従業員の健康は企業の生産性向上に欠かせません。
しかし中小企業の経営者からは「うちは健康経営に割ける資金がない」「小規模経営だから健康経営は難しい」というデメリットの声もあることでしょう。
今回は、健康経営に取り組むメリットを解説します。とくに、中小企業にとって健康経営がいかに有益な投資となるかを、助成金の情報も含めてお伝えしますのでぜひ参考にしてください。
企業にとって健康経営のメリット
企業にとって、健康経営をとりいれるメリットは大きく4つあります。「生産性の向上」「医療費の削減」「企業のイメージアップ」「人材確保」についてそれぞれ詳しく解説いたします。
生産性の向上
健康経営の最も大きな功績となるのは生産性の向上です。ここで2つの単語を押さえておきましょう。「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」です。
プレゼンティズムとは心身が影響し、出勤しているけれどもパフォーマンスが低下している状態を指します。
具体的には「風邪で辛いけれども会社へ出勤し、倦怠感からミスを連発してしまう」といった例があげられます。
「アブセンティズム」とは心身が影響し、早退や欠勤、休職などに至ってしまう状態を指します。「ストレス過多や長時間労働で心身に負荷がかかり、会社へ行けない状況」がこれに相当します。
従業員がプレゼンティズム・アブセンティズムの状態になると1人に振り分けられる業務量は増加し、さらなる生産性低下へと負のスパイラルを形成しかねません。
健康経営にはこういった事態を防ぐメリットがあるのです。
医療費の削減
体調不良やメンタルヘルスが原因で医療機関を受診する社員が増えれば、それに伴い医療費負担が増加します。
心身の健康不良を未然に防ぐことができれば、医療費の削減ができ、その分を他の投資に回す資金として使うことが可能となります。
事故や労災を防ぐためには、従業員の健康を守ることを徹底すべきです。そして従業員の健康を守ることが、本来出ていく必要のなかった医療費のコスト削減につながるのです。
企業のイメージアップ
ある民間企業が行った調査によると、就活生の約半数以上が、企業のSNSを参考にして就職活動を行っているのだとか。そして興味深いことに「実際に働いている人」のSNS発信を参考にしていると言います。
この事実は企業にとって、SNSが良い広告となり得ることも、刃となり得ることももはや受け入れるしかありません。
どれだけホームページでクリーンさをアピールして、たった1人「毎日の残業が辛すぎる…」「人間関係が最悪すぎる…」「パワハラ上司がイヤすぎる…」と発信し、それが何万人の目に触れてしまっては、どちらの影響力が作用してしまうのか……一目瞭然ですね。その影響力たるや計り知れません。
SNSの持つ力は今や強大です。
実際、ある地方の設備系会社は、従業員数が20名に満たない規模ですが、SNSのフォロワー数は5万人を超えています。
その特異性は「職場に猫がいる」というもので少し健康経営とは離れてしまいますが、笑顔で猫と接する社員をSNSで見た人たちは、その発信で企業に持つイメージに対し良い感情を持ち、企業そのものに興味を持ち始めます。
誰もが情報発信をできる時代だからこそ、企業の従業員に対する扱いがイメージアップにもイメージダウンにも影響を及ぼしてしまうのです。
人材確保
「2025年問題」をご存知でしょうか。2025年問題とは、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者の75歳以上となり超高齢社会を迎えることで起こる、さまざまな影響を指してこのように呼ばれます。
内閣府によると予想されている2025年の後期高齢者の数は3600万人以上、その後も65歳以上の人口は2040年頃まで増加の一途だとされています。(参考:内閣府「高齢化の現状と将来像|令和2年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_1.html)
中小企業においては、1995年の経営者年齢ピークが45歳であったのに対し、2015年の時点でピークが66歳、高齢化はさらにすすみ急速な「事業継承」が求められています。(参考:中小企業庁「中小企業の経営者の高齢化と事業承継」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_1_2.html)
対して、民間の研究所が行った調査によると、就職先に公務員・大企業を希望する学生は近年さらに増加傾向にあるとのこと。
その背景には日本経済の先行きが不安な点が指摘されていますが、なかには「奨学金の返済のため安定して返済ができる就業先が必要」との視点もあり、あらゆる面で中小企業にとって人材確保が困難となるカードが揃っていると言えるのです。
人材の確保が難しくなっている今、職場環境を整えることは事業継承のためだと言えます。
良い人材が定着するよう、職場環境を改善・安定させることがいずれの会社企業にとっても優先順位の高いタスクなのです。
職場環境の改善についてはこちらをご覧ください。
「働きやすい職場で人材の定着を目指す!職場環境改善を正しく遂行するポイント」
https://www.lifesupport-service.com/blog/20230120/
中小企業向け健康経営関連の助成金
このように健康経営は従業員だけでなく企業にとってもメリットがある投資だであるとご理解いただけたことでしょう。
しかしながら、環境を整えるにはコストがかかる…と二の足を踏む経営陣もいるはずです。そこで、健康経営関連の助成金を利用し、健康経営を推進してみてはいかがでしょうか。
健康経営関連助成金のうち、令和5年版申請可能な3つを選んでみましたので、以下をご参考ください。
キャリアップ助成金
パートタイマーや派遣社員など、非正規雇用の従業員を対象に、キャリアアップを促進するための取り組みを行った企業には、最適なコースを選択し助成金を申請することができます。
申請ができるコースは以下の通りです。
・賃金規定等共通化コース
・正社員化コース
・障がい者正社員化コース
・短時間労働者労働時間延長コース
・賞与退職金制度導入コース
企業側のメリットは助成金はもちろん、キャリアップをした従業員を確保できることです。従業員からのメリットは、現状が非正規であっても正社員となる道がある安心感がモチベーションへと繋がります。
業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援する助成金です。生産性向上のための設備投資を行い、事業場内最低賃金を引き上げたことにより認定を受けた場合、設備投資にかかった費用の一部が助成されます。
生産性向上に設備投資をし、業務改善を行った上で行われる賃上げは、従業員のモチベーションへと繋がります。
厚生労働省のページでは助成金を使った賃金引上げの取り組み例が掲載されていますのでご参考ください。
厚生労働省:「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」https://pc.saiteichingin.info/jirei/
働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種対応個コース)
2024年4月以降、時間外労働の上限規制が適応される対象事業・業務に対して、労働時間短縮に必要な取り組みを支援する補助金です。こちらは、令和5年度に新設が予定さている補助金となります。
対象となる業種は以下のとおりです。
・建設事業
・自動車運転の業務
・医業に従事する医師
・鹿児島県・沖縄家の砂糖製造業
これらの業種は2019年の働き方改革関連法案の法改正に伴う罰則付き時間外労働の上限規制に対して猶予期間が設けられていました。しかし2024年から、上記の業種によって上限が異なりますが、上限規制の猶予は撤廃となります。
そのため、外部専門家によるコンサル費用や労働管理用機器等の導入費用など、労働時間短縮への取り組みが助成対象となっています。
詳しくは厚生労働省のリーフレットをご覧ください。(参考:厚生労働省【令和5年度 予算概算要求の主要事項】より「時間外労働の上限規制の適応猶予事業・業務への労働時間短縮等に向けた支援」https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/23syokan/dl/01-02.pdf#page=97)
健康経営は企業にも従業員にもメリットが多い
健康経営は企業にとって生産性向上・人員確保・企業イメージ向上というメリットがあり、従業員にとっては仕事に対するモチベーション向上・ワークライフバランスの実現・賃金上昇といったメリットがあります。
助成金もうまく使いながら、人と企業が健康的に長く存続できる未来を作り上げていきましょう。
しかしながら、健康経営はどこから始めれば良いのか、糸口を掴むのが難しいものです。
弊社は、経済産業省による健康経営優良法人認定を受けており、健康経営エキスパートアドバイザーが在籍しています。健康経営の具体策を一緒に考え、実行に移すことが可能です。
健康経営にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。