雑談のポテンシャル!とりとめのない話をすることが心と企業を守ります!

オフィスで話す男女





「おしゃべり好き」という響きは少し揶揄されたような感じがしますが、その「おしゃべり」が心を守るのだとしたらどうでしょうか。

テレワークの普及で「気付けば誰とも会話をしていない」という人が増えています。ネット環境が整っていれば、仕事のみならず買い物といった日常生活までも「会話レス」でも成り立つ時代。便利になる一方で話をすることで自然と行われてきた「心のケア」はおざなりになっています。

そこで今回は「おしゃべり」こそが心を救うということについて、お伝えしていきます。

 

テレワークのストレス、一因は「会話不足」

厚生労働省の資料によると、テレワークのデメリットとして「上司・同僚とのコミュニケーションが不足する」と回答した労働者の割合は37.6%となっており、これは「勤務時間とそれ以外の時間の区別がつけづらい(44.9%)、運動不足になる(38.8%)に次いで3番目に多い回答となっています。

参考:厚生労働省「テレワークを巡る現状について」https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000662173.pdf

職場での雑談=面倒なもの、という認識もなされてきたなかで、コミュニケーションの尊さが失われて初めて気付いた、と言っても過言ではないでしょう。

また、日常生活においても雑談は「脳」に適切な刺激を与えるため、健康寿命にとても大切な役割を担っています。

では、「雑談」はなぜ大事なのでしょうか。

 

 「雑談」が大切な理由

「雑談」とは「とりとめのない話」を意味します。たとえ業務に直結しない雑談であっても、仕事の効率を上げるために「必要」とされる理由はどこにあるのでしょうか。

そして、人生100年時代と言われる今、長寿の鍵を握るのは「雑談」であるとも言えるのです。雑談が大切な理由を業務編と日常生活編にわけて解説します。

 

雑談が大切な理由:業務編①信頼関係の構築

「雑談」ができる環境は、緊張状態のある職場環境では起こりえません。リラックスができ、上司や部下、正社員や派遣社員といったあらゆる垣根を超えて起こる現象です。

 

「自分の考えを安心して発信できる」土壌があるその心理的安全性は、職場にて良好な人間関係を構築することにつながります。

雑談は心理学に置き換えると「自己開示」「類似性の法則」という信頼構築方法といえます。「自己開示」ですから自部の手の内を曝け出し、心を開いた状態を作り出すことで、雑談が生まれるのです。 

そして「類似性の法則」とは「共通点の多い人に親近感を抱く」法則です。これは実体験のある方も多いことでしょう。

たとえば、一日中デスクに座ってただ仕事だけをする状態であれば、目の前に座っている人との共通点は「仕事」だけです。しかし雑談を通じて、最寄り駅が同じであったり、趣味が同じであったり、あるいは新しいプロジェクトへの想いが似ていたりなど、さまざまな「共通点」が発掘できると、相手を身近に感じて信頼度が高まっていきます。

雑談を通じて一体感が生まれることで、組織に対する愛着も構築されやすくなっていくのです。

 

雑談が大切な理由:業務編②アイデアを生む

心を開いた状態で雑談をしていると、思わぬ一言が大ヒット商品に繋がる可能性もあります。

リラックスした状態での会話は、不要な思い込みや緊張がない分、すんなりと相手の意見を受け取ることができます。その意見を咀嚼し、また新たな意見へと発展させていくなかで、問題解決の糸口を見つけたり、新しい視点でヒット作を作り出す余裕が出たりと、思いがけない嬉しい副産物も現れるポテンシャルがあります。

雑談はリラックスして繰り広げられるため、自然とインプットとアウトプットを繰り返します。意識せずに定着した「知識」が、次の雑談時に思わぬアイデアを生むことが十分に可能なのです。

 

雑談が大切な理由:業務編③現場の把握ができる

改まった場での発言よりも、雑談で「ポロっと」出た本音に、現場の現状が挟まれていることがあります。 

たとえば、離職率の問題に直面しているとき、雑談を通じて「環境改善」すべき大きな要因が見える可能性があるということです。

適切に健康経営を推進し、生産性を上げていくには「的外れ」な指示は意味を成しません。現状把握をするにも、現場の声を拾い上げることがとても大切なのです。

 

雑談が大切な理由:日常編①脳トレになる

ここからは日常において雑談が大切な理由をお伝えしていきます。 

雑談は脳を刺激するので認知症予防になると考えられています。

雑談は、相手の言葉や表情から意味を捉え、そして自分の意見を適切に表現して返答するプロセスの繰り返しです。

このとき脳では、大脳皮質前頭葉の「ブローカ野」、大脳皮質側頭葉「ウェルニッケ野」という部分が働いています。

そして、繰り広げられている雑談の内容を、これまでに蓄積された情報と照らし合わせる際、記憶を司る海馬が働きます。

このように、会話をするだけで脳トレになるのは、脳がさまざまな部分を駆使して情報伝達をしているからなのです。

 

雑談が大切な理由:日常編②ストレス発散になる/カタルシス効果について

メンタルヘルス不調は、日頃から感じている不安や怒りといったネガティブな感情が蓄積されて起こります。雑談は、リラックスしている状態で繰り広げられますので、意識せずとも「ストレス因子」を言葉にして放出できる状態になるのです。

たとえば雑談のなかで、愚痴や不満が言えたのならば、一人でその感情を抱え込む必要なくなります。

きっとあなたにも、これまで「誰かに聞いてほしい」と思うことがあったはずです。たとえどんな些細なことであっても、一人で抱えずにシェアしたいという感情は、誰にでも起こり得ます。

このように話をしてストレス状態が緩和されることを「カタルシス効果」と呼びます。

 

カタルシス効果の目的

カタルシス効果とは、不安や不満、悲しみといったネガティブな感情を言葉にして話をすると安心感を得られる現象を指します。

これは、時間に余裕がなく、同時に心の余裕も見失いがちな現代で需要が高まっている方法であり、「効率」を求めすぎた結果、カタルシス効果が必要とされているとも言えます。

最小限のコミュニケーションは、利便性と引き換えにあらゆるものを「無駄」として排除したシンプルな世界を形成します。しかし残念なことに、人間の心はそんなシンプルな世界に対応できるほどAI化していません。

 

複雑な感情を持つ人間だからこそ、非効率的な「雑談」は健康的に生きるためにとても大切なのです。

感情を話すことにより、心的ストレスから解放され、メンタルヘルス不調を事前に防ぐことが期待できます。

 

雑談が大切な理由:日常編③自分の感情と向きあうきっかけになる

そんな複雑な感情を持つ人間ですから、たまに「あんな風に思ってしまった自分は最低だ」と感じることはありませんか?

でも、感じたものは仕方がないのです。むしろ、そう感じてしまったことを認めることが、心理カウンセリングの側面から考えるとメンタルヘルス不調を防ぐ第一歩とされています。

自分が感じたありのままの気持ちは、否定をし続けると「本音」が見えなくなります。本当は「NO」と言いたい本音があるのに、長年の自己否定の癖からつい他人に合わせて「YES」と言ってしまう方もいるでしょう。

本音を無視し続けた年数が長い人ほど、自分の感情と向き合うのは苦手であり、自分の幸福を後回しにしがちです。

雑談で本音をポロっと出すしてしまうことは、そのとき何を感じていたのかを認める行為です。それは、あなたが本音を見失わず生きていくためにとても大切なプロセスなのです。

 

職場でできるコミュニケーション改善策

コミュニケーションが重要視されていますが、職場で適切なコミュニケーションを推進するのであれば、その環境を整える必要があります。

適切な雑談できる場所を整えるには、どういったことに注意をすれば良いのでしょうか。

 

垣根を超えて雑談しやすい環境を整える 

雇用体系や年数といった垣根を超えて、フランクに雑談ができる環境を整えましょう。どうしても「上司・部下」「先輩・後輩」「正社員・派遣社員」など率直な意見交換にハードルが出現しがちですが、気を遣ってしまう場では雑談が成り立ちません。

自分の話ばかりして相手は相槌を打つだけであるのに「会話が盛り上がった」と勘違いしてしまう人は、意外と多く存在します。それは雑談ではなく、自己満足の漫談。漫談ならまだしも、ただ自分で悦に入ってしまって相手に気を遣わせているのは、会話とは呼べません。

 

あくまでも雑談ですから、相手に対して威圧的にならないように、相手よりも組織内で立場が上であれば余計に注意をしながら、発言ができる環境を整えていきましょう。

 

適切な内容を心掛ける

雑談はある程度プライベートな内容に踏み込む場合があります。たとえば最寄り駅の話題は、個人情報になりますから取り扱いがセンシティブと言えばセンシティブです。

どこまで触れて良いのか、どこからが不適切なのかは、雑談の相手との距離感によります。仲良くなりたいからと言って、信頼関係が希薄な状態であるにも関わらず、ズケズケとプライベートな内容に踏み込むのはNGです。

 

ハラスメントのセミナーを開催する

ハラスメントな発言を「つい」してしまう人は、それが「ハラスメントに相当する」という理解が追い付いていない状態です。残念ながらまだまだこの感覚を持っている人は多く、つい容姿や性別、年齢、家庭環境やセクシュアリティを無視した発言などを雑談のトピックとして用いてしまいます。

「そんなことでハラスメントになるならコミュニケーションが取れない!」と暫し耳にすることもありますが、逆といえるでしょう。

感覚をアップデートし、職場を適切に盛り上げるために、ハラスメント講習を用意するなど企業は「学び」の場を提供することが大切です。

 

こんな相手は要注意!雑談する相手を間違えると逆効果!

雑談をするにも、雑談する相手を選ぶ必要があります。これまで、話をしただけなのに疲れる、という人に遭遇したことはありませんか?

せっかくストレス発散の雑談なのですから、ストレスにならない相手と雑談を楽しみましょう。以下のような話し方をする人との会話はかえってストレスになりやすいので、気を付けてくださいね。

 

話を遮る人

話の途中で遮ってまで自分の話をする人は要注意です。会話はタイミングが大事ですので、発話している人のターンを守ることがストレスなく雑談をすすめるコツとなります。

せっかくあなたのターンで雑談しているのに、話を遮られて、その上全く脈絡のない話をされてはかえってストレスとなってしまいます。

そういう癖のある人と雑談をする際は、しっかりと「まだ話が終わっていない」と伝えるのも改善法の1つです。

 

自分の考えを押し付ける人

雑談で楽しく話をしようとしても、自分の考えを絶対として押し付けてくる人が相手だとかえってストレスになります。

 

論破というのは、議論して相手の説を破ることを指しますが、この「議論」の部分をすっ飛ばしてただ自分の言いたいことだけ行って「論破した」と勘違いしている人がいるのです。

これでは、議論の余地がありませんから、その時点で会話は終了となります。論破の意味をはき違えている人とは、会話が成り立ちませんので雑談相手にすると疲労感が増してしまうでしょう。

 

否定ばかりしてくる人

何事においても、否定しなくては気が済まないタイプの人がいます。最も簡単なたとえでシミュレーションしてみましょう。

おすすめの居酒屋があって〇〇という場所なんですけど…

え?あんなので美味しいの?

こういう会話を聞いたことありませんか?このタイプの人との会話は疲れてしまいます。

何でもかんでも否定する人は、自分と違う意見を言われたことで「否定をされた」と認識し、反撃に出てしまいます。

もしも振り返ってあなたにそのような癖があるのであれば、会話癖を改善することで人間関係は改善されることでしょう。先ほどの例文を添削するとするのであれば

おすすめの居酒屋があって〇〇という場所なんですけど…

え?〇〇?実は前行ったときちょっと残念だったけど、美味しくなったんだね!

 

かなり印象が変わるでしょう。ぜひ参考にしてください。

 

雑談をする相手がいないときは?

雑談をするにも、相手がいない場合があります。日常生活で皆それぞれ忙しいですので、学生時代のように「お話しましょう」と時間を取れることの方が稀でしょう。

雑談の相手がいないとき、心のストレスケアはどうすれば良いのかをお伝えします。

 

感情を紙に書き出す

ストレス緩和として、自分が抱いた感情を書き出す方法があります。日記として綴るのも良いですし、面倒な方はただ感情を箇条書きにするだけでも構いません。

感じたことを書き綴ることで、自分自身の感情と向き合うことができます。これは「筆記開示法」というテクニックで、1980年代のアメリカで生まれた心理療法です。

1日20分、とされていますが、ただ思いついたときに感情を書き綴るだけでも心的ストレスの軽減がされると言われます。

思いついたまま、包み隠さずに書き綴ることがポイントです。隠さないことで自分を客観視することができ、感情と向き合うプロセスになるのです。

 

話し相手がいないことを認める

意外に聞こえますが、話し相手がいないことを認めることでストレスの軽減へと繋がります。

これはあくまでもプロセスではありますが、話し相手はいるが相手が忙しい、タイミングが合わないだけ、など「言い訳」を繰り返すのは、事実を見ずに否定をしている段階です。

そうではなく「自分には話をする相手がいない」と認めてしまうことで、そこから状況を改善させる行動へと移りやすくなるのです。

たとえば、自分には話をする相手がいないから気の合う友達を大切にしよう、自分には話をする相手がいないから趣味を増やして友達を探そう、など、具体的な策へと発想が転換されていきます。

このプロセスを踏むことで、本当は寂しかった、本当は話がしたかった、本当は自己完結できる、など自分の「本音」に辿り着きやすくなります。

 

カウンセリングを受ける

雑談や相談をする相手がいない、気持ちを打ち明ける相手がいないのであれば、カウンセリングを受けるのも心を守る1つの方法です。

これまで、悩みを友達に打ち明けた際、アドバイスをされて余計に落ち込んだ経験はありませんか?ただ話を聞いてほしかっただけなのに、力強く熱いアドバイスを受けてしまったことで余計に疲れてしまうのは、実は稀なケースではありません。

しかし、その友達は「善かれ」と思ってアドバイスをしただけのこと。プロのカウンセラーではないので、致し方のないことです。

話をして心の不調から解放されたいのであれば、プロのカウンセラーに頼ることはとても有効な手段です。

どうしても日本では「心理カウンセリング」=「心の病」として受診しにくい雰囲気があります。しかし、最初の一歩が踏み出しにくいだけですので、プロの力を借りて適切なストレスケアで心を守ってください。

 

雑談は心を守る手段であり、企業を守る手段でもある!

他愛もない話で雑談中に笑うことで、嫌なことを一時的に忘れられます。この「一瞬忘れる」のは心を守るためにとても大切で、雑談はストレスケアになくてはならないものなのです。

そして、雑談中にフル回転している脳が、新たなアイデアや問題の解決策を引き出してくれるポテンシャルを秘めています。

ですので、大いにおしゃべりを楽しんでください。あなたの「面白話」が、誰かの心を守り、そして新たなヒット商品に繋がるかも知れません。