「健診」と「検診」の違いって何?健やかな毎日に必要な「けんしん」を解説!

同じ読み方で異なる意味を持つ言葉である「同音異義語」。日本語には多くの同音異義語があります。たとえば「橋」「箸」「端」、人と出会う「会う」や物事が一致する「合う」など、同音異義語はその単語の正確な意味を理解するための知識が必要となります。

 

そのひとつが「けんしん」。「健診」と「検診」、同じ「けんしん」でも意味の違うこちらの意味を、本日は「献身」的にご説明して参ります。

 

「健診」の意味は?

「健診」は健康状態を調べるために行われる定期的な検査のことを意味します。病気の早期発見、予防を目的として、健やかに日常生活を送るための全体的なチェックが「健診」です。

 

血液検査、心電図、尿検査、胸部X線などが一般的な検査内容に含まれており、予防の段階としては「一次予防」に相当します。

 

知っておきたい「予防医療」

予防医療とは、病気を未然に防ぐための医療分野で、0次から三次までの段階に分かれます。近年特に、個人単位ではなく地域全体で健やかな生活を送れるように環境改善をする「0(ゼロ)次予防」が注目されています。

 

0次予防

0次予防は、病気そのものが発生する前の段階で、生活習慣の改善や健康増進を通じて病気を予防することを指します。

 

行動や生活習慣を整えるのは一次予防の範疇でもあるのですが、0次は一次と違い、「健康的な生活ができるよう地域や社会を整える」ことです。

個人の努力や意思と関係なく、健康的な生活が実行できる環境改善を、社会で作ることが0次予防です。

 

具体的には自治体や企業による健康教育や政策の実施、禁煙活動、運動の推奨、バランスの取れた食事の指導などが相当します。

 

これにより、病気の原因となるリスク要因を事前に排除し、個人や社会全体の健康を守ることができるという予防策です。

 

一次予防

一次予防は、特定の病気が発症する前に、その病気にかからないよう、個人でリスク管理を行うことを指します。

 

具体的には予防接種や定期健診、生活習慣病にならないための生活改善などが含まれます。

 

定期的な健診により、早期に高血圧や糖尿病のリスクを見つけ、生活習慣の改善を図ることも一次予防の範疇です。

 

 

二次予防

二次予防は、病気が初期段階で発見された場合に早期治療を行い、進行を防ぐことです。

がんの早期発見や糖尿病の管理などが該当します。

 

一次予防で防ぐことができなかった病気を、なるべく進行していないうちに治療することが二次予防の目的です。

 

病気そのものもですが、合併症の発生を防ぐための治療も含まれます。

 

定期的な検査や医師のフォローアップにより、早期発見・早期治療を目指し、健康状態を維持することが目的です。

 

 

三次予防

三次予防は、病気が進行した後の治療やリハビリテーションを通じて、症状の悪化を防ぎ、生活の質を向上させることを指します。

慢性疾患や障害の進行を遅らせ、機能回復と社旗復帰を目指し、それを維持することが目的です。

 

 

主な健診①「一般健康診断」

一般健康診断(定期健康診断など)は全企業を対象に、従業員に対して1年に1回以上実施することが義務付けされています。

 

企業に義務付けられる健康診断は5つの種類に分かれています。

 

・雇用時の健康診断(労安法第43条)

・定期健康診断(労安法第44条)

・特定業務従事者の健康診断(労安法第45条)

・海外派遣労働者の健康診断(労安法第45条の2)

・給食従業員の検便(第47条)

 

一般社団法人日本経済団体連合会が発表している「一般健康診断の健診項目に関する考え方」によると、一般健康診断の目的は「業務が原因」で労働者が疾病にかかったり、疾病が悪化したりすることを防ぐこと、とあります。

参考)一般社団法人日本経済団体連合会「一般健康診断の健診項目に関する考え方」

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001196249.pdf

 

高血圧や糖尿病の初期症状、メタボに繋がる脂質異常症などは、症状が現れにくいため、定期的な検診で小さな異常を見落とさないことが重要です。

 

健康診断を通じて自身の健康について意識を高めること、そして経営陣にとってはその結果から、労働環境が与える影響を評価・改善するための指標としても役立ちます。

 

検査結果に基づいて異常が見つかれば、早期に専門医への受診が推奨され、重篤な病気の進行を防ぐことが可能になるでしょう。

 

結果的に、長期的な健康管理を通じて医療費の削減や、労働力の維持にもつながるため、一般健康診断は個人と社会の両方にとって重要な役割を果たしているのです。

 

一般健康診断の項目など、詳しくはこちらのページで解説していますので、併せてお読みください。

よくわかる健康診断検査項目の種類別一覧! 定期健康診断の実施時期と対象も解説します

 

主な健診②特定健康診査

特定健康診査は自治体などで実施される、生活習慣病のリスクを早期に発見し、予防するための健康診断です。

40歳以上75歳未満の健康保険加入者が対象であり、事業者によって実施される場合は所属する健康保険組合などの判断によって費用が異なります。

 

特定健康診査は、生活習慣病予防を目的とし、メタボリックシンドロームに着目して行われる健康診断です。

 

<内容>

・身体計測(身長・体重・腹囲・BMI)
・理学的検査(身体診察)
・血圧測定
・血液検査(肝機能検査・脂質検査・血糖検査)
・尿検査(尿糖・尿蛋白)

 

 

「メタボ」というキャッチーな響きから「少しお腹が出ているだけ」と感じそうですが、軽く考えていると重い疾患へと繋がってしまう可能性を、メタボリックシンドロームは秘めています。

 

腹部肥満、高血圧、高血糖(糖尿病予備群または糖尿病)、高脂血症(高コレステロールや高中性脂肪)、これらの要素が組み合わさることで、心血管疾患や糖尿病、脳卒中のリスクが大幅に高まります。

 

メタボリックシンドロームは、さまざまなリスクが相互に影響を与えることで、健康状態が急速に悪化する可能性があるのです。

 

たとえば、腹部肥満はインスリン抵抗性を引き起こし、これが高血糖や高血圧をさらに悪化させることも。

 

高血圧や高脂血症は動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中のリスクを高めるとなると、ただの「ぽっちゃり」では済まされないことがお分かり頂けるでしょう。

 

 

特定健康検査で自分自身の健康状態を知ることで、将来的な合併症や深刻な病気の発症を防ぐことが可能となります。

 

また、医師や栄養士からのアドバイスを通じて、生活習慣の見直しや健康維持のための具体的な行動計画を立てることも、長く健やかに人生を歩む大きな手助けとなるのです。

 

 

主な健診③生活習慣予防検診

全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している35歳以上の被保険者が受診できる健康診断で、労働安全法に基づく健診に胃がん・大腸がん検診や尿検査など、また年齢・性別により付加健診や、乳がん・子宮頸がん、肝炎ウイルス検査を受診することができます。

 

健診は年に1回、健診費用の約6割を協会けんぽが負担するため自己負担が少なく健診を受けることができます。ただし、同一年度に2回以上の受診の場合は2回目以上の受診費は自己負担となります。

 

法定項目以外の項目が豊富であるため、さまざまな疾患の早期発見ができるというメリットがあります。

 

 

「検診」の意味は?

では続いて、検診の意味についてみていきましょう。

検診とは、「特定の病気を早期発見する」ことです。予防医学において、二次予防に相当します。

 

病気が症状を現す前にその兆候を捉えることを目的とし、がんや生活習慣病、心臓病などの重大な病気の予防や早期発見を目指して定期的に行われます。

 

 

対策型検診と任意型検診

対策型検診とは、特定の集団(年齢層や性別、リスク要因を持つ人々など)に対して、一定の基準や条件に基づいて行われる検診のことを指します。主に、がんや生活習慣病などの重大な疾患の早期発見を目的とし、国や自治体が行う公的な検診プログラムです。

 

市町村区が行っている住民検診や、職場で行われる職域検診がこれに該当します。

 

任意型検診とは、個人の意思で自由に受けることができる検診のことを指します。代表的なものに「人間ドック」があります

 

対策型検診が特定の集団に対して公的に実施されるのに対し、任意型検診は、特定の病気に対する不安がある場合や、より詳しく健康状態を把握したい場合に、自費で希望する検査を受けることができるため、費用は受診する医療機関によって異なります。

 

任意型検診では、基本的な健康診断に加えて、より詳細な検査が行われることが多く、CTスキャンやMRI、内視鏡検査、超音波検査などが含まれることもあります。

 

任意型検診のメリットは、本人のニーズに応じた柔軟な検査内容が選べることです。

たとえば、家族に特定の病気のリスクがある場合や、自身の生活習慣や健康状態に不安を感じている場合に、その病気に特化した検診を選ぶことができるため、個人の健康リスクを下げることが可能と言えるでしょう。

 

 

がんの種類別でみる対策型検診と任意型検診の違い

多くの人が心配でならないがんという病。早期発見をすることで完治するものも多く、そのためには定期的な検診が欠かせません。

 

そこで、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんにおいて、それぞれ対策型検診と任意型検診はどう違うのかをみていきましょう。

 

胃がん検診

かつて日本人のがんでの死亡原因1位と言われていた胃がん。多量の塩分や喫煙、ピロリ菌の存在などが胃がんのリスクを高めると言われています。

 

対策型検診では50歳以上の男女を対象に、2年に1回、問診とバリウム検査または内視鏡検査を受けることが可能です。

 

任意型検診では希望者が任意の間隔で検診を受けることができ、検査の項目は受診する医療機関によって異なります。

 

 

大腸がん検診

大腸がんは結腸・直腸・肛門に発生するがんであり、近年疾患者数は増加傾向にあると言われています。

 

運動不足や偏った食事内容、飲酒などが大腸がんの原因ともされ、腫瘍性大腸炎を長期間患うことも大腸がんのリスクを上げるとも。

 

対策型検診では40歳以上の男女を対象に、1年に1回、問診及び便潜血検査を受けることができます。便潜血検査で異常が見つかった場合、精密検査として内視鏡検査が行われます。

 

任意型検診では希望者を対象に、任意の間隔で便潜血検査や内視鏡検査など、医療機関が設けている方法での検診を受けることが可能です。

 

 

肺がん検診

現在、日本人のがんによる死亡者数の1位とされるのが肺がんです。肺細胞の遺伝子が傷つくことでがん化するとされ、最も影響がある習慣としては喫煙があまりにも有名です。

 

対策型検診では40歳以上の男女が対象で、1年に1回、問診及び胸部X線検査、年間の喫煙指数が600本以上で50歳以上の人には喀痰細胞診検査が行われます

任意型検診では希望者に対し、任意の間隔で胸部X線、胸部CT、呼吸機能検査など、受診する医療機関の定めた方法での検診を受けることが可能です。

 

 

乳がん検診

女性特有のがんとして知られる乳がんですが、男性にも発生します。

早期発見ができれば完治しやすいと言われます。

 

乳がんの発生する原因は未だ特定されていないとされますが、家族のなかで疾患者がいる場合や、飲酒習慣、閉経年齢が遅いなどといったさまざまな理由が乳がんの要因として考えられています。

 

原因が特定されていないがんだからこそ、定期的な検診を心掛けましょう。

 

乳がんの対策型検診は40歳以上の女性が対象で、2年に1回の間隔において、問診及び乳房のX線検査(マンモグラフィ)が行われます

 

任意型検診は希望者に任意の間隔で、触診や超音波検査など、受診する医療機関の定めた方法での検診を受けることが可能です。

 

 

子宮頸がん検診

子宮頚部の入り口である外子宮口のあたりに発生することが最も多いとされるがんであり、定期的な検診でがんになる前の段階で見つけることが可能とされます。

 

子宮頚がんの原因は性交渉によって感染するHPVウイルスとされ、免疫機能により通常は排除されますが、ウイルスが排除されずに長期間感染が続く場合一部がん化されると言われます。

 

子宮頸がんのワクチンは度々女性に啓発をされていますが、HPVワクチンは男性も接種することが可能です。性交渉によるHPV感染から大切なパートナーを守るために、男性への啓発および意識改革も期待されています。

 

子宮頸がんの対策型検診では、20歳以上の女性を対象に2年に1回、問診、視診、子宮頚部の細胞診及び内心が行われます。

 

任意型検診では希望者に対し、任意の間隔において細胞診や内診、HPV検査など、受診する医療機関の方法によって受診が可能です。

 

 

健診と検診は健康な毎日を過ごすための対策!

「ちょっと調子が悪い」この違和感に気付きながらも放置をしていると、「あの時受診していれば…」という結果になりかねません。

 

何かと忙しい現代社会ですが、ストレスが多い社会だからこそ、身体のメンテナンスは必要不可欠。定期的にご自身の身体と向き合い、人生100年時代、できるだけ長い健康寿命を全うできるように心がけましょう。

 

また、少子高齢化が進む現在。企業にとって健康で長く働いてくれる従業員は宝といっても過言ではありません。大切な宝である従業員の健康をぜひ定期的な健診と検診で守って頂ければ幸いです。

 

健診も検診も、何か迷うことがあれば弊社にぜひ一度ご相談ください。

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