、飲酒量が増えてしまう可能性もあります。日々の積み重ねが肝障害や脳委縮といった大きなリスクを背負うことにもなりますので、寝酒の習慣は断ち切るようにしましょう。
睡眠の質と「いびき」の関係について
いびきは通常、気道の一時的な閉塞や振動によって引き起こされます。浅い眠りや覚醒を引き起こしてしまい、深い睡眠に入りにくくなります。
いびきが慢性化していると、睡眠時の酸素供給が減少するため心臓や血管に負担をかけてしまい、深刻な健康リスクを引き起こしかねません。また、高血圧や心血管疾患などがいびきとの関連性が指摘されています。
罪深いことに、いびきは自分自身だけでなく、側で寝ているパートナーの睡眠をも阻害してしまいます。パートナーとのコミュニケーションが上手くいかないのも、紐解けばいびきからくる睡眠の質低下で起こったイライラや不安が種になっていた、ということも考えられなくもないのです。
逆説的に捉えると、睡眠の質を向上させれば、いびきの発生頻度が減少する可能性があるということです。
いびきの改善には「ダイエット」「禁酒」「禁煙」と生活態度の見直しが効果的とされていますので、健康のためにいびき対策をしてみましょう。
睡眠の質を上げる「音楽」を取り入れてみよう!
寝る前、スマホの情報は脳を覚醒させることを先ほどお伝えしました。脳は睡眠時、リラックスさせておくことが高い質の睡眠には大切なポイントですので、ぜひ音楽でリラックスする時間を取り入れてみてください。
そこでまず、脳波のお話を少しします。
脳は、活動する際非常に微弱な電気信号を発生させます。これが脳波です。
そして脳波には
- γ波=興奮時、怒っているとき
- β波=普通の時
- α波=リラックス時
- θ波=うとうとしている時
- δ波=深い睡眠時
このように5つの波形があるとされます。
このうち、睡眠前にはα波が出る音楽を聴けば、リラックスモードに脳が切り替わり、睡眠の質を高める効果があるとのこと。
ではどんな音楽が良いかというと、まず歌声や歌詞が入っておらず、深く考えないで済む音楽が基本です。
海を想像させる波の音や鳥のさえずりなど、自然の響きが心を静めてくれます。穏やかな環境を作り上げ、心を安定させてリラックスした気分に誘うのです。
そして単調で、テンポが乱れないゆっくりしたメロディも、睡眠導入には最高です。4000ヘルツ以上の高周波音が脳をリラックスさせる作用があるとされますので、ぜひ毎晩の新習慣に取り入れてみてください。
睡眠の質向上は仕事のパフォーマンスも向上させる!
「ただ何となく毎日寝不足…」「ただの寝不足…」と軽視していると、寝不足は深刻な健康被害に陥りかねません。しっかり眠って日中はしっかりと活動できるように、睡眠の質を低下させる習慣は思い切って断ち切りましょう。
睡眠の質の向上は、健康・美容はもちろん、集中力や気力がアップすることで仕事のパフォーマンスをも向上させます。
いつまでも若々しく元気、第一線で輝き続ける魅力ある大人でいるため、今日からぜひ睡眠の質を高める新習慣を取り入れてみてくださいね。
どれだけ睡眠の質改善を試みても眠りが浅い場合、心身がSOSを出しているかも知れません。そんなときは専門医に相談することが大切です。
また、急に仕事のパフォーマンスが落ちてしまった従業員は、実は何かしら心身の変化があるかも知れません。そういった小さな変化を見逃さないためにも、定期診断はとても大切です。
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