今流行りのグルテンフリーとは?実践方法やメリット、デメリットを紹介

パンとコーヒー





グルテンフリーという言葉は、海外のモデルや芸能人が生活に取り入れる事によって世界的に注目されるようになりました。グルテンとはいったい何なのかをはじめ、グルテンフリーのメリット、デメリットを知り、自分の体調に合わせてグルテンフリーを実践する方法を管理栄養士がお伝えします。

 

小麦粉とグルテン

小麦は世界で最も広く栽培されており、イネ、トウモロコシとともに世界の3大穀物と言われています。小麦粉は別名うどん粉やメリケン粉と呼ばれ、小麦ふすま(果皮、糊粉層)を除いて胚乳部分を粉にしたもので、でん粉とグルテンからなります。

 

小麦ふすま(ブラン)には脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン、食物繊維が豊富に含まれ健康食品として広く利用されています。小麦粉の主な栄養成分はタンパク質が約6~14%程度含まれており、その約80%は「グルテニン」と「グリアジン」です。

 

小麦粉に適量の水を加えてこねるとこのグルテニンとグリアジンが絡み合って「グルテン」ができます。両者は性質に大きな違いがあり、グルテニンは弾力に富むが伸びにくく、グリアジンは弾力は弱いが粘着力が強く伸びやすい性質を持っています。小麦を粉にして利用する事でこの2つのタンパク質が結びついてグルテンを形成しやすくなります。小麦粉に加える水の量によって、パン作りに適した弾力のある生地やうどん用のまとまっていないポロポロとした生地、ケーキやてんぷらに使うドロドロとした生地のバッターなど、小麦粉は様々な状態に変化して小麦粉料理に役立っています。

 

小麦粉はたんぱく質の多い順に「強力粉」「中力粉」「薄力粉」の3種類に分けられ、グルテンの含有量は強力粉が最も多いと言えます。

 

グルテンの体への影響

グルテンは食品に粘り気と弾力を与える効果があります。パスタやうどんのもちもちとした食感やパンのふわっとした食感は全てグルテンのおかげと言えます。しかしグルテンが小麦製品のおいしさを引き出す一方で、体内で消化されにくい性質を持つため、異物となって腸内環境を悪化させ、体に不調をもたらす可能性もあるのです。

 

更に、現代では昔よりも大量生産やもちもちとした食感をアップさせるために品種改良が繰り返された小麦を食べています。そのおかげて生産量は上がっていますが、日本人が昔から食べていた小麦よりもグルテンの含有量が増えているという懸念もあります。

ファーストフード店やフランチャイズの飲食店が増え、小麦製品を食べる機会が増えた事でお腹の張りやむくみ、喘息、アトピー性皮膚炎などの症状、倦怠感や肌荒れなど、長期的に現れる症状も増えてきています。

知っておこう、小麦の中毒性

パンを食べるとその美味しさからパンが辞められなくなった経験はありませんか?

 

小麦は消化されると化学物質のエクソルフィンという物質が作られ、食べる事によって多幸感を感じて「もっと食べたい」という依存症状が引き起こされます。小麦製品を食べないと気持ちが落ち着かない場合は、すでに小麦に依存してしまっているかもしれません。

 

タバコやお酒と同様、何かに依存して辞められない状態になると身体への影響は大きいですので、その場合は米粉のパンに替えてみるなど、賢くグルテンフリー食材を取り入れていきましょう。

 

小麦アレルギーとグルテンフリー

小麦からのグルテンを摂らないメリットはどのような人や症状にあるのでしょうか。

 

グルテンフリーの定義

グルテンフリーとは小麦に含まれるグルテンを摂取しない食事法で、グルテンフリー食品を選択する事はグルテンを摂取する事で不調が出る人にとってはメリットが大きいと言えます。

 

多様に選べるグルテンフリー食材

グルテンフリー食材には、米粉や大豆粉、おからパウダー、アーモンドプードルなどさまざまなものがあります。

 

米粉

うるち米の精白米を非常に細かく製粉したものです。米粉は小麦粉と違い粘りのもととなるグルテンを含まないため、一昔前はパンを膨らませたりしにくい食材でした。しかし、現在は、改良されて粒子が細かくなった為にタンパク質や脂質と馴染みやすくなり、パン、麺、ケーキ等にも利用できるようになりました。

 

大福などの米加工食品の和菓子も英国ではグルテンフリー食品として好まれています。お米にはグルテンが含まれていないものの、米粉に関しては製造工程を適切に管理する事で外部からの混入を防ぎ、グルテン含有量が1ppm以下(0.0001%)となる米粉を「ノングルテン米粉」と表示する仕組みである「ノングルテンJAS認証」という物があります。米粉パンのパン粉は揚げ物の衣として代用する事ができ、料理としても使い勝手がよくグルテンフリー食材として広く利用されています。

 

大豆粉

生や低温で焙煎された大豆をそのまま粉末にしたものです。タンパク質を多く含み、小麦粉や米粉の代用品として幅広く利用する事ができます。また、きな粉はしっかりと煎った大豆を粉に挽いたものです。

 

おからパウダー

豆乳を絞った後に残るカス(おから)を乾燥させたもので、食物繊維が多く糖質が少ないメリットがあります。お好み焼きや蒸しパン、ドーナツなどの普段の小麦料理の代わりに使う事ができます。

 

アーモンドプードル

生のアーモンドを砕いて粉末状にしたもので、小麦粉の代用品としてクッキーやマカロン、ケーキの生地などに使用されます。

 

しらたき

こんにゃくをシャワーの出口のような所からお湯の中に細長く出し、流して固めたものです。欧州の一部の地域ではパスタの代用品として好まれています。

 

小麦と食物アレルギー

私たちの体は異物が体内に入ってきた時に免疫反応が起こり、排除する仕組みを持っています。それが過剰に働く事によってじんましんなどのさまざまな症状が起こる事をアレルギー反応と言います。

 

通常、食べ物は異物として認識しないようにする仕組みが働き免疫反応を起こさずに栄養として吸収されますが、特に子供の場合など、消化吸収機能が未熟だと食べ物を異物として認識してしまう事があります。

 

食物アレルギーの主な症状を以下にまとめました。

 

眼のまわりのかゆみ、充血

 

口腔咽喉頭

唇や舌の違和感・腫れ のどのかゆみやイガイガ

 

皮膚

肌のかゆみ、じんましん、発赤、湿疹

 

消化器症状

下痢、気持ちが悪い、吐き気、嘔吐

 

呼吸器症状

くしゃみ、鼻づまり、鼻水、せき、呼吸困難

 

全身症状

ぐったりする

 

小麦は卵、牛乳とともに3大アレルゲンと呼ばれています。アレルゲンとなる食べ物を食べてから呼吸器や消化器など複数の臓器に強いアレルギー症状が現れることをアナフィラキシーといいます。さらに血圧が下がり意識障害などが起こる症状をアナフィラキシーショックといい、これは命に関わる危険性があるため早めの対処が必要です。

 

食物アレルギーと聞くと、食べてから即時に呼吸困難やアナフィラキシーなどの重篤な症状を発症するイメージをお持ちかと思います。

しかしフードアレルギーにはもうひとつ、「遅延型フードアレルギー」というものが存在します。小麦を食べるとすぐにじんましんやかゆみといった症状が出るアレルギーは即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)と呼ばれます。遅延型フードアレルギーはアレルゲンとなる食材を食べて発症するまでに数時間から数日経ってから症状が現れる事があります。また、好んでよく食べている物に遅延型フードアレルギーが多いと言われていますので、好物だと思っていた物がアレルギーの要因になっていたという事も考えられます。

 

グルテンが含まれる加工食品には、以下のようなものがあります。

 

パン、うどん、マカロニ、スパゲティ、麩、ぎょうざの皮、市販のルウ(シチュー、カレーなど)から揚げやトンカツなどの揚げ物の衣、ふりかけ、ドレッシングや醤油などの調味料など

 

グルテンはパンや麺以外にも、調味料やビールにも含まれているとは驚きですよね。

 

グルテンフリーのメリット

グルテンフリーには、アレルギー症状の軽減や家族や友人との食事を楽しめるなど様々なメリットがあります。

 

アレルギーでもみんな同じ食べ物が楽しめる

小麦などの食物アレルギーを持つ人にとって、飲食店によっては皆と同じ食事を楽しめない場合があります。グルテンフリーのメリットはなんといってもグルテンを含む小麦を摂取できない人にとっても小麦に似た料理食感を楽しめる事です。

 

日本でも一部のスーパーではグルテンフリーの麺やパンが販売されるようになり、身近な存在として扱われるようになりました。小麦のアレルギーがあっても家族皆で同じ食事を楽しめる大きなメリットがグルテンフリー食にはあります。外食チェーンではメニュー表に小麦不使用と明記されている店舗も増え、家族で同じお店の食事を楽しめるようになりました。もしメニューに載っていない場合でも、お店で調べてもらえます。

 

アレルギー症状の軽減

グルテンフリーを実施すると、グルテンを摂取する事で起こるさまざまな不調(アレルギー症状)の防止や軽減につながります。グルテンを摂取することで起こりうるアレルギー症状を以下にまとめました。

 

①セリアック病

セリアック病は自分の腸の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患で、グルテンを摂取する事で拒絶反応が起き、小腸内で炎症を起こしてしまいます。もともとセリアック病が知られている欧米では約300万人がセリアック病と推定されており、50年前と比べると患者数はおよそ4倍にも増加しているそうです。

 

しかしながら日本人を含むアジア人が発症する事は稀だと言われています。セリアック病は慢性的な栄養吸収がうまくいかなくなる事が特徴で、グルテンを避けるしか治療法がない事が現状です。

 

②リーキーガット症候群

日本ではまだ聞きなれないかもしれませんが、リーキーガット症候群は別名「腸もれ」と呼ばれる腸の症状のひとつです。腸内での栄養の消化吸収の仕組みがうまく機能しなくなるため「身体がなんとなくだるい」や「風邪をひきやすくなった」などの身体の不調が続くことがあります。また、腸に慢性的に傷がつき、腸粘膜のコンディションが悪化した事によって全身の健康状態に悪影響を与えているケースもあるでしょう。

 

ただし、リーキーガット症候群の直接的な原因は人を対象とした臨床試験が行われているわけではないですし、小麦=腸内環境を悪くするといったイメージからグルテン摂取が原因と混同されがちですが、小麦が直接的な原因になっているわけではありません。しかしながら消化する際に腸壁を傷つけてしまう可能性からグルテンが不調を引き起こすことが、論文によって示されています。

 

③グルテン過敏症(不耐症)

そもそも日本人の多くは小麦のグルテンが体に合わず、グルテン過敏症の方が多いと言われています。もし小麦アレルギーでもないのにグルテンを含む食材を摂取すると数時間から数日後に腹痛、下痢、めまい、耳鳴りなどが生じる場合は、グルテン過敏症の可能性があります。米と小麦の流通が逆転した日本で、今後患者数が増える事が懸念されています。

 

グルテンフリーのデメリット

グルテンフリーは体に良い健康法に見えますが、健康な人が実践する事によるデメリットも存在します。

 

グルテンフリーはダイエットに良いわけではない

グルテンフリーはダイエットになると考える方も多いのではないのでしょうか。小麦は血糖値が上がりやすい性質を持ち、菓子パンや惣菜パンには余分な油や砂糖が多く含まれているため小麦パンを辞める事によってダイエット効果が現れるかもしれません。

 

しかしながらが、グルテンフリー食品はカロリー減を重視して作られている訳ではないためダイエット食品という認識で利用すると逆に体重が増加してしまう恐れもあります。グルテンフリー商品を使用する事によって必ずしもダイエットに結びつくわけではない事を理解しておきましょう。

 

急なグルテンフリーは健康を損ねる恐れもある

セリアック病や小麦アレルギーの方はグルテンフリー生活を実践するメリットが多いでしょう。しかし、健康な人がいきなりグルテンフリーを取り入れるとかえって体の栄養バランスを崩してしまう可能性があります。

 

健康の為にといきなりグルテンフリーを実践するのではなく、気持ちの面からも小麦を絶つ事がストレスにならないよう、ゆっくりとグルテンフリー生活をスタートしましょう。

グルテンフリー食品を選ぶポイント

グルテンフリー食品は、食品成分表示やアレルギー表示などをしっかりと確認してから手にとることが大切です。

 

コンタミネーションをチェックする

コンタミネーションとは、食品を製造・加工する時に原材料として使用していない食品やアレルゲンなどが混入してしまう事です。小麦は主食以外の食品にも含まれるため、小麦を含む商品と共通の設備で製造されていないかどうかの確認も必要です。

 

食品成分表示の記載の欄などにコンタミネーションの表示がされているケースもありますので、よく表示を確認しましょう。

 

コンタミネーション記載の一例:

「本製品は、製造ラインで●●類を使用した製品も取り扱っています。」

 

小麦のアレルギー表示

 

加工食品のアレルギー表示義務は、患者さんの数が多い、あるいは重篤度の高い8品目(卵、乳、小麦、えび、かに、くるみ、落花生、そば)の表示が義務づけられています。この8品目は容器包装された加工食品に微量でも含まれている場合、必ず表示をする義務があります。

 

ただし、含まれる量が少量の場合は食品成分表示の最後に記載されている場合があるので見逃さないよう注意しましょう。また、容器包装されていない料理や加工食品にはどのような原材料であっても表示の義務はありませんので、特に微量の小麦でアレルギーが発症する場合は製造工場内でも小麦粉が使用されているかどうか販売者に直接確認するようにしましょう。例えば小麦粉不使用の調味料など、使える加工食品が見つかれば普段の料理もグンと楽になります。

 

まとめ

いかがでしたか?

 

グルテンによるアレルギー症状や目に見えない不調は非常に多く存在しますが、グルテンフリーの食事法を実践する事で肌が綺麗になったり花粉症の症状が緩和することがあります。

 

今までグルテンフリーをよく知らなかった人にとって有益な食事改善法であると考えられるでしょう。日本ではグルテンフリー食品を扱う食品会社が増えて来ましたし、米粉や大豆粉を使ったパンやケーキなど、グルテンフリーの食材を手軽に楽しめるようになって来ました。グルテンは体に悪い、グルテンフリーは健康に良いというイメージが一人歩きしているように思われますが、体調に応じてグルテンフリーの食事を選んでを楽しめたら良いですよね。

 

社員の健康管理については、ライフサポートサービス株式会社までお問い合わせ下さい。

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執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士

生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。