会社の健康診断やテレビなどでよく耳にする「メタボ」ですが、自分と関係が無いと思っていると詳しい詳細を知らないまま月日が過ぎて行くかもしれません。しかし、恐ろしい事に、メタボは放置していると認知症やがんを引き起こす可能性もあるのです。
将来のメタボ予備軍にならない為にも、早いうちからメタボを知り、対応していきましょう!メタボの原因と予防法について管理栄養士、健康運動指導士がお伝えします。
実は詳しく知らなかったメタボの事、おさらいして行きましょう
【メタボになる原因は?】
メタボ(メタボリックシンドローム)とは、内臓脂肪型肥満と呼ばれる疾患です。
肥満には
の2種類があります。
軽度だからといって肥満を放置すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなる為、早めの対策が効果的です。②は食べ過ぎや飲酒、運動不足から招かれる場合が多いです。すでにメタボの危険性のある人、昔は痩せていたけど最近太ってきたなという人は、食事や運動を工夫する事で内臓脂肪が減りやすい性質があります。
【メタボリックシンドロームの基準】
メタボの判断基準は腹囲(おへその下)を測る事からスタートします。
腹囲 男性≧85㎝ 女性≧90㎝に加えて、①~③の3つの項目のうち、2項目以上該当する場合に、メタボリックシンドロームと診断されます。
①【血中脂質】高トリグリセリド血症≧150mg/dL 低HDLコレステロール血症<40mg/dLのいずれかまたは両方
②【血圧】収縮期(最大)血圧≧130mmHg拡張期(最小)血圧≧85mmHgのいずれかまたは両方
③【血糖】空腹時高血圧≧110mg/dL
【痩せている女性にもメタボの危険性があります】
メタボは太り気味の男性だけのものだと思うのは少々危険です。実は、瘦せ型の女性(BMI18.5未満)は食事量が少ない上に身体活動レベルも低いので筋肉量が少ないといった特徴があります。
そのような女性は知らず知らずのうちに将来の糖尿病のリスクが高まるため、注意が必要です。若い女性は痩せ願望が強く、糖質制限ダイエットをして高脂肪の菓子や嗜好品へ偏る食習慣も懸念されています。
今の自分の生活を振り返ってみましょう
平日の食事パターンと休日の食事パターンを振り返り、メタボに繋がる食事の癖を
ピックアップしてみましょう。自分1人で振り返るのが難しい場合は、家族に聞いてみるのも良いですね。
【メタボになりやすい食習慣とは】
メタボの引き金になりやすい食習慣についておさらいして行きましょう。
①ちょこちょこ糖質をとっている
微糖の缶コーヒー、小さな菓子版、お風呂上がりのアイスなどをついつい口にしていませんか?このような習慣が続くと糖質依存状態になり、急激に上がる血糖値を下げる為にインスリンが多く利用されるので膵臓の疲れにも繋がります。インスリンを無駄使いしない食習慣を作りましょう。
②血糖値の上がりやすい糖質を選んでいる
「糖質」とは、炭水化物から食物繊維を引いたものです。糖質はごはんやパン、うどんなどの主食、いも類、根菜類に多く含まれており、脳や筋肉を動かすエネルギー源として重要な役割を担っています。
このように生きて行くためのエネルギー源として大切な糖質ですが、糖質を摂りすぎるとエネルギーとして変換されずに余った糖質が内臓脂肪へと変化し、肥満や脂肪肝になる可能性が高くなります。血糖値が特に上がりやすい食品とは、精製された白い糖質(白ごはん、食パン、餅、うどん、白砂糖など)の事です。
③食べる順番を気にしていない
食事を炭水化物からスタートすると、血糖値が1番上がりやすいパターンになります。メタボを予防する食事の順番は、野菜→おかず→最後に炭水化物を頂く食べ方(ベジファースト)だと、血糖値の急上昇を防ぐ事が出来るのです。野菜の他にも、食事は食物繊維の多い海藻類やキノコ類から頂くようにしましょう。
【メタボになりやすい生活習慣】
メタボになりやすい生活習慣とは、身体を動かすタイミングが少ない事が原因となります。
①普段歩かない
車での移動が当たり前になっている人は、有酸素運動を日々の生活に取り入れる事がほとんどありません。
②休日に寝だめする
平日が忙しいからといって休日のお昼過ぎまで寝てしまうと朝ごはんを食べるタイミングを逃してしまい、ため込みやすい身体を作ってしまいます。朝は同じ時間に起きて、昼寝をするようにしましょう。
③タバコを吸っている
喫煙と肥満は関連性があります。喫煙する事で中性脂肪や悪玉コレステロールを増化させてしまいます。肥満であったり、中性脂肪の数値が高めな方は禁煙を目指しましょう。
これならできる!今日からメタボを予防しよう
ここからはメタボ予防に繋がる習慣について理解し、実践していきましょう。
【メタボを予防する食事のコツ】
①糖質
・炭水化物の選び方
主食の糖質を選ぶ際は、玄米や雑穀米などの精製されていない茶色い物を選ぶようにしましょう。また、野菜にも糖質が多く含まれている物があります。
イモ類はでんぷん質なので糖質量が多い事が理解しやすいかもしれませんね。その他にも、かぼちゃ、ごぼう、たまねぎ、にんじん、れんこんなどの野菜(主に根菜類)に糖質が多く含まれています。しかしながら日本人の野菜の摂取量は目標値に届いていないのが現状です。そのため夜遅くに沢山食べる、といった状況でない場合は気にしすぎる必要は無いと考えてよいでしょう。
・調味料
普段何気なく使っている調味料にも、糖質が多い物とそうでないものがあります。
糖質が多く含まれる調味料
みりん、ケチャップ、お好み焼きソース、焼肉のタレ、カレールウなど
糖質の少ない調味料
バター、マヨネーズ、ゆずこしょう、豆板醬、醤油、酢、カレー粉、ポン酢、マスタード、こしょうなどを賢く利用しましょう。砂糖は白砂糖よりも血糖値が上がりにくい甜菜糖(ビート)やきび砂糖がオススメです。
・お酒の選び方
会社の付き合いや、お酒を飲む事がストレス発散になっている方に禁酒を勧める事は難しい事ですよね。年末など、どうしてもお酒を飲むタイミングが増える場合には、糖質の少ないお酒の種類を覚えて選べるようにしておきましょう。
糖質量の多いビールや発泡酒、日本酒を選ぶよりも糖質量の少ないワインや、糖質ゼロの焼酎やウイスキー、ブランデーをできるだけ選ぶようにします。また、適度なアルコール量は1日20gまでとされており、これは中ジョッキ1杯、日本酒1合の量です。1日のアルコール量が60gを超えると多量飲酒であるとされています。
②朝ごはん
朝ごはんを食べる習慣はありますか?朝ごはんを抜くとお昼ごはんまでに時間が空きすぎてしまい、血糖値が上がりすぎる原因になります。
健康的な朝ごはんの内容について、詳しくはこちらのコラムをご覧下さい。
ダイエットするなら朝ごはんは常識!健康へのメリット・簡単メニューを紹介
③外食時に気をつけること
外食で重視するのは安さ、早さではないでしょうか。しかし、それらの食事には炭水化物がたっぷり(丼、カレー、うどん、ラーメンなど)の食事に偏りがちです。麺やごはんが多いと感じたら半分盛りを選び、野菜やタンパク質の小鉢を追加しましょう。
居酒屋でも糖質の多いメニューに注意が必要です。和食の煮物やフライドポテトは糖質量が多くなるので控えめにし、天ぷらの衣も外して食べるようにしましょう。キノコソテーやサラダ、枝豆やお刺身などが選べるとベストです。
④間食、飲み物について
手軽に食べられる物ほど糖質量が多く含まれる傾向があります。例えば小さな焼き菓子やドーナツ、フラペチーノ系のドリンクには1膳分のごはんよりも多くの糖質量が含まれている事が多いです。間食は1日200kcalに収まるのが理想とされています。以下から選んで組み合わせてみましょう。
【間食のおよそのカロリー】
・50kcal
野菜ジュース200ml、クッキー1枚、せんべい1枚、6Pチーズ1個、みかん1個、キウイ1個
・100kcal
低脂肪牛乳200ml、ヨーグルト150g、バナナ1本
・150kcal
普通牛乳200ml、豆乳200ml、チョコビスケット3枚、りんご1個
・200kcal
ミルクティー500ml、炭酸飲料500m、プリン1個、ワッフル1個
ショートケーキやカップアイスは1つで約350kcal程あり、たまのご褒美として捉えましょう。
仕事の都合で夕飯が遅くなる場合は間食を摂るようにすると、夕食でドカ食いをしてしまい急激に血糖値が上がる状況を回避できます。大豆を使ったバータイプの栄養補助食品や、ナッツ、チーズなどを選ぶようにしましょう。
仕事の気分転換に飲むエナジードリンクやコーラなどの清涼飲料水、水分補給代わりに何気なく飲んでいるスポーツドリンクにも多くの糖質が含まれていますので、水分補給には水かノンカフェインのお茶習慣を当たり前にしましょう。
⑤タンパク質を必ずとる
筋肉量が増えると、身体の基礎代謝が上がり、太りにくい身体を作る事ができます。メタボ予防に限らず、健康維持で大切な事は毎食タンパク質を摂る事です。タンパク質は
筋肉を作る上で欠かせませんが、食べ物を消化する胃や運動に欠かせない骨もタンパク質が無いと作られませんないのです。
筋肉は分解されやすいので、3食の食事で筋肉量を維持して行く必要があります。すなわち食事がラーメン、チャーハン、うどん、肉の少ない丼物に偏ると1日に必要とされるタンパク質を補う事が難しくなります。
タンパク質は良質の魚、肉、卵、大豆をローテーションしながら頂くようにすると、タンパク質の良い部分をまんべんなく摂る事ができます。
これらの食事に加え、メタボ予防に大切な事は、よく噛んで食べる習慣をつける事です。
食べ放題の焼肉やバイキングに行くと、ついつい早食いになってしまったという経験はありませんか?良く噛まずに食事をして飲み込むように早食いをしてしまうと満腹感を得る前に必要以上の食べ物を摂取してしまうため、食べ過ぎに繋がりやすくなります。
同じ食事量でも噛む回数を増やすだけで満腹感が持続しやすくなる効果があるため、噛む回数を意識していない方は「まずは10回噛んでみる」事からスタートしましょう。
【運動が苦手な人の為のプラス10】
ふだん、どんな運動をしていますか?運動をする事はメタボ予防に繋がり生活習慣病の発症を低減させる効果が大いに期待できます。それに加えて、身体を動かす事で気分転換やストレス解消で心の健康維持にも役立ちます。
しかし、運動に時間を割く事が難しかったり、運動が苦手という方や運動をする事に慣れていない方もいるでしょう。ここでは、そんな方にもおすすめのでも無理なく実践できる+10(プラステン)という運動の考え方をご紹介します。
【+10の実践方法】
1日の活動の中に、10分だけ身体を動かす事を意識しながら行います。
・外出中の+10
歩幅を広くして歩く、遠くのスーパーに行ってみるなど、有酸素運動に繋がる「歩く事」を意識してみましょう。疲れないように、ウォーキングシューズを履いてみるのも+10が長続きするポイントです。
・仕事中の+10
自転車や徒歩での通勤をしてみる、階段を使う、トイレに立ったりコピーをしたりと、
デスクから離れる時にストレッチをしてみるなど、忙しい仕事の合間にも出来る事は沢山ありそうです。
・自宅で+10
テレビを見ながらストレッチをする、大きな動作で家事をする、ぞうきんで床拭きをするなど、家事やリラックスタイムに紐付けて+10を実践しましょう。食後すぐに、ちょっとだけ
動くだけで血糖値の上昇を抑える事ができます。
今よりも10分多く身体を動かす事(+10)で糖尿病や心臓病、病気のリスクを下げ、筋力のアップや足腰の強化が期待できます。また、+10を1年間継続した場合、1.5~2㎏の減量に繋がるとされています。
プラス10を習慣化するとメタボリックシンドロームを改善し、生活習慣病のリスクを低減させると同時に、気分転換やストレスの解消に繋がり、メンタルヘルスの一次予防としても有効と言えるでしょう。
【睡眠の質を高めよう】
意外かもしれませんが、肥満の原因の1つに「睡眠」が関係しています。睡眠時間が短いと、食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少し、食欲を増加させるグレリンという
ホルモンが増える事がわかっています。
忙しくて睡眠時間が十分に取れない場合は眠りの質を高める食事についても知っておきましょう。
タンパク質の一種であるトリプトファンは睡眠に関わるホルモンの材料となります。
豆腐や納豆、味噌などの大豆製品やチーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品を1日の
食事に取り入れましょう。
まとめ
いかがでしたか?メタボリックシンドロームで怖い事は、自覚症状がほどんど無い事です。自覚症状が無いために検査値が高値でもついつい放置してしまう方が多いものです。
メタボは習慣化されたライフスタイルによって起こるものであり、自分の生活が良いと思っていても、身体は悲鳴を上げ始めているかもしれません。メタボの発症は40~65歳までの食習慣や生活習慣に大きく左右されます。40歳からは身体の老化が顕著に現れてきますので、病気になってから薬で治療するのではなく、病気になる前に食事や運動に興味を持ち、自分の身体と向き合う事で素敵な未来に巡り合う事ができますよ。
メタボリックシンドロームの予防や栄養指導を受けたい方は、ライフサポートサービス株式会社にご相談ください。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。