毎日仕事で使うパソコン、仕事が終わって楽しむスマホ。これでは目が休まる暇がありません。
おかげで「つらい眼精疲労に悩まされています」という方、多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「現代病」と言っても過言ではない眼精疲労について、仕事中にもできるマッサージの方法や、普段から気を付けるべき眼精疲労予防のポイントなどをお伝えしていきます。
眼精疲労とは?
長時間の画面作業や、スマートフォンの長時間使用によって目は酷使されています。ハードワークな目は、疲れやかすみ、乾燥感、灼熱感といった目の症状だけでなく、頭痛や肩こりなども併発して現れることが少なくありません。
1~2日の睡眠などで回復するもの(疲れ目)ではなく、慢性的に続く疲れを「眼精疲労と呼びます。
眼精疲労の症状
長時間デバイスの画面を見続けることで引き起こされる眼精疲労には、いくつかの特徴的な症状があります。
症状として目そのものに出るものもあれば、目以外の場所に出るものもあります。
まず、目の症状としては、疲れやかすみ感が顕著で、文字や画像がぼやけて見えることが代表的な症状でしょう。これは、視力を酷使することによって生じるもので、長時間の画面閲覧がその原因とされています。
他にも乾燥感や灼熱感、涙が出たり充血したりといった症状も一般的です。
目以外の症状としては、頭痛や肩こりが代表的です。長時間画面に集中することにより、緊張やストレスが影響して目以外の疲れを引き起こします。人によっては吐き気を伴う重い症状に悩まされているという方もいることでしょう。
なぜ目が疲れるのか?
「なぜ目が疲れるのか」はもうお分かりのとおり、現代人にとって目を酷使するなという方が難しい社会だからです。
ガラケーがまだ主流だった頃でさえ、長時間のパソコン使用は目に悪い、と言われましたよね。いえ、もっと言えば、きっとあなたも子どもの頃に経験があるはずです。親から言われた「ゲームは目に悪い!」「テレビは目に悪い!」。
目は何かをじっと見続けているとき、ピントを合わせるために目の水晶体の厚さを常に調整しています。これは「毛様体」と呼ばれる筋肉組織によるもので、眼精疲労はこの毛様体が疲労して起こる、すなわち目の筋肉疲労が原因だと言えます。
この毛様体疲労を、以下のような環境が引き起こしています。
長時間の画面鑑賞やデバイス使用
目は長時間の画面鑑賞やデバイス使用により、一定の焦点を維持し続けることが求められます。これが、先ほどお伝えした「毛様体」の疲労ですね。
毛様体は、眼球のレンズである水晶体を調節して焦点を変える役割を果たしています。画面を見続けることで、毛様体は長時間にわたり焦点を維持し続ける必要があります。この過度な調節作業が続くと、毛様体の筋肉が疲れやすくなります。
しかもだいたいの場合、画面を見る際は近距離なはずです。最近ではスマートフォンの小さな画面で超大作映画を見る人もいることでしょう。
近い距離に焦点を合わせることが求められる環境で、毛様体が常に近くの物体に焦点を合わせる状態が続き、毛様体が過労の状態となるのです。
スマートフォンでゲームをしたり画像を見続けたりすると目が疲れるのは、至近距離で動く対象物にピントを合わせ続けなければならないからです。
ブルーライトの影響
パソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトは、眼球の奥の網膜に直接影響を与え、視覚疲れを引き起こすことがあります。
ブルーライトは網膜の中の「光感受性細胞」に影響を与えます。これが眼精疲労を引き起こす一因になる上に、睡眠の質を低下させる可能性も指摘されています。
まばたきの不足
長時間にわたる画面鑑賞や読書において、まばたきの回数が減少し、目の表面が適切に潤滑されなくなります。これにより、目の乾燥感や疲れが生じやすくなります。
ところで、人間は1日何回まばたきをしているかご存知ですか?平均的に、1分間で20回とされており、1時間で1200回、16時間起きていると仮定すると、1日トータルで計算すると平均的に約2万回ほどまばたきをしていることになります。
ところが、動画を見たりゲームに夢中になったりすると、まばたきをするのを忘れて没頭することがあります。仕事上パソコンが必要な方も、集中しているときはまばたきに気を向けないものです。
なおかつ、まばたきを司る「眼輪筋」「挙筋腱膜」「ミュラー筋」が衰えることで、まばたきしているように思っていてもしっかり目が閉じられていないこともあります。
こういった状況下で目は乾きやすくなり「ドライアイ」へ、そして眼精疲労へと繋がっていくのです。
ドライアイとは?
長時間のコンピューター作業やスマートフォンの使用、空調の利いた部屋での過ごし方などが原因となり、目が乾いてしまう症状をドライアイと呼びます。ドライアイもまた、現代病と呼んで良いほど、悩まされている人は多いことでしょう。
ドライアイは、目の交感神経が過度に緊張することで起こるとされ、その起因となるのが長時間のデバイス使用です。
また、加齢や特定の薬の副作用などもドライアイの原因となることが指摘されています。
ドライアイには兆候があるとされますので、目がかゆい、目が赤い、燃えるような感じがする、視界がぼやけている、目が疲れやすいといった兆候が表れた場合は、早めに眼科を受診するようにしましょう。
また、目の交感神経が過度に緊張しているのを抑えるために、深呼吸をしたり十分な水分を摂り、適度にリラックスすることも大切です。
作業環境の影響
職場の作業環境が目に負担をかけている可能性もあります。たとえば、照明が不足していたり、モニターの位置が適切でなかったりすると、目に負担がかかりやすくなります。
モニターは目線よりやや低めに設置し、画面の明るさも適切に調整するようにしてください。もちろん、ブルーライトのカットをすることも大切ですので、ブルーライトをカットする眼鏡を使用するか、モニターにブルーライト低減フィルムを張るなどして対策をしましょう。
そして職場の空調に悩まされている方は、適度に加湿するようにしてください。USBに繋いで使える加湿器もありますし、コップに温かいお湯を入れておくだけでも改善策になります。
視力の変化
加齢や長年の目の酷使によって、知らず知らずの内に視力が変化することがあります。適切なメガネやコンタクトレンズの使用が目を守るために重要ですが、「見えにくい」と気付いていても眼鏡やコンタクトレンズの度数を変化させずに使っている人は少なくありません。
過強制・低強制や老眼の初期など、見えにくい状態で作業を続けると、言わずもがな眼精疲労が引き起こされやすくなりますので、見え方の変化を無視せず、適切な眼鏡やコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
眼性疾患
何事も「自己診断」ほど怖いものはありません。「ただ目が疲れているだけだろう」と放置しておくと、実はただの眼精疲労ではなく眼性疾患であった、なんてことにもなりかねませんので、継続して眼精疲労が出ている場合は必ず専門医の診断を受けるようにしましょう。
眼性疲労の症状として現れやすい眼性疾患には、白内障、緑内障、眼瞼下垂、屈折異常(乱視・遠視など)などがあります。
知っておきたい目の症状!眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂は、眼瞼、いわゆるまぶたが通常よりも下がっている状態を指します。これは、まぶたが開かれる筋肉である「眼瞼挙筋」が弱くなることが理由とされており、加齢による筋力低下、加齢による皮膚のたるみ、コンタクトレンズの長期使用、アトピーやメイクでのまぶたのこすれ、神経性疾患やアレルギー疾患、白内障術後の後遺症などといったことが原因とされています。
また、加齢ではなくとも生まれつきまぶたが下がっている「先天性眼瞼下垂」において、まぶたを上げる筋肉が弱っている場合や欠損している場合もあります。
眼瞼下垂はまぶたが下がることにより、目の疲れや視界が制限されるため眼精疲労として症状が出やすくなります。
眼瞼下垂の改善は基本的に手術を行います。保険適用での眼瞼下垂手術を行っている病院も多くありますので、まぶたの下がりが視界を遮っていると感じたら、医師に相談してみてください。
身体/精神的疾患
眼性疲労と思っていた症状が、身体的・精神的疾患であることもあり得ます。たとえば、風邪で免疫が落ちている際、「疲れ目」として見え方に違和感が出たり、女性の場合はホルモンバランスの変化によって目の不調を感じやすくなることもあります。
また、目は自律神経と深い関係があることから、精神的に疲れている場合も目のかすみや「何となく見えにくい」という不調に繋がる場合があります。寝不足が続くと何となく目が見えにくいという症状を経験した人も多いのではないでしょうか。
ストレスは「目にも影響を与える」と考えると、ストレスが万病の元だということを再認識せざるを得ません。目の疲れが継続している、と感じたなら専門医の受診とともに、ストレス因子となっているものはないか想い返してみるのも眼精疲労を防ぐ効果的な方法となるでしょう。
知っておきたい目の症状!閃輝暗点とは?
視界にギザギザの光が20分程に渡って走る閃輝暗点。閃輝暗点が起こった後はひどい片頭痛が起こるまでセットとなっている厄介な症状です。
ギザギザの光は視野を遮るため「目に何か異常があるのではないか」と不安になることもあるでしょう。
閃輝暗点は眼精疾患ではなく、眼球自体の異常ではなく、脳の視覚野の血管収縮により、血流の変化が起こるためとされています。主な原因としてはストレスや睡眠不足が指摘されています。
残念ながら現時点で、閃輝暗点の治療法は確立されていません。片頭痛を見越して痛み止めを服用し、安静にすることが予防策とされているくらいです。
閃輝暗点が出たときは、無理をせずにゆっくりと休むようにし、日頃から閃輝暗点が出ないようにストレスケアをすることが大切です。
ただし片頭痛を伴わない閃輝暗点がある場合、脳梗塞や脳腫瘍などの疑いがあるとされますので、専門医の診断を受けるようにしましょう。
眼精疲労はここをマッサージ!セルフケアで目を守る方法
仕事中に襲い掛かる眼精疲労。いち早く症状を改善したい!そんなときに眼精疲労のセルフケアができるようにしておきましょう。いくつか簡単にマッサージができる目のツボをご紹介しますので、ぜひ取り入れてみてください。
目の疲れは「頭の後ろをマッサージ」!
首と頭との境目を押すと目の奥に「ズーン」とした心地よい痛みが響くかと思います。ここは「天柱」「風池」という目のツボがあり、また後頭下筋群の集合している部分となります。
後頭下筋群は、目の焦点を合わせる毛様筋が働く時に連動する筋肉です。目の疲れがある場合のアプローチに有効とされます。
目の疲れで肩凝りがある人にも有効ですので、一石二鳥のツボ押しであり、さらにアイメイクを崩したくない方にも嬉しいセルフケアになります。
なお、マッサージの基本は「痛気持ち良い」までにとどめておくことと「4秒押して4で力を抜く」一定圧ですので、参考にしながらツボ押ししてみてくださいね。
天柱
天柱は、背骨の上部、つまり頸椎の第一頚椎と第二頚椎の間に位置します。
天柱は、身体の調和を促進するとされており、天柱を刺激することで、眼精疲労の他、頭痛や首のこり、肩こり、めまい、吐き気などの症状を緩和するツボとされます。
マッサージする際、両方の親指で天柱に、親指以外の4指で頭をしっかり持つとツボ押ししやすい姿勢となります。
風池
風地は、頭部の後頭部に位置し、頸椎の第七椎と頭蓋の隆起部の中点の間にあります。
風地は、頭痛や頚部の痛み、肩こり、めまい、吐き気、睡眠障害などの症状の緩和に役立つとされています。特に、風邪や風邪の初期症状が現れるときに刺激することで、症状の軽減や早期回復が期待されるツボでもあります。
眼精疲労にきく目の周りのツボをマッサージする
眼精疲労にきく目の周りのつぼをご紹介します。こちらも基本のマッサージ同様、4秒押して4秒で力を抜く方法で優しく刺激していきましょう。
睛明(せいめい)
両目の内側の上方に少しくぼんだ場所があります。睛明は目の屈折異常を緩和するツボとされており、近視・遠視・老眼、また緑内障や白内障といった眼精疾患に起因する眼精疲労にアプローチができるツボとして有名です。
また、鼻水を抑えるツボとしても有効ですので、つらい花粉の時期にも良いでしょう。
承泣(しょうきゅう)
承泣は黒目の真下の「くぼみ」にあるツボです。目のかすみやドライアイを緩和するツボとされており、目の下のクマやたるみにもアプローチができるツボとしても有名です。
強くマッサージすると痛みをともないやすいツボですので、両方の中指を使って軽くマッサージするようにしましょう。
眼精疲労の他に、胃腸の不調を緩和するツボとしても有効とされてますので、食べすぎや冷えからの血行不良などで困ったときにもマッサージしてみてください。
メイク前に承泣をマッサージすると、血色感アップを期待できますのでおすすめです。
絲竹空(しちくくう)
絲竹空は眉尻の少し下で、頭蓋骨のふちに沿ったくぼみにあるツボです。目の奥の痛みやまぶたの痙攣、頭痛などにもアプローチができるツボとして有名です。
両方の親指を使って、軽く円を描くように優しくマッサージしていきます。場所がわかりにくい方は手掌で軽く圧迫しながら広範囲を柔らかくマッサージするのも効果的です。
眼精疲労の他には、集中力を高めることと、老廃物の排出に期待ができるツボとして有名です。
なんとなくボーっとするときなど、絲竹空を刺激してリフレッシュしてみてください。
眼精疲労を防ぐために気を付けること
眼精疲労に効くツボのマッサージはセルフケアとして即効性があり有効な手段ですが、根本ケアはやはり日常生活の見直しが必須です。眼精疲労を防ぐために、日常生活で気を付けるべきポイントをいくつかお伝えいたします。
目を酷使しない
「そもそも」なのですが、眼精疲労を防ぐにはやはり目を酷使しないことが大切です。とは言え、仕事でデバイスを使わざるを得ない方が多いことは百も承知。せめて寝る前だけでも、ブルーライトから遠ざかった生活を試して頂きたいのです。
眠る前は心地よい音楽に切り替えて、何も考えない時間、すなわち脳を休ませる時間を設けるようにしましょう。
この方法は、ストレスを遠ざけて睡眠の質を上げる効果も期待できます。ストレスから来る眼精疲労の予防にもなりますので、オヤスミ前はノースマホの習慣を作ってみましょう。
食事や栄養を考える
目に良い食べ物としてブルーベリーが有名です。ブルーベリーに含まれるアントシアニンが、暗い場所でも目を見えやすくする働きがあり、また活性酸素を抑制するため「目に良い」とされています。
食事療法だけで眼精疾患が治る!とは残念ながら実現しませんが、バランスの取れた食事はあらゆるホルモンバランスを整え、自律神経を整える助けになることは確かです。以下は眼精疲労を防ぐとされる食事のバランスですので、参考にしてみてください。
〇抗酸化物質を含む食品:血流促進に有効とされる
ビタミンCやビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンなど。オレンジやレモン、アボカド、ほうれん草、ニンジンなど
〇オメガ-3脂肪酸:ドライアイの予防に期待ができる
青魚、亜麻仁油、チアシードなど
〇ビタミンA:目の角膜と粘膜の保護に有効とされる
レバー、にんじん、かぼちゃなど
〇ビタミンB群:新陳代謝の促進に有効とされる
肉類、魚介類、卵、乳製品、穀物など
アイメイクを控えめにする
「目力」を強化するためにいろんなアイテムを使って魅力的な目元にする美容好きさんは多いのですが、目の健康を考えるとたまにはアイメイクを休ませることも大切です。
まぶたに施すアイシャドウのメイクが眼精疲労に繋がるのでなく、目の粘膜に引くアイラインでマイボーム腺と呼ばれる脂肪の分泌腺がつまり、「霰粒腫」(さんりゅうしゅ)と呼ばれる塊ができることが指摘されています。
また、眼球を大きく見せるためのカラーコンタクトレンズも眼精疲労や眼精疾患の呼び水となり得ます。とくに、最近では気軽にインターネットでカラーコンタクトを購入できますが、通常のコンタクトレンズよりも素材が硬く酸素透過性も低い上に、自身のベースカーブに合っていない物を装着し続けると目に障害を引き起こしかねません。
カラーコンタクトレンズのみならず、コンタクトレンズは「異物」を目に入れるのですから、かならず医師の診断を受けて適切なコンタクトレンズを選ぶようにしましょう。
眼精疲労はマッサージと日常生活の改善で予防を!
片手で持てるデバイス1つで、映画を楽しめて本も読める。誰かのつぶやきを楽しめたり、芸能人の華やかな生活を垣間見ることもできる。そんな「無限のエンターテインメント」がスマートフォンの中にあるおかげで、コンテンツには不自由しないものの、目と脳にはかなりの負担をかけていることになります。
仕事で疲れた目を労わるためにも、1日の最後くらいは目もしっかりと休ませてあげましょう。
目のツボは身体中に点在していますので、今回ご紹介したツボは自分でマッサージしやすい部分のみとなっています。足の裏や腕にもツボはあるので、疲れが溜まる前にプロのマッサージの技に身を任せるのも良いでしょう。
そして、なかなか改善しない眼精疲労の場合、「目の疲れ」ではなく実は心身不調の「サイン」であることも考えられます。長く続く場合は必ず専門医の受診をするようにしてください。