若い頃と同じような生活をしているのに、最近太りやすくなったと感じる事はありませんか?
今回は基礎代謝という言葉を聞いた事があるけれど詳しくは知らない方の為に、基礎代謝を上げる効果が期待できる栄養や運動についてのポイントを管理栄養士がお話します。
【基礎代謝とは】
1日のトータルのエネルギー消費量の内訳は、大きく分けて基礎代謝(60~70%)、食事による熱生産(約10%)、身体活動によって生まれるもの(約20%)の3種類があります。3種類ある代謝の中で、一番大きなエネルギーを使うのが基礎代謝です。
基礎代謝は私たちが生きる為に無意識に行っている呼吸や体温維持などに使われるエネルギーです。つまり、寝ているだけの状態でも人は多くのエネルギーを使っているのです。基礎代謝とは、正確には「基礎代謝量」といい、成長期の身体の発育のために多くのエネルギーを必要とする10代前半をピークに徐々に下がって行きます。
基礎代謝量は代謝が活発な細胞や筋細胞が体内に多いほど大きくなります。エネルギー消費量の多い臓器は脳、肝臓、筋肉、腎臓などです。寝ているだけなのに筋肉も多く使うの?と思われがちですが、心臓の拍動や肺呼吸にも絶えずエネルギーを消費しています。
この基礎代謝を下げないようにしていく事=じっとしていても消費されるエネルギー量が多い事とされるので、基礎代謝を上げる行動を続けると太りにくく痩せやすい健康的な身体を手に入れる事ができるでしょう。
【基礎代謝に影響を与えるもの】
一般的に「代謝が良い」とは、基礎代謝が高くカロリーを消費しやすい身体とイメージして下さい。発熱や妊娠などの場合、身体が必要とするエネルギー量が増加します。
基礎代謝に影響を与える項目としては、①年齢 ②性別 ③体温 ④季節 ⑤月経 ⑥妊娠 などがあります。
①年齢 年齢の低い人ほど体内の代謝が活発なため、体重1㎏あたりの基礎代謝基準値は大きくなります。成人以降は歳をとるごとに筋肉量が減り、男女共に基礎代謝量が低下します。
②性別 男性の方が活発な筋肉組織が多く、女性は脂肪組織が多いため男性は女性よりも10%ほど値が高くなります。
③体温 体温が1℃上昇すると約13%基礎代謝量が増加します。発熱している場合はいっそう基礎代謝量の値が大きくなるので、十分なエネルギー補給が必要となります。
④季節 一般的に夏は基礎代謝が低く、冬は体温を上げようとして甲状腺ホルモンの分泌量が多く新陳代謝が活発になるために夏よりも基礎代謝量は高くなります。
⑤月経 女性の基礎代謝は月経中は最低で排卵後に上昇し、月経2~3日前に最高になります。
⑥妊娠 はじめの4ヶ月はほとんど変化がなく、その後次第に増加して出産直前には母親と胎児の基礎代謝の合計に等しくなります。
この他にも、不規則な生活やストレスで自立神経が乱れる事も基礎代謝が低下する原因となります。基礎代謝が低下して消費カロリーよりも摂取カロリーが上回るようになると、当然の事ながら太りやすくなってしまいます。
基礎代謝と食事の関係
代謝が良いとは、エネルギーや栄養の利用効率とも言い換えられます。
「食事誘導性熱産生」と呼ばれる代謝は食事をする事で体内の熱を生み出します。
炭水化物、脂質、タンパク質のうち、一番食事誘導性熱産生が高いのはタンパク質であり、朝ごはんにタンパク質が含まれる物を食べると身体が温まりやすくなります。女性の冷え防止にもタンパク質の摂取は必須であり、タンパク質は筋肉の元にもなるため、基礎代謝を上げる栄養素として重要な役割を持ちます。
【エネルギー必要量の出し方】
では、基礎代謝はどれくらいあればよいのでしょうか?
1日に必要なエネルギー量(推定エネルギー必要量)は、基礎代謝基準値×体重にその人の身体活動レベルをかけ合わせると算出されます。
※基礎代謝基準値とを基礎代謝量は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)を参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
(例)
45歳 70㎏の男性 身体活動レベルⅡの場合
基礎代謝量= 基礎代謝基準値 22.5× 体重 70=1575(kcal/日)
1575×1.75=2756kcal と計算でき、1日に必要なエネルギー量の目安がわかります。
【身体活動レベルの値】
身体活動レベルは日常生活の内容や活動時間によって以下のように分類されています。
・低い (Ⅰ) 1.5(1.4~1.6) 生活のほとんどを座って過ごしている状態
・ふつう(Ⅱ) 1.75(1.6~1.9) デスクワークなど座る事が中心の仕事だが、時には職場内での移動や立って行う作業を含む。あるいは通勤や買い物、家事や軽いスポーツなどの
いずれかを行っている。
・高い(Ⅲ) 2.00(1.9~2.2) 移動や立ち仕事の多い人、あるいはスポーツなどの活発な運動習慣をもっている場合
ダイエットをしようと考えて食事の内容や回数を極端に制限してしまった事はありませんか?身体に入るエネルギー量や栄養素が足りなくなると、筋肉が落ちて痩せにくい身体になるばかりか肌荒れや疲れやすさといったデメリットばかりを招いてしまいます。筋肉量を落とさずに維持する事は基礎代謝の維持にも繋がりますので、食事にも気を配る事が大切です。
また、冷えは内臓の働きを低下させ、基礎代謝を低下させる原因となってしまいます。
夏でも冷たいアイスやビールは適度に楽しむようにしましょう。
【基礎代謝を上げるのに効果的な食事】
【炭水化物】
加齢とともに、炭水化物は太るから抜いてしまうという考えが定着しつつあります。しかし食事から摂る1日のエネルギー量の約6割を炭水化物から賄うため、炭水化物を抜くようなダイエットは長期的に見て痩せにくい身体を招いてしまう危険があります。
パンや麺類を減らす、白米を雑穀米や玄米にチェンジするといった工夫で栄養価が上がり、手軽に食物繊維も補給する事ができます。
【良質なタンパク質】
タンパク質は筋肉やホルモンを作るもとになり、効率良く筋肉を増やします。痩せやすい身体になるためにも必要な栄養素です。大豆製品、卵、鶏肉、豚肉、牛肉など、様々な食材をローテーションして摂るようにしましょう。
【ビタミンB群】
ビタミンB群は炭水化物、タンパク質、脂質をエネルギーに変える為に欠かせない栄養素です。ほどんどのビタミンは体内で作り出す事ができない為、食事からしっかりと補いましょう。
・ビタミンB1 糖質をエネルギーに変えるて疲れにくくする働きをする
多く含まれる食品 豚肉、玄米、ナッツ、大豆、ウナギなど
・ビタミンB2 脂肪燃焼を促し、皮膚や粘膜、髪の成長を促す。口内炎や肌荒れが気になる人は多めにとるようにする
多く含まれる食品 豚レバー、卵、納豆、牛乳など
・ビタミンB6 タンパク質の分解と合成に欠かせない栄養素で、神経伝達物質の生成を助ける
多く含まれる食品 サンマ、カツオ、牛レバー、バナナ、など
【食物繊維】
栄養を吸収する腸がきちんと働いている事も、食事から代謝を上げる為に大切です。食物繊維は腸内環境を整える善玉菌を増やし、腸の働きを活発にする働きがありますし、余分なコレステロールを排出してくれるので肥満予防にも繋がります。
多く含まれる食品 大豆、玄米、キノコ類、海藻類、こんにゃく、生野菜など
食事バランスが気になる方はこちらのブログ記事も合わせてご覧下さい。
食事バランスガイドは栄養を簡単に整える事ができる便利なツール!
基礎代謝を上げるのに効果的な運動
筋肉量を落とさない事が基礎代謝を上げるポイントになります。筋肉量は20代を境に年々減少し、そのぶん脂肪が増えやすくなります。適度な運動を行う事により、加齢によって低下する基礎代謝を高めて維持して行く事が可能です。定期的な運動習慣があると言う事は生活習慣病の予防にも大いに役立ちます。
【実は基礎代謝は運動でガンガン上げられるものではない】
誤解されやすいのですが、運動さえしていれば基礎代謝がガンガン上がっていくものではありません。筋肉量が1㎏増えても基礎代謝量は約13kcalしか増えません。
実は、基礎代謝を上げる事はそう簡単な事ではないのです。
人の臓器の大きさはほぼ決まっており、臓器由来の基礎代謝量は変動がありません。しかしながら、人は運動をしないと筋肉量は減ってしまうため、筋肉由来の基礎代謝は運動で維持する必要があります。運動で基礎代謝をガンガン上げて行こう!と考えるよりも、日常生活の中での活動代謝を上げる意識を持つ事が大切です。
【有酸素運動も無酸素運動もOK】
基礎代謝を上げる為にはどんな運動が効果的なの?と思う方もいるかもしれません。
1番大切な事は、自分が続けやすい運動を継続させる事です。
忙しくて運動の時間を作る事が難しい事も事実ですよね。
朝や寝る前のストレッチは自立神経のバランスを整えて身体を温めながら基礎代謝を上げる効果があります。
もともとの筋肉量が少ない方は無酸素運動筋トレを軽い強度から行ってみましょう。筋肉量が増える事で基礎代謝アップに繋がります。筋トレが苦手な方は、1日10~20分のウォーキング(有酸素運動)を継続する事でも基礎代謝を上げる効果が期待できます。
【ながら運動でNEATを上げる】
人の身体活動はスポーツなどの「運動」と、掃除や買い物といった家事や通勤などの「生活活動」に分けられます。
NEAT(非運動性身体活動)とは生活活動によって消費されるエネルギー量の事を指します。つまり、普段の生活の中で意識的に動く事によって消費エネルギーが増えるので痩せやすい身体に変化して行きます。ジムに通ったり運動をする時間がなかなか取れずに悩んでいるという方は、NEATを上げる工夫をしてみましょう。
〇NEATを上げる具体例
・電車やバスの中では常に立つようにする
・移動中は大股で歩くようにする
・オフィスではコピーをとったり小休憩を入れて歩くなど、座りっぱなしにならない工夫をする
・シャワー浴ではなく、湯舟にゆっくり浸かる
・スーパーではカートを使わずカゴを手に持つようにする
・店舗の駐車場では入口から一番遠い場所に停めて歩く
など、自分が取り入れやすい行動を継続してNEATを高め、筋力、体力の低下を最小限に抑えましょう。
まとめ
いかがでしたか?
基礎代謝が上がれば楽に痩せる!といった簡単な話ではありませんでしたが、生活習慣や食習慣を見直して基礎代謝を上げる事は身体に大きなメリットがあります。5年後や10年後も理想的な体でいられるよう、基礎代謝を上げる生活を心がけましょう。
生活習慣病などのサポートについては、弊社までお気軽にご相談ください。