労働人口の減少、高まる少子高齢化、価値観の多様性、働き方の多様性…企業にとって「生産性」を維持するにはクリアしなければならない課題が山積みです。
そこで今回は、職場環境改善をテーマにお届けします。御社に職場環境改善が必要かどうか、ぜひチェックしてみてください。
職場環境改善の意味は?
職場環境改善をするために「職場環境」が何を意味するのかをまずはしっかりと理解しておきましょう。
職場環境とは、日々労働を行う上で、従業員が身を置く全ての環境を指します。物理的な環境から心理的に影響を与えるものまで、「職場環境」の意味は多岐に渡ります。
職場環境を構成する3つの要素
職場環境は3つの要素から成り立ちます。
物理化学的条件
照明や色彩、騒音といった従業員を取り囲む環境を指します。タバコの受動喫煙や、トイレの設備などもこの項目に含まれます。
1人が作業をするスペースが極端に狭かったり、澱んだ空気が充満していたりと、業務を行う上でストレスとなる因子があるならば、職場環境改善の必要がみられます。
人間関係
「環境」は物ばかりではありません。従業員を取り巻く人間関係も、十分に環境です。
人間関係は離職・転職の大きな理由の1つとなります。実際、厚生労働省の発表「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、男性で約8%、女性で約9%の人が「人間関係」を理由に離職をしています。
参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf
人間関係の難しいところは、人それぞれ「改善策」とするものが違うことです。ある人は
頻繁なコミュニケーションを改善策としますが、一方でその改善策がストレスとなることもあり得ます。
いかなる環境下であっても「ストレスを感じています」と上司や同僚に相談できる環境を整えたり、研修の機会を設けたりといった職場環境改善が大切です。
仕事の負荷
業務内容そのものも、職場環境を意味します。たとえば1人に業務が集中していたり、経験不足のまま業務を遂行させ続けたりといった環境は、職場環境が適切とは言えません。
業務内容が「適材適所」「適量」であるかどうかを見直してみてください。
なかには、細心の注意が必要な機械や化学物質などを取り扱い、緊張状態が続く工場での業務などもあるでしょう。その場合、業務に携わる時間が適切かどうかも確認が必要です。
職場環境改善は誰のため?
職場環境改善は、平たく言えば全ての従業員のためです。ところが、なかには「若手が育ちやすいため」「新卒の離職率をあげないため」とある一定の層にターゲットを絞り対策をする上層部もいます。
ここに落とし穴があり、このような対策は現場の声から乖離した職場環境改善策を出してしまう結果となりうるのです。
そこで、実情として知っていただきたいことがあります。
それは「疲れている管理職」が多い、ということです。
職場環境改善は「疲れている」管理職のためでもある
働き方が多様化し、ノー残業デーの定着やフレックス制度の導入など、企業は労働環境の改善に力を入れています。
ところが、全体的な仕事量としては減っているわけではありません。ではそのしわ寄せがどこにいっているのか、ですが、それこそ「管理職」が一手に請け負っていると言っても過言ではないのです。
厚生労働省の調査「平成30年版労働経済の分析―働き方の多様性に応じた人材育成の在り方について―」では、管理職が感じている職場環境の変化が浮き彫りになりました。
調査項目「管理職が感じる職場の環境の変化」において、58.9%の管理職が「業務量が増加している」と回答し、同調査内「管理職としての悩み」においても26.6%の管理職が「業務量が多すぎる」と回答しています。
参考:厚生労働省「管理職が感じる職場の環境の変化や管理職としての悩みについて|平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-3-26.html
一般的に管理職となる年齢は40代を越してからが多い事例ですが、40代は健康状態のターニングポイントでもあります。生活習慣病になりやすくなり、筋力・持久力、基礎代謝が衰え始め、さまざまなバランスが崩れやすくなる年齢です。
しかしながら責任や、これまで慣れ親しんだ働き方や仕事への意識などがあり、つい無理をして不健康な働き方をしてしまう…ある意味で職場環境改善のしわ寄せの行きつく先だとも言えます。
企業で欠かせないポジションである管理職が、心身の不調で離脱するのはとても大きな損失です。要でもある管理職のためにも、適切な職場環境改善を行っていきましょう。
適切な職場環境改善には、管理職などの従業員のストレスチェックも大切です。ストレスチェックについてはこちらをご覧ください。
御社は職場環境改善が必要?
職場環境改善が必要かどうか、あなたは見極められますか?
同じ職場にずっといると、実は職場環境改善が必要であるにも関わらず、常態化しているために気付かない、ということが起こり得ます。
次の3点が当てはまるようであれば、職場環境改善が必須です。
生産性は低下していませんか?
たとえば、業務が終わっているのに「何かすること」を探して無駄に長時間会社にいる風潮や、体調不良でも休めない雰囲気があるなら、生産性が高いとは言えません。
また、業務が属人化していている場合や、業務プロセスが明確化していない、人手不足が常態化している場合など、非効率的な業務体制であるなら、早急に職場環境改善に乗り出しましょう。
アナログ業務が多くない?
デジタルであることが必ずしも正解だとは言えませんが、デジタル化で作業効率を上げられるのにアナログ方式にこだわっているのであれば、職場環境改善が必要です。
業務をデジタル化することによって、業務の属人化を防いだり、ミスを防いだり、書類の紛失といった大幅なロスを防ぐことができるのであれば、デジタル化を取り入れない理由はないはずです。
慣れ親しんだ方法からの脱却は、慣れるまで一時的に作業時間を増幅させます。しかし結果的には「時短」となりますので、デジタル化を推進し職場環境改善に努めていきましょう。
「コスト」ばかり気にしていない?
職場環境改善にはコストのかかることもあります。たとえば、デジタル化に向けてアプリを導入するにも有料であったり、空気清浄機を導入するにもお金がかかったりと、この出費を「もったいない」と感じる上層部もいることでしょう。
しかし、コストばかりに目をやってしまうと、職場環境改善はうまくいきません。「コストを抑えたい」一心になってしまうため、現場の声が聞こえてきたとしても的外れな解決策を出してしまうのです。
「コスト」ばかりを気にしているのであれば、職場環境改善のために上層部の意識変革も必要となるでしょう。
職場環境改善の「鍵」
職場環境改善を正しく進めるには、どういったことを念頭に置くことが大切なのでしょうか。的外れな改革とならないように、成功するポイントを押さえておきましょう。
課題の確認
職場環境改善は現状の問題を正しく把握するところから始めます。従業員が働きやすくなるために、何をどう改善すべきか、そのネックとなっている問題を洗い出しましょう。
たとえば、現場の声としては「業務効率をあげたい!」であるのに対し「わかった、そのためにはコミュニケーションだ!飲み会を開こう!」では、現場からは「違う違う!そうじゃない!」と総ツッコミが聞こえてきそうです。
このような行き違いが起こらないように、何が課題となっていて、どのような根本的対策を立てれば良いのかを明確にしておきましょう。
ディスカッション
職場環境改善に対するディスカッションの場を設けましょう。現場の声と上層部との意見を交換することで、職場環境改善の具体策が見えてきます。
担当者と上層部の意思だけで職場環境改善の対策案が提出されないようにディスカッションを行うことが大切です。
現場の声を聞きながら、経営陣として現実的な案なのかどうかを考察しながら職場環境改善を進めていってください。また、一見良さそうな解決策であっても、持続可能な案でなければ失敗に終わってしまいますので注意が必要です。
フィードバック
職場環境改善の案は、一度出したらそれで終わりではありません。職場環境改善の形式だけをなぞらえるだけでは、課題の解決にならないからです。
対策案を実行に移した後、本当に環境が改善されて生産性の向上につながっているのか、必ずフィードバックをするようにしましょう。
「職場環境改善宣言企業」に申請する
労務コンプライアンスや働き方改革といった職場環境改善に取り組む企業に対し、その健全性を称えて全国社会保険労務士連合会が「職場環境改善宣言企業」の承認マークを付与しています。
職場環境改善に取り組む企業がWEBから申請し自ら宣言することで、職場環境改善宣言企業となる他、社労士に依頼して登録手続きをする方法もあります。
自ら宣言することによって、企業はコンプライアンス遵守の良いイメージを社外に周知させることができ、求職者へのアピールとなります。
また、社内にとっても、職場環境改善に取り組んでいる姿を可視化できるので従業員からの信頼性を得られるきっかけになるでしょう。
「職場環境改善のためのヒント集」を活用する
現厚生労働省、当時「労働省」が研究の一環として開発された「職場環境改善のためのヒント集」は、職場環境に課する改善アイデアがヒントとして掲載されています。
職場環境をメンタルから昇進に至るまで6項目に分類し、それぞれチェックシートにして対策を「提案する」「提案しない」「優先」と可視化することが可能です。
職場環境改善の具体例は他社を参考にできますが、抱える課題は企業によって異なり、成功例が自社に正しく当てはまるとは限りません。
職場環境改善に何から始めれば良いのか明確化するために、ヒント集の活用も参考にしてみましょう。
参考:厚生労働科学研究「職場環境改善のためのヒント集」https://kokoro.mhlw.go.jp/manual/files/manual-file_01.pdf
個人レベルでできる職場環境改善
職場環境改善が実行されるまでは、プロセスを踏むためすぐに実行とはなりません。少しでもストレスを軽減させるため、個人レベルでできる職場環境改善のヒントをお伝えいたします。
とてもシンプルで、すぐにでも実行できることですので、ぜひ参考に取り入れてみてください。
整理整頓
とても簡単な職場環境改善の方法として、デスクの整理整頓をしてください。面倒ですが、コストゼロで今すぐでき、生産性が高まる方法です。
デスク上に使っていないペンや、謎のメモなど散乱していませんか?
デスクが整理整頓されていると、どこに何があるのかわかりやすく、集中しやすくなります。
実は、脳は「目に入ってくる」ことから無意識に情報を得ているため、情報量が多いと脳が疲れを起こし、集中力が欠ける可能性が高まるのです。
集中力を維持するために、デスクの整理整頓をしましょう。
深呼吸
長時間同じ姿勢をキープすることは筋肉にとって良くありません。慢性的な肩こり、腰痛、頭痛などを引き起こします。
デスクワークや、前かがみの姿勢で就業する人は、自分の意思とは別に「猫背」になる要素が整っています。キーボードを打つ姿勢は、画面を覗き込むため首が突き出し、背中が丸まります。
この猫背、実は呼吸が浅くなる原因でもあるのです。
呼吸には「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。試しに、息を吸うときに肺が膨らむのを意識してみてください。吐き出して、次は横隔膜が上下する意識を持って呼吸してみてください。
後に呼吸した方法の方が、呼吸が大きく深くなったのではないでしょうか。
猫背の状態では、 肺を囲む背骨と肋骨の辺り(胸郭)の動きが小さくなり、動きが出ないために周囲の筋肉が凝り固まっていきます。
そのため、十分な呼吸が確保できず、何となく頭がボーっとしたり、疲れが取れなかったりといった悪循環になっていきます。
深い呼吸は、自立神経を整えるためにも大切です。業務が一段落ついたときには、深呼吸を取り入れるようにしましょう。
職場環境改善で全従業員が働きやすい企業へ!
職場環境改善は従業員のモチベーションを向上させ、生産性の向上へと繋がります。全従業員が働きやすい環境で長く健康に勤められるよう、課題からは目を逸らさずに「今」を凝視することが大切です。
職場環境改善は、健康経営へと繋がる部分となりますので、課題を可視化し、持続可能な対策案で実行に移していきましょう。
もちろん、プロの意見を取り入れて職場環境改善へと舵取りすることも有益な投資です。
弊社には健康経営アドバイザーが在籍しておりますので、職場環境改善の具体策を一緒に考え、実行に移すことが可能です。職場環境改善にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。