肩こり・腰痛・目の疲れ、まるでビタミン剤のCMのような始まり方をしましたが、これらに悩まされている方は恐らく少数ではないでしょう。
長時間同じ姿勢で過ごすデスクワーク。1日のうち、大半を座って過ごすデスクワークで、身体に無理をさせている人は非常に多く、疲労と長いお付き合いをされている方も多いはずです。
きっとあなたも「デスクワーク中の姿勢は完璧です!」と言えないのではないでしょうか。
そこで今回は、デスクワーク中の姿勢で気にすべき点や、腰痛、肩こりといった諸症状が引き起こすさまざまな不具合について解説していきます。
デスクワーク中の姿勢が身体に与える影響
デスクワーク中の悪い姿勢は、身体にさまざまな悪影響を与えます。しかしそれは言い換えれば、姿勢を正すことであなたを苦しめている諸症状から解放される可能性があるということです。
デスクワーク中の姿勢は、身体にどんな影響を与えているのでしょうか。
なぜ正しい姿勢が重要なのか?
デスクワーク中の姿勢を意識的に正しくすることは、身体への負担を軽減させるだけでなく、集中して業務を行うための効率的な方法です。
そもそも、デスクワーク中の姿勢が悪く腰痛や肩こり、ひどい場合は頭痛などを引き起こしてしまうと、身体の不快感から仕事への集中力は散漫になってしまいます。痛みや疲労感は、いとも簡単に私たちから「やる気」を削いでしまうのです。
長時間悪い姿勢をキープしてしまうと、血流の悪化から冷えやむくみといった症状を引き起こし、最終的には不眠へと繋がり業務効率を下げてしまいます。そして不眠が続くと心への影響も出てきます。
「たかが肩こり」「いつもの疲れ」と思うことなかれ、その姿勢の悪さが原因でプレゼンティズムやアブセンティズムへと繋がる可能性は大いに秘められているのです。
では、実際どのような影響が身体に出てくるのでしょうか。
深刻な「腰痛問題」
デスクワークで最も負担がかかるのは「腰」です。長時間座ることによって、一定の圧が一か所にずっとかかっている状態になります。
たとえば脚を組んで座る人は少なくないと思いますが、その「歪んだ」状態で圧が一か所にかかっているのですから、身体に良いわけがありません。
長時間座っていることで椎間板ヘルニアを発症する場合や、腰痛がひどいと就業自体が難しくなる場合もあります。
また、美しい姿勢をキープするためや、椅子やデスクの構造上前のめりになりやすいと、反り腰の原因となりかねません。
実は、反り腰になってしまった方のなかには「良い姿勢」だと勘違いしてNG姿勢をキープしてしまった事例もあります。
というのも、反り腰を誘発しやすい姿勢は、椅子に浅く座ったままお腹を突き出す姿勢です。これは一見すると背筋が伸びているため「良い姿勢」と勘違いしてしまいます。しかしこれは反り腰誘発の姿勢。正しく座っているつもりが、腰を痛めていたことになるのです。
反り腰とは?
反り腰とは、背中から腰に掛けて過剰に反ってしまっている姿勢のことを指します。この状態で骨盤は前傾となり、お尻が突き出された姿勢となります。
反り腰かどうかは太ももの状態で確認ができます。太ももの前側が固くなっているのが反り腰さんの特徴ですので、ご自身の太ももを触って状態を確認してみてください。
逆に、太ももの裏側「ハムストリングス」が固くなっている場合、骨盤が後傾している可能性が高くなります。骨盤が後傾している場合、ハムストリングスが固いのと同時にお腹がぽっこりと出やすいのも特徴です。
どれだけダイエットしてもお腹がへこみにくいという人は、日々の姿勢に問題があるかも知れません。
多くの人を苦しめる「首・肩こり問題」
首や肩の疲れも、デスクワークの姿勢が悪いために起こる代表的な症状です。「肩こりなんてしたことがない」という人は、心底羨ましいですよね。
デスクワークは肩こりの誘発をしやすくさせる理由がたくさんあります。まず、パソコンの画面上に細かな内容を微調整する業務や、小さな文字を拡大せずに見る癖、首を突き出してパソコンの画面を覗き込む姿勢が常態化している人も多いでしょう。
デスクの高さや椅子の高さが合っておらず、キーボードが肘よりも高い位置にある場合、両腕を持ち上げる負担が肩こりや肩甲骨周りの緊張に繋がります。
また、作業中に集中するあまり、歯を食いしばったり肩が上がって呼吸が浅くなったりと、首肩周りの疲れを誘発する姿勢もデスクワークには付き物です。
もっと詳しく「なぜ肩がこるのか」を知りたい方は、こちらのコラムもぜひ参考にしてください。
デスクワーク中の姿勢は美容にも影響する!
少し想像してみてください。
目の前にお弁当箱と、「おにぎり」や「おかず」が並んでいます。これをお弁当箱に詰めるのは簡単です。しかし、お弁当箱がでこぼこであったり、不規則に歪んでいたりしたらどうでしょうか。場合によってはおにぎりやおかずの形を変形させないと収まりません。
これは何の例えかというと、お弁当箱=あなた、おにぎりやおかず=あなたの内臓です。
姿勢が悪い状態でいると、中の内臓はどこかに偏ってしまって本来あるべき場所に収まりません。結果、お腹がポッコリ出てしまったり、血流が滞って血色が悪くなってしまったり、ホルモンバランスが崩れたりと、健康のみならず美容にも大きく影響してしまうのです。
首こりは美容の大敵!!
スッキリとしてシャープな理想の顔周りは、首こり対策からといっても過言ではありません。その鍵を握るのが、後頭部から耳の後ろを通り、鎖骨に繋がる「胸鎖乳突筋」です。
胸鎖乳突筋は、首を動かす筋肉です。「首が凝った」という人の多くは、胸鎖乳突筋が固まっている場合がほとんど。この筋肉がこり固まると、血流やリンパの流れが悪くなり顔のむくみやたるみ、二重あごの原因となってしまいます。
業務中の眠気は姿勢が原因の可能性アリ!
デスクワークの姿勢の悪さが、業務中の集中力散漫に繋がっている可能性もあります。
たとえば猫背。背中が丸まった姿勢で座っているとき、肺が圧迫されている状態が続いています。肺が圧迫されているということは、どうしても呼吸が浅くなってしまうのです。これでは、体内に必要な酸素を十分に供給できません。
他にも、スマホ首のように、首が前傾しているときは後頭部の動脈を圧迫し、血流を悪くしています。血流が悪いと酸素の供給量が減ってしまいますので、眠気へといざなわれてしまいます。
ですので、業務中になぜか集中できないのは、姿勢が影響している可能性があるのです。
デスクワーク中の正しい姿勢維持の鍵
デスクワーク中の正しい姿勢を保つのはあなたの意識だけでは難しく、パソコンの配置や椅子の買い替えなどが根本解決になる場合があります。デスクワークで正しい姿勢を維持するため、周辺環境はどういったことに気を付ければ良いでしょうか。
デスクと椅子の調整
デスクと椅子があなたの身体に最適かどうかが、疲れないデスクワークの姿勢維持の大きなポイントです。
オフィスワークではどうしてもデスクの高さが固定されていて、調整が難しい場合も多いでしょう。デスクが高すぎる場合は、足底がちゃんと床に触れる高さになるようにデスクの下に台を置くようにして高さを調整するようにしましょう。
また、椅子は素材や背もたれの柔軟性なども選ぶ際のポイントになります。
デスクワークの姿勢維持をサポートしてくれる椅子の特徴
デスクワークの椅子を選ぶ場合、床から座面までが身長の4分の1であることが理想とされます。また、背もたれが肩甲骨のあたりまである「ミドルバック」、肩のあたりまである「ハイバック」を選ぶことで背中をサポートしてくれますので、新たに購入する場合はぜひ背もたれの高さを参考基準にしてみてください。
そして座面に関しては、柔らかい素材よりもやや硬めにする方が良いとされます。
オシャレなデザインを重視してしまうと、十分に背中をサポートしてくれない、座り心地は良いけど姿勢が安定しないなど、姿勢の悪さに繋がりますので選択には注意が必要です。
ディスプレイの位置調節
ディスプレイの位置は目線より下にあることが理想的です。ただし下方すぎると今度は首のこりへと繋がりますので、軽く顎を引いた程度で見える位置を意識しましょう。
着席して、ディスプレイまでの位置は40cm程離れていることが理想とされます。キーボードやマウスの位置、メモを取る文具などの配置も気を付けて、身体にねじれが出ない場所へ配置するように調整しましょう。
定期的な休憩
どれだけ正しい姿勢で座って作業をしていたとしても、同じ姿勢で長時間過ごすことは全ての筋肉にとって良いことではありません。定期的に休憩を取って身体を動かし、水分を取るようにしましょう。
どうしても離席が難しい状況であれば、せめてデスクの下で足首を回したり、こっそりと貧乏ゆすりをして脚のむくみや冷え防止の対策をしてください。
靴選びも重要!
デスクワークの姿勢を整えるためにデスクも椅子も完璧!だけど腰痛が治まらない…この場合、靴が影響しているかも知れません。
とくに女性の場合、ヒールのある靴を履くことによって「つま先立ち」の状態が続いていますので、バランスを取るために腰を後ろに無意識に反らしています。これによって反り腰となり、腰痛の誘発へと繋がってしまうのです。
どうしてもヒールの靴を履く場合、必要のないオフィス内ではフラットな靴に履き替えるなど対策をしましょう。
また、ヒール靴でなくとも、自分の足に合っていない靴は身体をうまく支えることができないため、バランスを取るために腰回りの筋肉が多用されます。つまり、インソールを使用したり、デザインよりも機能性で自分にあった靴を選んだりすることも、デスクワーク中の姿勢を正しく保つ要素となるのです。
デスクワーク中の正しい姿勢とは?
では実際に、どのような姿勢がデスクワーク中の正しい姿勢なのでしょうか。1つずつ実践しながら読み進めていきましょう。
深く座る
腰痛持ちの多くの人は、椅子に浅く座って背もたれに身体を預けている傾向にあります。この姿勢は、座骨に負担をかけており腰痛の大きな原因となるのです。
正しい姿勢としては、椅子に深く腰掛けて背筋を伸ばし、少し前傾になっている状態です。椅子の一番奥まで腰掛けると、自然と骨盤が正しい位置に収まる姿勢となりますので、お尻の位置に気を付けて姿勢改善を意識しましょう。
また、深く座った状態で少し足を浮かせると、お腹周りの筋トレにもなりますので余裕のある方はぜひ挑戦してみてください。
足首・ひざ・股関節が90度
デスクでは足底がしっかりと床につくようにしましょう。ヒール靴の人は、負担の無いようにこっそりペタンコ靴に履き替えるのがおすすめです。
着席した際、足首、ひざ、股関節がほぼ90度になっている状態が理想です。デスクが高すぎて足底が付かない場合は、台を置くなどの工夫をしましょう。
頭の位置を意識して顎を引く
人間の頭部は4〜5キロあると言われます。頭部の例えとして、ボーリングの玉が首に乗っている、と言われるので想像をしていただきたいのですが、ボーリングの玉を持った手を1センチ前後に動かすと、腕にかかる負荷はかなり変わってくるのがイメージできるのではないでしょうか。
このように、私たちの首は、こんなにも重い頭部を頑張って支えているのです。
すなわち、頭部が身体の重心から外れてしまうと、首から胴体に掛かる負荷が重くなってしまい、身体のあちこちに不具合が出てきます。頭はしっかりと、身体にバランスよく乗せてあげることが大切です。
頭部の位置を正しく戻すには、顎を引く姿勢を意識しましょう。顎が上がっている状態では後頭部の筋肉が緊張し、呼吸が浅くなります。
マラソン選手が後半にかけて顎が上がってしまうのは呼吸機能の低下が主ですが、実は仕事の緊張状態と丸まった背中とで、デスクワーク中にも呼吸が浅くなる人も少なくありません。
身体は自衛のために、自然と顎をあげて酸素を取り入れています。
顎が上がった状態をリセットして頭部を元の位置に戻すために、定期的な「リリース」をしてください。
しっかりと深呼吸を定期的に行い、気が付いたら顎を引いた姿勢に戻すこと。
このとき、舌の位置が上顎についていれば正解です。舌の位置が下がっていると顎の位置が不安定で歯ぎしりや食いしばりの原因になるとされます。また、口呼吸になりやすいため口内が乾燥しやすく、細菌の増殖から虫歯や風邪、アレルギーを引き起こしやすくなるといったさまざまな影響が身体に出てしまいます。舌の位置にも注意してください。
デスクワークの姿勢に疲れたらできること
デスクワークの姿勢は正しく保つことが大切ですが、どうしても楽で慣れた姿勢になりがちです。さらに、体幹が鍛えられていないと、正しい姿勢がキツく感じる場合もあります。
そこで、デスクワーク中、姿勢に疲れたらできる簡単なストレッチを3つお伝えしますので、定期的にセルフメンテナンスを取り入れてリフレッシュしましょう。
肩と肩甲骨のストレッチ
まず、両手を後ろで組みます。後ろで組んだ手を上に動かしていきます。組んだ両腕を目いっぱい上げたところで20秒キープしリリース。これを3回繰り返します。しっかりと深呼吸も忘れないことが大切です。
このストレッチでは、腕を上げたときに背中が丸まってしまうのはNG。姿勢はきちんと真っ直ぐにして腕だけを動かしましょう。ポイントは、肩甲骨が動くイメージをすること。
座っていても立っていてもできるストレッチなので、背中の張りが気になったときに行ってください。
腰をひねるストレッチ
次は腰痛防止のストレッチです。椅子に座り、背筋を伸ばします。
背もたれを掴んで腰を左右にゆっくりとひねっていきましょう。このとき、お尻を浮かせないように注意してください。
ひねりきったポイントで深呼吸をして20秒キープからリリース。これを数回繰り返して行います。
深呼吸の際、下腹が動くのを意識するとダイエット効果も期待ができます。
首のストレッチ
多くの方が首・肩こり対策で間違って行っている代表的な動作があります。それは「首を後ろに倒す/回すこと」です。
首の緊張や肩のこりを感じたら、首を後方に倒して頭をぐるりと回す方は少なくありません。
しかしそもそも首は、人間の構造上、後ろに曲げるのに適していないのです。きっと、後ろに曲げた際に「ポキ」「コキ」とする音が「何となく首や肩こりが解消されている」感じがするのでしょうけれども、実は意味なしの行動であり、むしろ痛めてしまう危険性すらあります。
首は頭の重さを利用して前に倒すことでストレッチできます。首・肩周りを伸ばすのであれば、左右の180度までのストレッチで留めておきましょう。
首・肩のストレッチは、頭の重さを利用してゆっくりと伸ばしていきます。
方法は簡単。首を横に寝かせるだけです。左に首を傾げたら左手で、右に首を傾げたら右手で頭を押さえると心地よい負荷がかかります。
このストレッチでも、背中が丸まった姿勢にならないように気をつけましょう。目を閉じて行うと眼精疲労の対策にもなるのでおすすめです。
デスクワークは正しい姿勢で業務効率UP!
デスクワークはどうしても長時間同じ姿勢になるため、身体が疲労を蓄積しやすくなります。身体のことを考えれば、数十分に1度は離席してパソコンから離れて頂きたいのですが、そうもいかないのは十分に理解しています。
ですので、せめて限られたスペースで身体を動かして疲労を蓄積しないように工夫をしましょう。椅子やデスクの高さ、靴や服装の選択、そして簡単なストレッチなどを用いて、身体を労わってくださいね。