季節の変わり目に風邪をひいたり体調を崩すといった経験は大人も子供も誰しもあると思います。普段から免疫力をつけて不調を乗り越えたいと考える方も多いと思いますが、免疫力はどうやったら上がるのでしょうか?
免疫力を上げる食事生活のポイントを管理栄養士が解説します。
【そもそも免疫力とは何?】
私達の体にウイルスや細菌が侵入すると、体の防衛システムは異変を察知して異物を死滅させようと働きます。これらから体を守ってくれる防御システムの事を「免疫」と呼びます。
この力が強ければウイルスに打ち勝つ事ができますが、弱ければ風邪や肺炎などを引き起こしてしまうのです。
この免疫システムは基本的に「自然免疫」と「獲得免疫」の2つの仕組みから成り立っています。
【免疫細胞の役割】
免疫細胞は、体内に侵入したウィルスに攻撃するなど、身体の中でさまざまな役割を果たしています。
自然免疫
ウイルスや細菌が体内に侵入してくると、それに素早く反応してウイルスなどに対抗する抗体を作って攻撃し、獲得免疫に知らせる働きをします。
獲得免疫
自然免疫から通報されたウイルスを分析し、効果的に攻撃します。1度あるウイルスや細菌に感染するとその特徴を記憶し、次に侵入したときの攻撃に備える事ができます。獲得免疫の中のヘルパーT細胞は免疫機能の司令塔として重要な働きを担っています。
この自然免疫と獲得免疫の働きを担っているのが免疫細胞です。
体温も免疫の指標
平熱が36度以下の人は低体温と言われています。体が冷えると血流が悪くなり、放置すると自律神経の働きが乱れてアレルギー体質になったり便秘などの不調を引き起こす恐れがあります。免疫細胞が正常に働ける体温は36.5度以上であり、体温が1度下がると免疫力は30%下がります。
次章では、免疫力を維持する体温を高める為のポイントについて詳しく解説します。
体温を高めて維持する方法
体温を高めて維持するには、適度な運動をする、湯舟に浸かる、タンパク質をとるなどの内容を実践するのがおすすめです。
適度な運動をする
筋肉が作り出す熱量は大きなものです。すなわち体内の筋肉量が下がれば体温が下がり、免疫細胞が正常に働けなくなって病気になりやすくなったり、冷えを感じやすくなります。
運動する事によって筋肉量が増えると体温が上がり、免疫細胞が活性化すると言われています。筋肉量の低下は適度な運動をする事で防ぐ事ができますし、運動する事でストレス解消に役立ちます。
シャワー浴より湯舟に浸かる
毎日湯舟に浸かる習慣はありますか?
体温が上がりにくい方はシャワーだけで済ませていたり、2~3分くらいですぐに湯舟から出るといった特徴があります。体温には、体の表面の温度を表す「皮膚温」と、脳や内臓などの体内の温度「深部体温」があり、免疫力と深く関係しているのは深部体温です。
深部体温を上げるには肩までお湯に浸かり、血行を良くする事が有効です。38度~40度の熱すぎないお湯に15分程度浸かる事が体温アップの目安になります。ゆっくりと入浴する事で自律神経を整えたり、ストレスを上手に解消したりと、湯舟に浸かる入浴は効果的に体温を上げてくれる他、副交感神経が刺激されて体がリラックスするため、ストレス解消にも繋がります。習慣にしましょう。
タンパク質をとる
タンパク質は3大栄養素の中で、消化する時に最も熱を生み出してくれる栄養素です。朝ごはんにタンパク質が不足するとお昼ごはんまでの体温の維持が難しく、冷えを感じる原因となりますので、朝ごはんのレシピにはぜひタンパク質をとり入れましょう。
また、免疫力に関してもタンパク質の不足はNGです。タンパク質が不足すると体を構成するタンパク質が分解されて不足分を補うため体力や免疫力が低下します。タンパク質は免疫抗体の原料にもなるため、毎食不足する事のないように肉、魚、卵、大豆製品などから賢く取り入れましょう。
免疫力を上げる食事
免疫力を上げるにはこれを食べれば大丈夫!といった簡単な話ではないのですが、免疫力を上げる為の食事にはポイントがあります。
免疫力は20歳あたりがピークとなり、それ以降は次第に低下して行きます。40歳ではピーク時の半分、50歳では1/3にまで下がる事も分かっているため、食事や生活習慣から常に免疫力を高める必要があるのです。今の自分に足りていないものがあればそれを増やしていくだけです。ぜひ見つけてみて下さい。
酵素
酵素と聞いてピンとくる方は少ないかもしれませんが、人が生きて行くためには酵素の力が必要です。なぜかと言うと、人の体には2万種類以上の異なった酵素が存在しているからです。
食べた物をエネルギーに換えたり、呼吸をしたり体や臓器を動かし老廃物を体の外に出す事さえ酵素の力が無いと成し遂げられません。
酵素には人の体の中に備わっている「潜在酵素」と、食べ物から取り込む必要のある「食物酵素」の2種類があります。潜在酵素は主に口に入った食べ物の消化を助けて栄養がスムーズに吸収される手助けをしますが、体の中で一定量しか作られないため加齢と共に減って行きます。更に不規則な生活習慣や食習慣により、無駄使いしてしまう事もあるのです。そのため、食事から酵素を補う事が重要です。
食べ物から効果的に酵素をとるためには、生野菜や果物をすりおろすのがオススメです。生野菜や果物の細胞膜が壊れ、中にある大量の栄養や酵素が活性化するからです。すりおろした大根を食前に食べたり、山芋をすりおろして納豆にかける、すりおろした人参でドレッシングを作るなど、料理の活用方法は多岐に渡ります。
腸を良くする食事をとる
免疫を作る細胞の70%は腸に存在していると言われています。なぜなら、腸は体の外と内を隔てる入口に当たるからです。すなわち私達の免疫細胞を元気にするためには、腸内環境を整える事が有効です。
食物繊維
食物繊維は大腸にすみついている腸内最近のエサになるため、食物繊維をたっぷりとる事で善玉菌であるビフィズス菌などの良い菌を増やすため、腸内環境を良くしてくれます。
食物繊維をとるとコレステロールの値が下がったり、アンチエイジング効果や免疫力を高めたり、アレルギーの改善効果があるとされています。食物繊維には便のかさを増やしてぜん動運動を活性化させる不溶性食物繊維と、有害物質を吸着させて体外に排出させる水溶性食物繊維の2種類がありますが、現在注目されているのが「発酵性食物繊維」です。
発酵性食物繊維をとると短鎖脂肪酸という物質を生み出すのですが、全身の免疫機能を高める他、がんの予防にも役立つ働きを持つそうです。発酵性食物繊維は米や大麦、ライ麦などの穀類を始めごぼうなどの根菜類、そば、海藻類、イモ類に多く含まれています。
ネバネバ食材
納豆、めかぶ、オクラ、山芋、なめこの5種類のネバネバ食材は全て食物繊維が豊富で、腸内の善玉菌を増やしてくれる他にも、便秘を防いで免疫機能を高める効果が期待できます。
コンビニで揃う免疫力を上げる食事
毎日手料理を作る事は免疫力を上げる生活の上で理想的ですが、忙しい現代人はコンビニに
頼らざるを得ない事も多いのではないでしょうか。コンビニでは体に優しく栄養価の高い物をチョイスしていきましょう。
主食
鮭やこんぶなど、具がシンプルなおにぎりを選びましょう。納豆巻きは発酵食品であり、栄養価が高くオススメです。最近は大麦などの雑穀が入ったおにぎりも売られており、野菜不足や食物繊維が不足がちな方にオススメです。
パンで済ませたい時は糖分やマーガリンの量が気になる菓子パンよりも全粒粉でつくられたサンドウィッチを選ぶようにしましょう。チキンやサラダがたっぷり入っている物だと尚栄養バランスが整います。
おかず
タンパク質がしっかりととれるおかずを選びましょう。レジ横のホットスナック類は揚げたてを選び、時間が経って酸化が進んでいるものは避けましょう。
ツナや豆腐、豚肉入りのサラダ、魚の甘酢漬け、鯖の塩焼きなど、手のひら1つ分のタンパク質が目標です。量が足りなければ茹で卵をプラスしても良いですね。野菜のとれるおかずはほうれん草の胡麻和え、きんぴらごぼう、きゅうりの酢の物など、選びやすい少量パックのものが増えました。
おやつ
生クリームたっぷりのスイーツや菓子パンよりも、1日の栄養を補う為のおやつを選びましょう。現代人に不足しがちなマグネシウムを補えるナッツのお菓子やカルシウムを補えるヨーグルトなどがオススメです。
免疫力を上げる生活
免疫力を上げる生活を意識することも大切です。ここでは、睡眠の質と排便習慣について詳しく解説します。
睡眠の質を高める
仕事の都合で睡眠不足を経験する方も多いのではないでしょうか。
睡眠不足の状態が長く続けば疲労も回復せず、集中力が低下してミスが増え、判断力が鈍くなる事が分かっています。眠る事で体温調節や免疫システムの調整を行っていると考えられていますので、忙しくても睡眠は大切にすべきです。
人の体内時計は1日24時間よりも若干長いため、毎朝太陽の光を浴びる事で調整されています。太陽の光を浴びるとセロトニンという神経伝達物質が脳内に分泌され、精神を安定させたり頭の回転を良くする働きがあります。睡眠に向けて分泌されるメラトニンというホルモンはセロトニンから合成されるため、睡眠の質が悪いと感じる時は、まずは朝起きてから太陽の光を浴びて生活のリズムを整えるようにしましょう。
排便習慣
便は毎日スッキリと出ていますか?
寝ている間、腸は消化活動を行っていますので朝は排便のチャンスです。起きたらまずはコップ1杯の水で胃腸を起こし、体の準備を整えてから朝食をとると、更に腸が動き出します。便意は微妙な感覚なので少し我慢しただけで薄れてしまいます。また、子どもの頃から便秘が当たり前だと思っている方は改善が難しいので、3日以上出ない場合はまずはトイレに座る時間を確保してみましょう。
こんな生活は免疫力を低下させる
ダイエットや健康の為に行っている欠食や偏食は、腸の動きが悪くなり腸内最近のバランスが乱れ、腸のストレスを生み出して免疫機能が低下しててしまいます。きっと、〇〇抜きダイエットなどの流行性のあるダイエットは1年も続かないでしょう。また、脂肪分や糖分の多い欧米型の食事が続く場合も注意が必要です。栄養バランスを整える事が免疫力をアップさせる近道です。
その他にも、免疫力を下げる疲労を軽減させる方法はこちらのコラムをご覧下さい
現代人にとって切り離すことができない『疲労』を回復する力を身に付けよう!
まとめ
いかがでしたか?免疫力が低下する原因は不規則な生活や睡眠不足、自律神経の乱れ、体温の低下など様々な要因があります。しかし、生活習慣や食習慣を改善する事によって何歳からでも免疫力を高める事は可能です。まずは自分が知らなかった項目や継続しやすい項目から免疫力を高める生活をスタートしてみませんか?
社員の健康管理については、ライフサポートサービス株式会社までお問い合わせ下さい。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。