肥満予防は「毎日コツコツ」が成功の近道

「肥満」は太っている状態を表す言葉で、病気ではありません。肥満は単に体重が増える事ではなく、動いて消費するエネルギーを食べるエネルギーが上回った結果、予備として蓄えられた体脂肪が過剰になった状態を言います。

肥満になる事で問題なのは糖尿病や脂質異常症などの病気を引き起こしてしまう事です。毎日の食事や運動で肥満を解消する方法を管理栄養士がお伝えします。

 

肥満の原因とは?

食生活の欧米化や運動不足から、現代人の肥満が増えています。
肥満には「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2種類があり、前者の方が人種柄、日本人に多いタイプの肥満です。
内臓型肥満は生活習慣病を引き起こすリスクが高い事が分かっています。

肥満予防で注意が必要なのは「エンプティーカロリー」です。
エンプティーカロリーとは「からっぽの栄養」。カロリーはあるけれど、活動する為に必要な栄養素が足りません。
1日に2,000㎉必要な人が、500㎉のスナック菓子を4袋食べていれば大丈夫! とはなりませんよね?
清涼飲料水や菓子パンなどがそれにあたります。

 

BMIと肥満度

肥満であるかどうかの基準はBMIという値で割り出す事ができます。
簡単な計算式なので、ぜひ自分のBMIを測ってみて下さい。

 

【BMI】

国際的な肥満度の指標で、WHOによる肥満の判定基準はBMIが30ですが、日本ではBMI25以上を肥満として判定します。
18.5以上25未満であれば普通体重、18.5未満なら低体重(やせ)で、BMIが35以上になると高度肥満に区分されます。

(例) Aさん 身長170㎝  体重78㎏ の場合
   BMI=体重 ÷(身長m×身長m) ですので
   BMI=78㎏ ÷(1.70m×1.70m)=26.98 となり、
   肥満(1度)と判定されます。

 

また、BMIの目標は22とされており、BMIが22に近いほど、さまざまな病気を引き起こすリスクが低いと言われています。
身長からBMI22の標準体重(理想体重)を求めるには、身長をmに直し、2乗したものに22をかけます。

(例) Bさん 身長170㎝ の場合
   標準体重=1.7×1.7×22=63.58 となり、
   小数点第二位で四捨五入した63.6㎏が標準体重となります。

 

BMIと肥満度を下にまとめました

18.5未満       低体重(痩せ型) 
18.5〜25未満    普通体重
25〜30未満      肥満(1度)
30〜35未満      肥満(2度)
35〜40未満      肥満(3度)
40以上         肥満(4度)

 

子どもの肥満

コロナ禍の影響もあり、家で過ごす時間が増えました。
その結果、外で遊べなくなった子ども達の肥満も増加しています。子どもの肥満は将来の生活習慣病のリスクを高める恐れもありますので、おやつや食習慣、就寝時間の見直しを行いましょう。
スナック菓子は1袋渡すのではなく、1食分をお皿に取り分けて与えてあげます。

幼児期の肥満度はカウプ指数、学童期はローレル指数という計算方法を利用します。ネットで簡単に算出できます。

 

お米はダイエットの味方

炭水化物は太ると思っている方に朗報です。
肥満予防には、まず第1にお米をしっかり食べる事が大切です。炭水化物は1日のエネルギーの60%を占めます。お弁当箱に例えると、ご飯6割、おかず4割といったイメージです。

実際に1940年代と現代のエネルギーの摂取量に大きな変化はありません。

では、なぜ肥満が増えているかというと、ダイエットの為にごはんは少なめに、塩分や油分の多いおかずをたっぷりという食習慣にシフトした事や、ごはんの代わりにパンや麺の炭水化物を食べる機会が増えた事で余分な脂質や糖分の摂取量が増えました。
また、米は粒状の形をしていますのでパンや麺よりも噛む回数が多くなる事も大きなメリットです。

ただし、白いご飯を無限に食べていては肥満を招きかねませんので、1食で茶碗にこれ位食べる、など一度グラムを測っておくのもおススメです。
カレーなどで沢山ごはんを食べたい! 毎日手軽に栄養価をアップしたい!と考える方は是非雑穀米にチェンジしましょう。
白米を炊く前に加えるだけで手軽に食物繊維やミネラルを補給できる天然のサプリメントになります。

 

肥満を改善、予防するための手軽な食習慣

1㎏痩せれば復位は1㎝減ると言われています。
1㎏痩せる為には食事や運動から約7,000㎉を消費する必要があります。7,000㎉を食事で消費するには、缶ビールを約50本我慢する、サッカーのような運動を12時間実施するなど、短時間ではなかなか大変な事がわかります。毎日の間食を見直す、歩く歩数を増やすなど、自分に合った方法から始めてみましょう。

 

①寝る2~3時間前には食事を済ませる

1日に食べる量が同じでも、夜遅く食べる事によって肥満を引き起こす可能性が高いです。早朝は体脂肪の分解が進むのに対し、夜間では体脂肪を取り入れる働きが強まる事も理由の1つです。
夕食が遅くなる場合は5時頃におにぎりなどで補食をとり、朝ごはんに響かないように夕飯をとりましょう。ここで朝ごはんを抜いてしまうと、飢餓状態と勘違いした身体が栄養をため込み、太りやすくなってしまいます。

 

②簡単に栄養バランスが整う「まごわやさしい」

エンプティーカロリーとは反対に、カロリーに応に対してビタミンやミネラルなどの栄養素が多く含まれている食材を簡単に知る事ができる合言葉で食卓のバランスを整えましょう。

ま… 豆類

豆は畑の肉と言われるほど良質なタンパク質を含み、大豆イソフラボンにはコレステロールの上昇を抑える働きがあるとされています。

ご… ゴマ

意外にもカルシウムの含有量が多く、鉄や食物繊維も含まれています。ゴマに含まれるセサミンは肝機能の強化や動脈硬化の予防が期待できます。すりゴマは消化吸収が良く、子どもでも食べやすいです。お味噌汁などにふりかけると風味も良くおいしく食べられます。

わ… わかめなどの海藻類

皮膚や粘膜を守り、動脈硬化を予防するβ-カロテンが豊富です。食物繊維も豊富に含まれ、食後の血糖値の上昇を穏やかにします。カットわかめやとろろ昆布、焼きのりなど利用しやすいものを備蓄しておきましょう。

や… 野菜

ビタミン、ミネラル、食物繊維の宝庫で酸化に強いファイトケミカルを含みます。
1日350gが目標とされていますが、量を食べるのが苦手な方は蒸野菜にしたり味噌汁に入れたりして食べやすくしましょう。

さ… 魚や魚介類

白身魚やエビ、イカ、貝類は低脂肪で良質なたんぱく源です。青魚に含まれるEPAは血液を固まりにくくして血栓症を予防する効果があります。忙しい場合はサバ缶やさしみ、じゃこごはんなどでも良いので魚を食卓に頻度を増やしましょう。

し… しいたけなどのキノコ類

1年中安定した価格で手に入ります。低カロリーでうまみ成分が強く、食物繊維やミネラルが豊富です。生ものはすぐ鮮度が落ちるので、適当な大きさに切って冷凍しておくのが良いでしょう。冷凍すると、生のものよりうまみ成分が強くなると言われています。

い… 芋類

普通ならば加熱するとビタミンCは損失されやすいですが、芋類はでんぷんに包まれているため壊れにくいビタミンCを含んでいるのが特徴です。じゃがいものビタミンC含有量はりんごの約5倍で、フランスでは大地のリンゴと呼ばれています。また、さつまいもに含まれるヤラピンという成分には腸の蠕動運動を促進する働きがあり、便秘解消に役立ちます。 

③間食の内容を見直す

仕事中の息抜きはなんとも美味しく感じます。疲れると脳は糖分を欲してしまうので「甘い物が食べたい!」と感じますが、デスクに小さな洋菓子やチョコレートがいつも入っている方は要注意。それが習慣になると、なかなか抜け出せないものです。
間食にオススメなのは鉄やタンパク質のとれる大豆のプロテインバーやくるみ、ナッツなどです。
家に好物をストックしておくのも要注意。欲しい時に買うようにすると良いでしょう 。

 

④缶コーヒーやスポーツ飲料に含まれる糖類を避ける

自動販売機やコンビニで手軽に買える缶コーヒーですが、無糖以外の物は砂糖が多くなりがちです。その砂糖を当たり前のように毎日とっていると、その分余分な脂肪になります。砂糖を入れる場合はカフェなど、自分で甘さを調節できる飲み物がおススメですし、基本的には1日1リットルは水で水分補給をし、体の老廃物を流して行きましょう。

 

⑤自分の生活スタイルに合った睡眠時間を確保する

睡眠不足が慢性化すると、メタボリックシンドロームや糖尿病のリスクが上がります。海外では睡眠不足の方の1日の摂取カロリーが平均400キロカロリー多くなるという報告もあり、肥満の原因に直結します。いつもより30分睡眠時間を長くする工夫をしましょう。

 

 

女性の痩せ願望と体脂肪率

女性の場合、自分は太っているという思い込みから過度なダイエットをしてしまう危険性があります。また、妊娠を希望する場合にも体脂肪は必要ですので、妊活中に無理なダイエットは絶対に避けましょう。花嫁さんがキレイにドレスを着る為にダイエットをする場合も、食事を抜くと筋肉量が減ってしまい、げっそりとやつれた印象になりかねません。また、生理を起こす為にも体脂肪は必要です、女性は体脂肪を17%未満にしてしまうと、月経不順や排卵障害のリスクが高まります。

 

肥満の改善と予防に効果のある運動

減量は効果が出るまでに時間がかかると言われています。運動の習慣をつけることは体力を向上させ、肥満予防に加えて介護予防にもなりますので、長い目で運動習慣を取り入れましょう。肥満に効果的な運動は、脂肪を落とす有酸素運動をメインに筋力トレーニングで代謝を上げていく方法が理想的です。ウオーキングやサイクリングを習慣化し、身体の中の大きな筋肉(脚、胸、背中)を中心にトレーニングを行います。
テレビを見ながらダンベル運動をしたり、スクワットの回数を決めたりするのも良いですね。家事をする時に身体を大きく動かしてみるなど、ついでにできる運動が長続きのポイントです。

 

「肥満解消=ダイエット」の落とし穴はリバウンドです

リバウンドを繰り返すとやせにくい体質になってしまいます。また即効性を求めて長い間運動を行ったり、急に強度を上げたりすると「食べたい」という欲求が強くなります。
運動を始める事はとても素晴らしい事ですが、一時的に流行るテレビの特集のような無理な運動は極力控え、できるだけ生活に取り入れやすく毎日続けられる運動を選びましょう。
運動量以上に食事内容が増加していないかチェックし、毎年の健康診断で体重の増減を確認しましょう。

 

 

いかがでしたか?

食事と運動習慣を大幅に変える事は逆にストレスになりかねません。
毎日決めた小さな積み重ねで肥満を予防・改善していきましょう。