一日一食ダイエットは著名人が実践する事で話題になり注目され始めました。しかし、食事を一日一食に減らす事で本当に痩せるのでしょうか?
気になる一日一食ダイエットのメリット、デメリットや実施の注意点について管理栄養士がお伝えします。
一日一食ダイエットの方法
一日一食ダイエットは文字の通り一日の食事を1回だけに減らすダイエット方法です。一日三回の食事のうち、1回の食事をいつのタイミングでとってもかまいません。「今日は友人とランチなので昼だけ食べる」や「明日は飲み会の席で夜だけ食べる」など、基本的に何を食べてもかまわないので健康な人ならいつでも始められます。
一日一食ダイエットのメリット
期限を設定して実行すれば、一日一食ダイエットには次のようなメリットがあります。
短期間で体重が落ちる
一日三回の食事を一食に減らす訳ですから、体重が早い段階で落ちる事が一日一食ダイエットの最大のメリットと言えます。
胃腸が休まる
食べた物を消化する為には平均で2〜3時間、脂質の多い物だと5時間近くかかると言われています。一日一食ダイエットを行う事で胃腸の消化活動を休ませる事ができますので、前日に食べ過ぎた場合、翌日に一日一食ダイエットを行う事で胃腸が休まり胃もたれなどの不快な症状が軽減される効果が期待できます。
アンチエイジング効果がある
空腹の状態だと若返りホルモンと呼ばれる「成長ホルモン」が分泌され肌や粘膜を再生させる他、若返り遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子が活性化して全身の細胞内の傷ついた遺伝子を修復する役割があると言われています。
一日一食ダイエットの注意点
一日一食ダイエットを始めるなら、以下の注意点を守って行いましょう。
短期間でやめる
一日一食ダイエットは長く続けると栄養不足に繋がるなど、デメリットの方が多くなってしまいます。体重が思うように減らないからといって長期間続けるのは体に良くありません。
胃の重さが軽減したり不調が改善されてきた感じがしたらすぐに中止するようにしましょう。
水分をこまめにとる
水には栄養はありませんが、血液をはじめ皮膚や筋肉、体を構成する成分の中で最も多い割合を占めています。皮膚や筋肉、臓器、骨などのあらゆる部分に分布しています。また、水は血液やリンパ液などの栄養素など多くの物質を全身に運ぶためにも欠かせないのです。
食事の回数を減らす事で食事から摂取できる水分量が少なくなってしまいますので、ダイエット中も水分はこまめにとるようにしましょう。コーヒーは利尿作用があり、お酒には脱水の作用があるので水分補給にはカウントされません。純粋な水から1日1ℓは水分を摂取するようにしましょう。
栄養のバランスをとる
一日一食ダイエットは一日に一回の栄養で過ごすわけですので、ここで間食やおやつに食べるようなジャンキーな食べ物や栄養バランスを無視した食事(おにぎり1個など)ではすぐに体調を崩してしまいます。一日一食ダイエット中でも、栄養バランスと食事量は確保しましょう。
一日一食ダイエットに向かない人
どちらかと言うと一日一食ダイエットは1食あたりの食事量が多い成人男性に向いています。楽に痩せられるダイエットと聞くとついつい飛びつきたくなりますが、特に体力が必要な子育て中の女性やこれから妊娠を希望する女性には不向きなダイエットと言えます。
一日一食ダイエットのデメリット
一日一食ダイエットは結論として一日のエネルギー量が激減してしまいます。それによって起こるデメリットの方が深刻ですので、見ていきましょう。
ストレスがたまる
普段三食食べている人が一日一食ダイエットを行うと強い空腹感を感じ、慣れるまでは大きなストレスを抱えてしまう可能性があります。また、ストレスが溜まる事でダイエットが終わった後に食べ過ぎてしまい、リバウンドしやすいといったデメリットもあります。
血糖値が上がりすぎてしまう
空腹の時間が長いと糖分が不足して血糖値が下がりすぎてしまいます。そうすると、次に食べ物を摂取した時に血糖値が急上昇しますので一日一食の生活では更に血糖値の乱高下を起こしやすくなってしまいます。この生活が続くと糖尿病予備軍になる可能性が上がり、血管がダメージを受けて動脈硬化や心筋梗塞の原因となってしまう原因となります。
ダイエット前より太りやすい体になる
食べ物が長い間体に入って来ない状態は脳が飢餓状態であると判断して摂取したエネルギーをため込もうとする働きが起こります。またエネルギー不足が続くと体のタンパク質を壊してエネルギーを作ろうとするため、タンパク質が分解されて筋肉量が減る事によって基礎代謝も落ちてしまい、その結果痩せにくい体になってしまいます。一日一食ダイエットは痩せるスピードが速い半面、太りやすい体を作る危険を含むダイエット法である事を理解しておきましょう。
栄養不足になりやすい
一日一食ダイエットで栄養のバランスが崩れてしまったり、摂取カロリーが低い場合は低栄養状態から将来のフレイルや、女性の場合は不妊を招いてしまう危険も潜んでいます。
フレイルとは「虚弱」を表し、加齢によってさまざまな機能が低下する事で筋力や認知機能が低下した状態を指します。さらに低栄養の状態が続けばサルコペニア(筋肉減少の意味)に繋がります。そこから基礎代謝が落ち、疲れやすくなり活動量の減少により食欲が低下して食べる量が減っていきます。
この低栄養状態の悪化はフレイル・サイクルと呼ばれ、若い時の食習慣も大きく影響します。更に、厚生労働省の「健康日本21」では一日に350gの野菜を摂取する事とされています。一日三食であれば達成しやすい目標も、一食で350gを食べるのは至難の業となり目標を達成する事が難しくなるでしょう。野菜の摂取が減る場合、体の調子を整えるビタミン・ミネラルの他食物繊維の摂取量も減ってしまう事になり、健康へのリスクが上がってしまいます。
健康的なダイエットの近道はずばり食べる事!
健康的に痩せるためには、1日3回の食事をとる事が望ましい事はご存知ですか?
将来のフレイル(加齢によってさまざまな機能が低下する事)を予防する為にも、以下のBMIを保つ事が必要であるとされています。高齢者の目標BMIは低栄養予防もふまえて下限値が高めに設定されています。
BⅯIの測定方法
BⅯI=体重㎏÷身長m÷身長m
18~49歳 18.5以上
50~64歳 20以上
65~75歳以上 21.5以上
ダイエットでエネルギー量は減らさない
脂肪を燃焼させる為には必ずカロリーが必要です。女性でも1日に必要なエネルギー量は2000㎉必要なので、幕ノ内弁当およそ3つ分を食べてようやく目標カロリーに達する事になります。ダイエット=食べる量を減らす必要があると考える方も多いと思いますが、食欲を我慢して得られるのはストレス位です。食べる「量」を減らす必要はありません。
ダイエット中でも栄養のバランスをとる
ダイエットをする時は炭水化物を抜くようなダイエットはやめて、栄養のバランスを意識した献立にしましょう。そうする事で栄養不足を補い様々な栄養素が体内で働く事で痩せやすくなります。まずは基本の3大栄養素である「糖質」「脂質」「タンパク質」を必要最低限摂取するようにしましょう。
【炭水化物】
炭水化物が不足すると疲れやすくなります。ブドウ糖が主なエネルギー源である脳は1日に120gものブドウ糖を消費するとも言われており、炭水化物が不足すると脳への栄養が行き届かなくなるため注意力が散漫になったり判断力が鈍る危険性もあります。
ダイエット時でも選びやすい炭水化物は白く精製されていない茶色い物を選ぶ事で血糖値の急上昇を抑える事ができます。白米より雑穀米、うどんよりそば、食パンよりライムギパンなど、精製度の低い物を選びましょう。
【タンパク質】
ダイエット後に目指したい体は、ガリガリに痩せた小枝のような体ではなく、ウエストが引き締まっているかっこいい体ではないでしょうか?
しなやかな筋肉を維持していく為にも、ダイエット中でもタンパク質の質は意識しておきましょう。部分タンパク質は一日で分割して摂取する事で効率良く体内で利用する事ができます。肉や魚、卵、大豆製品に多く含まれるタンパク質は髪の毛からつま先まで体を作る栄養素となるばかりでなく、酵素やホルモン、免疫系にも働き非常に重要な役割を担っています。タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されており、その中の9種類は必須アミノ酸と呼ばれています。必須アミノ酸は体内で合成する事ができない為、必ず食事から摂る必要があります。
トリプトファン レバーや牛乳
リジン サバや大豆食品
メチオニン 牛肉や牛乳
フェニルアラニン 肉、魚、大豆製品
スレオニン 卵、スキムミルク
バリン 鶏肉、レバー、魚
ロイシン 牛肉、レバー、チーズ
イソロイシン 鶏肉、牛乳、チーズ
ヒスチジン 鶏肉、イワシ、カツオ、マグロ
アミノ酸スコアの高い食品を選ぶと簡単に必須アミノ酸のバランスがとれます。100に近いほど良質なタンパク質と言えます(肉、魚、卵など)。タンパク質量が不足すると筋肉が減少し、基礎代謝が落ちて太りやすくなるばかりか冷えや疲労の原因にもなりますので注意が必要です。
【脂質】
脂質はエネルギーや体温を保持したり、細胞膜やホルモンの生成に欠かせない栄養素です。油=ダイエットの敵と考えるのは間違いで脂質が不足する皮膚のカサつきや血管が弱くなる事にも繋がり、美容面にも悪影響が出てしまいます。健康の為には酸化した油は望ましくありませんが、魚に含まれる不飽和脂肪酸は血液をサラサラにするなど体にとって良い成分が多くダイエット時にもオススメです。
【食物繊維】
食物繊維が不足すると便秘になります。更に、腸内でつくられた有害物質が長く留まる事で
腸内環境が悪化して肌荒れの原因になったり、発がんのリスクも高まると言われています。一日一食ダイエットに限らず、毎日の食事では食物繊維を意識しましょう。
食物繊維の増やし方についてはこちらをご覧下さい
闇雲に進まずゴールを決める
健康を優先する為にも、ダイエットをする際は必ずゴールを決めましょう。一日一食ダイエットの場合は特に代謝能力や筋肉量が落ちてしまいやすく、年齢を重ねてから体に弊害が出てしまう可能性があります。一日一食ダイエットの場合は1~2㎏減のダイエットに努めめ、出来るだけ短期間で終了するようにします。
まとめ
いかがでしたか?
一日一食ダイエットは長く続かない上に健康を害するリスクが潜むダイエットです。もし体に合わないと感じたら、すぐに中止しましょう。一日一食ダイエットを行うなら、期間と目標を決めて栄養バランスや水分不足に気を付けましょう。管理栄養士がオススメするダイエットは1日3食をきちんと食べるダイエットです。実施するからには健康的かつ効果的なダイエットを実践しましょう。
社員の健康管理については、ライフサポートサービス株式会社までお問い合わせ下さい。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。