肝臓は身体の中でどんな働きをしているか知っていますか?
よく知られているアルコールの分解だけではなく、その他になんと500種類もの働きをしているそうです。
肝臓の病気と聞くと、糖尿病などの生活習慣病よりもメジャーではないかもしれませんが、放置すると脂肪肝や肝硬変に繋がる怖い病気です。
肝臓の働きから食事や生活習慣のポイントを管理栄養士がお話します。
肝臓はどんな働きをしているの?
「肝心要」という言葉の通り、肝臓はとても重要な働きをしています。
肝臓の主な働きを見ていきましょう。
① 栄養の代謝を助ける
食べ物から炭水化物、タンパク質、脂質などの栄養素を吸収し、体内で
活用しやすい形に変えて貯蔵する働きをしています。
また、肝臓は乳酸やアミノ酸などの糖質とは異なる物質からグルコースを
作る事ができる特異な臓器です。この働きのおかげで、1日3回の食事を摂れずに飢餓状態になっても脳の機能を維持できているのです。
② 薬物の分解や解毒を行う
薬やアルコール、食品添加物といった人体に不要なものや有害物質を排泄する働きがあります。
③ 胆汁を作る
食物を消化吸収する為には複数の消化酵素が必要ですが、
肝臓は脂肪を乳化(小さくして水に混ざりやすい状態に変える)したり、タンパク質を分解しやすくする胆汁を作る働きをしています。
肝臓の病気の種類を知ろう
ここからは肝臓にまつわる病気を紹介していきます。
肝臓の病気には主にウイルス感染によるウイルス性肝炎、肝細胞に中性脂肪が沈着して起こる病変である脂肪肝、免疫系に異常が起きて自分の肝臓を攻撃してしまう自己免疫性肝疾患などがあります。脂肪肝も生活習慣病の一つと言われており、肥満、運動不足、脂質異常症、糖尿病などと密接に関わっています。
健診で中性脂肪やコレステロール値の異常を指摘された方は、脂肪肝予備軍とも言えます。
また、お酒を飲まないのに脂肪肝になってしまう場合があり、NASH(ナッシュ:非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれています。
NASHの発症には酸化ストレスや肥満との関係が深いと言われています。
アルコールとの付き合い方
肝臓の病気とアルコールは大きく関わっています。
アルコールの量や頻度を見直してみましょう。
アルコールは肝臓で処理されますが、飲酒量が多く肝臓で処理しきれなかったアルコールは代謝の段階で作られた毒性の強いアセトアルデヒドという物質が血液中に出るため、頭痛や吐き気などの症状が出るとされています。
長期にわたり多量の飲酒を続けると摂りすぎたアルコールは中性脂肪に変換されて脂肪肝となり、そのまま過剰摂取を続けるとやがてアルコール性肝炎、肝硬変という末期の状態に進行していく可能性があります。
お酒が大好きな方には耳が痛い話かもしれませんが、5年後、10年後も楽しくお酒を楽しむ為にも、下記を参考にお酒の種類や量を見直して行きましょう。
日本酒1合を1単位という基準とすると、他のお酒の1単位はこのようになります。
お酒の1単位(純エタノールとして20g弱) | ||
日本酒 | 180㎖ | 1合 |
ビール | 500㎖ | 中瓶1本 |
焼酎 | 110㎖ | 0.6合 |
ウイスキー | 60㎖ | ダブル1杯 |
ワイン | 180㎖ | ワイングラス1杯程度 |
1日当たり3単位を5年以上飲んでいる方は肝障害の出現頻度が上がるとされています。
1日に2単位、週14単位以下であれば問題ないとされていますが、1週間に2日は飲まない日を決めるなどメリハリをつけたり、ノンアルコールのビールや缶チューハイにする方法もあります。(ノンアルコールの場合、人工甘味料や糖分には注意しましょう)
また、お酒のおつまみにから揚げや焼き鳥、煮込み料理などの高カロリーなものを気にせず食べてしまうと、脂肪肝を悪化させてしまいます。
野菜サラダや冷やっこ、枝豆など、低カロリーの物を先に食べるようにしましょう。
魚は中性脂肪やコレステロール値を下げるDHAやEPAを豊富に含んでいるため、刺身や魚料理もおススメです。
肝臓を助ける食事と生活習慣の7つのポイント
① バランス良く食べる
生活習慣病対策と同じく、様々な食材をバランス良く選びましょう。
野菜や果物に含まれるビタミン類は肝臓の代謝や解毒作用を助ける働きの他、体の調子を整える大切な役割を担っています。
肝機能が低下すると肝臓のビタミン貯蔵能力が減少し、本来の力を発揮できなくなります。
野菜以外にも海藻、きのこ、卵、豆類、乳製品からもビタミンやミネラルは摂る事ができますので、彩を意識した食卓作りをしていきましょう。
トマトを切る、レタスをちぎってノンオイルドレッシングをかけるなど、簡単な所から始めてみましょう。
② 良質なタンパク質をとって肝臓を再生する
肝臓は自身で再生する事ができる臓器です。肝臓や肝臓内の酵素はタンパク質でできていて、再生する為には肝細胞の材料になるタンパク質が多く必要になります。タンパク質は20種類のアミノ酸からできており、その中の9種類の必須アミノ酸は体内で作る事ができないため食事から摂る必要があります。卵、乳製品、肉、魚、大豆製品などがこれに当たります。
豆腐や納豆など、植物性のタンパク質は低脂肪ですぐに食べられて肝臓にも優しい食材ですので、意識して食卓に並べましょう。
③ 腹八分目を心がける
食べ過ぎる事で肝臓が処理をする作業が増え、肝臓を傷めつける事になります。
肥満を防止する為にも良く噛んで唾液で栄養素や有害物質を分解する助けをしてもらいましょう。
④ 1年に1回は定期検査をする
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど、我慢強い性格をしています。
黄疸などの症状が出る頃には既に肝臓の障害が進行している恐れがありますので、最低でも1年に1回は肝機能検査を実施するようにしましょう。
肝機能の状態を表す代表的な血液検査値はAST、ALTで、肝細胞がダメージを受けた時に上昇する検査項目です。アルコール性肝障害ではγ-GTPという値が高値になります。
禁酒をするとγ-GTPの値は劇的に良くなる事から、飲酒状況を把握する検査項目としても利用されます。
⑤ 睡眠時間を確保する
寝ている時、肝臓の循環血液量は立っている時の2倍と言われています。血液量が増えると肝臓への栄養や酸素供給量が増えて分解や合成機能を発揮しやすくなります。
また、睡眠不足はホルモンバランスが崩れて肥満を悪化させてしまいますので、まとまった睡眠時間を確保するようにしましょう。
⑥ 喫煙習慣を見直す努力を
タバコの煙は呼吸器に悪いだけでなく、唾液とともに飲み込まれて食道、胃、腸などを経由して全身に運ばれて行きます。
タバコ含まれるニコチンはアドレナリンの量を増やしストレスを感じた時と同じく血液を流れにくくします。
肝臓は多くの血液を必要とするので、もちろん肝臓にも悪影響ですのでイライラしたらまずはガムを噛む、外の空気を吸うなど、タバコの本数を減らしてみる事から始めてみましょう。
⑦ 運動する習慣を作る
脂肪肝は肥満や糖尿病との関わりも深いため、運動習慣を設ける事も大切です。通勤や休日には散歩やサイクリングなど、1日20~30分の汗ばむ程度の運動を取り入れましょう。
いかがでしたか?
肝機能に心配がある方は、検査を控えているから1週間だけ食事を抜こう、お酒を控えようではあまり意味がありません。
簡単にできる事を見つけて、肝臓に良い習慣を1つでも続けてみましょう。
肝臓病予防レシピをご紹介!
鶏胸肉で揚げない簡単酢鶏
材料(2人前)
鶏胸肉 350g
人参 1本
玉ねぎ 1/2個
ピーマン 2個
パプリカ 1個
しいたけ 4個
片栗粉 適量
米油 大さじ3
★砂糖 大さじ1
★しょうゆ 大さじ1
★みりん 大さじ1
★ケチャップ 大さじ1
★黒酢 大さじ2
★チキンスープの素 大さじ1
★水 大さじ2
※鶏胸肉をやわらかく仕上げるための準備
① 繊維を切るように一口大にそぎ切りにする
② 肉に対して1%の塩3.5g、と砂糖3.5gでもみこみ、1時間おいておく
作り方
① 切った鶏肉に片栗粉をまぶす
② 野菜を乱切りにるす
③ ★の調味料を合わせる
④ フライパンに油をひき、①を揚げ焼きにする
⑤ 鶏肉に火が通ったら一旦取り出し人参に油が通るまで弱火で炒め、次に玉ねぎを加える
⑥ その他の野菜を入れ、全てに火が通ったら鶏肉を戻し入れ★で味付けして中火で2~3分炒め、皿に盛る
☆栄養ポイント☆
低脂肪高たんぱくの鶏胸肉を使い、油で揚げない調理法でさらにヘルシーに仕上がります!!