人事評価のどこが不満?従業員が抱きやすい不満とその理由を解説いたします

BadとGood





人事評価に不満がある従業員は、そのまま放置するといずれ退職願を持ってくるリスクがあります。

どんな不満も「言うは易く」改善は「行うは難し」。ですが人事評価の不満を放置して、従業員に転職されてしまっては、人材不足に悩む企業が多い今、とても大きな損失になってしまいます。

従業員は人事評価のどういった点で不満を持っているのでしょうか。ぜひ御社の人事評価改善案として参考にしてください。

 

人事評価とは

人事評価とは?と今更ながらの名目に見えますが、実はここをしっかりと認識できていることで、正当な評価へと繋がり不満になる理由の撤廃へと繋がります。

人事評価は、従業員の働きに対して、第三者(上司)の立場で査定をすることです。

 似た言葉に「人事考課」があります。ほとんどの場合同じ意味として使われますが、細密に区別すると人事考課は従業員の処遇を目的・能力によって査定することであり、人事評価は従業員の業務や業績についての把握と評価ですので、人事考課よりも広義であると捉えることができます。

 

人事評価に不満が出る理由

なぜ人事評価に不満が出るのでしょうか?

 

管理職からすれば、よほど底意地がわるい性格でもない限り「この従業員のアラを探して評価を下げてやろう!」なんてことはまず思わないはずです。

しかし人事評価に不満のある従業員からすれば「どうも不当に評価がされている…」と感じているこの溝が人事評価の不満の理由です。最悪の場合退職や不服申し立ての末の訴訟に繋がりかねませんので、正当な理由で人事評価に不満が出た場合、早急な改善が必要です。

 

理由①評価基準があいまい

人事評価に不満がある従業員は「何を基準に評価がされているのか明確でない」と感じています。

評価基準が営業成績なのか、勤務態度なのか、明確な基準が示されていないままで結果だけ突きつけられると、従業員はどこが良くてどこがダメだったのかがわかりません。

とくに数字として表れにくい事務の仕事や、チームとして成果を上げていく従業員にとってはどこで評価がされているのかが不透明に感じる傾向にあります。

評価を上げるために注力しようにも、ポイントがわからないと、従業員のモチベーションは低下し、会社に貢献したい気持ちが薄れてしまいます。

 

評価が不公平

同じような仕事ぶりでも、一方は評価されて一方は評価されていない」と不満がある従業員もいます。

実際に評価されていない方には何かしらの理由があるかもしれません。しかし当人からすれば、人事評価が評価者の「好き・嫌い」によって反映されているように見えてしまう可能性も否定できません。

また、どれだけ成果を出したとしても年功序列によって公平な評価がされてないという不満の声もあります。

成果主義に移行する企業は増えてきましたが、やはり根付いた年功序列は良い面もありつつも若手社員からの不満にもなり得る諸刃の刃。

同じような成果を上げているにも関わらず評価に違いが出る場合は、より慎重なフィードバックが必要です。

 

評価者に対する不満

通常、評価は上司が行います。その上司が、先述のとおり「好き・嫌い」の激しいタイプであると、評価が公平に行われていないとして不満が出てきます。

上司も人間ですから、主観の介入をどうしても阻止することは難しいものです。正直、やはりコミュニケーションがスムーズに取れて、仕事の話をあれこれしながらビールを飲める相手に対して好意的になってはいけない、という方が困難でしょう。

ですが、それと評価は別の話にしなければ、評価を受ける側からすれば不満は募るばかり。

評価者として陥りやすい心理傾向を以下にお伝えします。

 

ハロー効果

ハロー効果とは心理学の世界では「バイアス(先入観)」と呼ばれる現象で、目立ちやすい特徴に引っ張られて他の特徴の評価が歪められることです。

たとえば「〇〇大学出身=仕事ができる」「TOEIC800点以上=仕事ができる」といった具体の実証のない無意識の固定観念です。

 

寛大化傾向

評価者が評価を寛大に付けてしまう傾向のことです。「嫌われたくない」感情や、近しい関係性の部下に実力以上の評価をしてしまい、正当な評価とはかけ離れてしまいます。

また逆に、部下に対して必要以上に厳しい目で判断する「厳格化傾向」、当たり障りのないように評価が全て中間になってしまう「中心化傾向」といったものもあります。

 

フィードバックが不十分

評価だけを突きつけられて終了、という人事評価に不満が出ることがあります。とくに、当事者は「尽力した!」と思っていたことでも正当に評価がされていないと感じた場合、フィードバックがないと今後の努力の方向性がわからなくなってしまいます。

あるいはフィードバックがあったとしても、納得のいく内容でなければ、評価者との溝が生じてしまう可能性もあります。あからさまに怠惰な従業員から「納得いきません!」と言われてしまっては説明も難しいかと思いますが、従業員のモチベーションのために十分なフィードバックを行いましょう。

 

評価対象の誤認

評価対象である部下の仕事内容や成果を正確に把握していない場合、当然ですが正当な評価ではないとして不満が生まれます。

評価が正当に行われず、不当な降格や降給であると不服申し立てを受ける可能性は企業として避けたいところです。最悪の場合訴訟にまで発展してしまっては、不要なコストが発生してしまう危険性も潜んでいます。

不服申し立てのリスクを回避するためにも、評価者が正当に評価をできるスキルやシステムの見直しをすることが大切です。

 

人事評価制度の3要素と注目されている評価方法

人事評価に不満が出る理由は、従業員が「正当な評価を受けていない」と感じるからです。不明確な人事評価の基準にならないように、今一度評価基準を認識していきましょう。

ここでは、基本となる評価の3要素に加え、今注目をされている評価方式を3つご紹介していきます。

 

成果評価

成果評価は、一定期間における従業員の業績や成果を評価する方法で、「業績評価」とも呼ばれています。

この評価は営業職や定量的な評価が可能な職種において基準を明確に設けることができるため、従業員も納得しやすい評価方式です。

成果評価は数字として表れるため従業員も納得しやすく、また適性に評価されれば授業員のモチベーションも高くなり、企業への愛着が沸くことでしょう。

「目的達成のために何をすれば良いのか」と自発的に考え行動することが期待でき、従業員エンゲージメントの上昇も期待できます。

しかしながら、事務職や定量的な評価が難しい職種においては評価基準を定める工夫が必要になります。

※従業員エンゲージメントについてはこちらのコラムをお読みください。

(「従業員エンゲージメントとは?混同しやすいワークエンゲージメントとの違いも解説」https://www.lifesupport-service.com/blog/20230502/ )

 

能力評価

能力評価は従業員のスキルを評価する方法です。その基準は企業によって異なりますが「業務遂行力」「改善力」「企画力」「実行力」などが評価対象になります。

たとえばイレギュラーなケースが発生した際に適切な判断ができているかどうか、チームのメンバーに対して適切な指導ができているか等が相当します。

能力評価の目的は従業員の長期的な育成と定着です。多方面の能力を評価しながら「十分ではない」と判断した場合、フィードバックで改善案を提示することが可能です。

フィードバックの際に「良かった点」と「これから伸びる点」を混ぜて伝えれば、従業員のモチベーション向上に繋がり企業全体の生産性向上を期待できるでしょう。

 

情意評価

情意評価では従業員の仕事に対する姿勢を評価します。「責任感」「意欲」などが評価対象です。

情意評価は階級によっても評価される基準は変化していきます。また、「責任感」や「意欲」はどうしても評価者の主観によって判断せざるを得ない部分があるため、被評価者から不満を持たれやすい側面もあります。 

たとえば同じように意欲があったとしても、評価者である上司との関係性で評価が変化してしまう可能性があります。

上司と関係性が近しい被評価者は、どれだけ意欲があるのかを、仕事終わりや休憩時間に自分の意欲を語って聞いてもらえる土俵があります。

しかしその一方で、評価者とそこまで近しい関係性を築けていない被評価者は、評価者にその「意欲」を普段から伝える土俵に上がることができません。この場合、評価者が同様の評価を公平にできるかは評価者の手腕にかかってくるのです。

情意評価はどうしても主観が入りやすい評価方法ですので、評価者はより適切な評価が行えるように細心の注意を払う必要があります。

 

注目されている評価方法①360度評価

360度評価は、人材育成を目的としてアメリカで生まれた評価方法です。上司だけでなく同僚や部下など、さまざまな立場の人が評価者を多角的に評価します。

評価者が上司だけではないので、上からの評価だけではなく文字通り360度で評価ができるため、被評価者が納得しやすい評価に繋がるとされています。

ただし従業員同士で「良い評価を付け合う」場合もあるため、360度評価を実施する場合には細かな実施要項や目的などを明確にし、しっかりと理解を促す必要があります。

 

注目されている評価方法②コンピテンシー評価

「コンピテンシー」とは、職務や役職において優秀な成果を発揮する行動特性を意味します。かみ砕くと、仕事が「デキる」人の行動特性、ということです。

コンピテンシーの高い従業員をロールモデルとし基準を定め、人事評価をおこなっていく方法です。

コンピテンシー評価の良い部分は、明確に目の前に「目標」とできる成功例が実際にあることです。目標だけを突きつけられるよりも「この場合はこのように行動をすれば成果があがる」成功法則がある状態ですので、とくに若手社員にとってはわかりやすい仕組みになることでしょう。

ただし時代の流れや市場の変化などによって、ロールモデルが機能しなくなる場合もあります。コンピテンシー評価を導入するならば、定期的に評価モデルの見直しが必須です。

 

注目されている評価方法③ノーレイティング評価

ノーレイティングとは、従業員のランク付けを廃止し、リアルタイムでの評価を行っていく方法です。

多くの場合、企業は一定期間の従業員の働きを評価します。ノーレイティング評価ではこの「期間ベース」ではなく「目標ベース」に置き換え、上司からフィードバックを受けながら都度評価を受ける方法です。

よく、アメリカのドラマや映画で、良い働きをした部下に上司が給与アップを伝えるシーンがあります。日本では給与アップをその場で決めることがまずないため、そのシーンに違和感を覚えた人もいることでしょう。

つまり、上司の裁量で部下の給与が決定される方式がノーレイティング評価。そのため、部下と上司は1on1面談を定期的に行い、フィードバックと次の目標を定めることになります。

部下を多く抱える上司からすればその負担は大きくなるため、業務全体の効率化も課題になります。

ノーレイティング評価は部下のスキルアップや環境の変化にも柔軟に対応ができるメリットがある反面、評価者の時間と裁量の負担が増えるというデメリットもあります。

 

不満なき人事評価で従業員の定着を!

人事評価の不満は、明確ではない基準とフィードバックが大きな原因です。この2つを解消するために、評価基準の理解と丁寧なフィードバックとを心掛けるようにしましょう。

 

また、上司・部下間の適切なコミュニケーションも、日々の不満解消に繋がります。人材不足が深刻化するなかで、良い人材を育て定着し、そしてまた次の世代へ受け継がれるよう仕組みを整えることが大切です。

どのように今の仕組みを改善していけばよいのか、難しい部分もあることでしょう。

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