「すっきりしたいからリンパをしっかり流してほしい!」「老廃物をしっかり流す感じで!」などと、マッサージ店やアロマセラピーのお店で言ったことありませんか?おそらく、施術者は「かしこまりました」と言うことでしょう。
しかし、笑顔で受け答えをした裏では「流す」という単語に違和感を覚える施術者も少なくありません。というのも、リンパを流すのに強いマッサージというのは逆効果だからです。
今回は、未だに多い「強いリンパマッサージこそ正解!」と間違ってしまっている方にこそ読んでいただきたい、正しいリンパケアについて、お伝えしていきます。
リンパとは?
そもそも、リンパってどんな働きで、どこにあるのかをご存知でしょうか。何となくイメージで、鎖骨あたり、とか、ふくらはぎあたり、とかそういう「何となく」なイメージを持つ方がとても多いと感じます。
まずは、リンパとはどういった仕組みになっているのかをここで解説しておきましょう。
リンパはどこにある?
胃は身体の中央、心臓は左胸、といったように、内臓がある位置はしっかりと説明ができます。では「血管ってどこにある?」と質問されたら、あなたならどう答えますか?
難しいですよね、身体中にあるのですから。それに、血管といっても動脈もあれば静脈もあり、毛細血管などもあります。
同様に「リンパ」と一言で表しても、リンパ管なのかリンパ節なのか、はたまたリンパ液なのかなど、さまざまな回答があります。
きっと「流す」という言葉から捉えると、リンパ管の中を流れるリンパ液をさして「リンパ」という方が多いと思うのですが、「リンパ」と発するときにそこまで意識していないことがほとんどでしょう。
このリンパ、ですが、身体の隅々から毛細リンパ管として始まり、それ毛細リンパ管が集まって集合リンパ管、主幹リンパ管へと太くなっていきます。
最終的には胸管、右リンパ本管と2つにまとまり、静脈へと繋がる構造をしています。
ですので「リンパの場所」というのは血管と同じく「そこら中」にあるわけです。
このようによく使われる「リンパ」という言葉は実は複雑な構造であり、また身体にとってとても大切な働きをします。
リンパ系
身体の隅々から毛細リンパ管に取り込まれたリンパ液は、徐々に太くなって静脈へと合流します。この一連の流れを「リンパ系」と呼びます。
リンパ液
リンパ液は、毛細血管から出た水分のうち、組織間隙(そしきかんげき)に再吸収されずに残った組織液のことです。リンパ、とはこのリンパ液をさすことが多いでしょう。
リンパ管
リンパ液を回収して静脈に戻すのがリンパ管の役目です。簡単に言えばリンパ液を送り届けるホースのようなものです。
リンパ節
リンパ節は、リンパ液に細菌やウイルスが入り込んでいないかをチェックする3ミリ程度の豆粒のような器官です。
リンパ節は察知したウイルスを撃退すべく戦いますので、ときに炎症を起こすことがあります。この作用のおかげで、リンパ液は綺麗な状態となり静脈へと戻っていきます。
リンパマッサージについて理解を深めよう!
リンパマッサージに関わらず、強く強くもみほぐされたい方は少なくないはずです。痛いくらいが気持ち良い、という方もいることでしょう。
身体のことを考えると、実は強いマッサージはおすすめできません。とくに、強いリンパマッサージは完全に逆効果どころか、場合によっては身体に良くない反応がでることもあります。
なぜ強いマッサージが良くないのか、詳しくご説明いたします。
リンパは「もろい」
強いリンパマッサージがどうしてよくないかというと、リンパが「もろい」ことが影響していますのです。
リンパ管には弁が備わっていて、リンパ液を静脈に向かって一方向へ流しています。
強い圧をかけてしまうと、リンパ管そのものがダメージを受けてうまくリンパ液を流せなくなる可能性や、あるいは流れと逆方向ので施術をすることでとリンパ液の流れを塞き止めてしまうなどのことが考えられるでしょう。
これでは、逆効果です。
リンパを流したいがゆえに、余計にむくむ体質になってしまった、という悲しい結果にならないように、強いリンパマッサージは避けるのが賢明です。
「マッサージ」は国家資格が必要です
リンパマッサージを受けたら痛くてたまらなかった、という経験のある方がいるかも知れません。
「マッサージ」は本来「あはき法」(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律)により有資格者のみが施術できるものとして法律で決まっています。しかしながら「リラクゼーションマッサージ」においては「治療をする」訳ではないので資格がなくても施術が可能です。
「リンパマッサージ」を取り扱う店舗はリラクゼーションマッサージに分類されることが多く、有資格者である必要がないため、数週間の研修を受けただけの施術者が施術をすることもあります。
しかしながら、リラクゼーションマッサージで有資格者でなくとも、解剖学の勉強をして、しっかりと身体の構造を分かっている施術者や、民間資格を有している資格者もいます。経験豊かな施術者の技術は安心できるでしょう。
それと同時に経験が浅く、人体に対する知識が少ない施術者がいることも事実です。
リンパマッサージに限らずリラクゼーションマッサージを利用する場合、どういった施術者が在籍しているのかなどを、口コミなどで事前に調べておく方が良いでしょう。
「頸動脈洞反射」について
強いリンパマッサージに危険が伴う理由の1つに「頸動脈洞反射」があります。とくに、リラクゼーションマッサージで研修を受けただけの経験が浅い施術者や、ご自身で強いマッサージを施してしまう場合、知らず知らずと「失神」の状態を招く場合があるため注意が必要です。
首には、脳へ血液を送る太い血管があります。この頸動脈の部分に強い圧をかけると「頸動脈洞反射」による血圧低下や徐脈が起こってしまい、嘔吐や頭痛、めまいなどを伴うことがあります。
「小顔効果」としてこの首回りのセルフマッサージが紹介されることもあるのですが、首はとてもデリケートな部分ですので、プロの施術を受けるようにしましょう。
リンパマッサージで「ダイエット」はできる?
リンパマッサージの後にスッキリして痩せた!という方もいるかも知れません。しかし、ほとんどの場合は一時的なものです。
一時的にむくみの改善がされたことにより、スッキリした感じがしますが根本の解決には至りません。
また、強い刺激を受けたことで筋肉が緊張し、サイズダウンをしたように感じることもあります。しかしこれも、一過性のものです。残念ながら、楽をして痩せるというのは、なかなか実現しないものなのです。
強いリンパマッサージは肌を痛める
ほとんどのリンパマッサージの場合、オイルを肌に塗布して施術をしていきます。このとき、圧がかかりすぎると肌を痛める可能性があります。
また、オイルとの相性や、そのときの体調、オイルが少量すぎても肌を痛める可能性があります。敏感肌やアレルギー感作がある方は、事前にどのようなオイルを使っているのかを店舗に確認することも大切です。
こういう症状の場合はいかなるマッサージも避けましょう
ご自身の体調が優れないとき、外傷やぎっくり腰など急性の痛みが出ているときなどは、施術を受けるよりも安静にして後日に施術を受けるようにしましょう。
また、症状が出て2週間以上経っている場合、専門医に診てもらうことが鉄則です。長引くむくみや身体の不快感は、患部以外に理由が潜んでいる場合があるので、マッサージではなく診察を受けるようにしてください。
むくみが続く場合はマッサージより病院へ!
「身体がむくむからリンパマッサージでスッキリしたい」と思う方は多いことでしょう。しかし、そのむくみ、実は病気のサインかも知れません。
慢性的なむくみのある方はマッサージよりも病院で相談することをおすすめします。
ただのむくみじゃないかも①腎臓病
腎臓から老廃物を含む水分を十分に排出できていないことで、むくみの症状が出ることがあります。左右対称的にむくみがあり、むくんでいる患部を押すと10秒以上へこんで戻って来ない場合、専門医の受診を心掛けましょう。
ただのむくみじゃないかも②心不全
足やまぶたにむくみがあり、動悸や息切れがある場合は心不全が疑われます。心臓の機能が衰えることで血液をうまく循環させることができず、むくみに変わります。
ただのむくみじゃないかも③肝臓疾患
肝臓は血液中のたんぱく質を作っていますが、肝機能が低下することによりタンパク質の減少が起こり、血液成分の割合が変化します。その影響により、血液の成分が血管外へ漏れ出し腹水がたまったり足がむくんだりといった症状が誘発されます。
正しいリンパケアとは?
強いリンパマッサージが身体に良くないことはご理解頂けたかと思います。でも、むくみはスッキリさせたいですよね。正しいリンパケアは、どうすれば良いのでしょうか。
運動する
身体のむくみを払拭させるには、やはり運動が最適です。
長時間同じ姿勢で仕事をする方は、ふくらはぎが夕方にはパンパンになっているかと思います。ウォーキングや無理のないジョギングで、足をしっかりと動かし、ふくらはぎの筋ポンプを動かすようにしましょう。
鎖骨を優しくなでる
お風呂に入っているときや、寝る前の準備として、クリームやオイルを付けて鎖骨をゆっくり優しくなでましょう。
そのとき、鎖骨から肩・腕側・腋にかけて優しく一方向で撫でます。
就寝前であれば、ラベンダーのアロマ精油を使用するのもおすすめです。ラベンダーの精油には血圧を下げ、睡眠導入を助ける効果があるとされます。
睡眠をしっかりと取ることもまたリンパの流れを良くする方法ですので、ぜひ参考にしてください。
腹式呼吸をする
仕事中でもリンパケアでむくまない身体を作ることは可能です。
まず、座ったままで良いので、背筋をしっかりと伸ばしましょう。
その姿勢をキープしたまま、鼻から息を吐き切り、また鼻からゆっくりと酸素を吸い込みます。このとき、お腹が膨らんだりへこんだりするのを感じてみましょう。
お腹の奥にある「乳び槽(にゅうびそう、リンパ管の本管である胸管の始部)」を腹式呼吸によってゆっくりと動かすことで、リンパの流れを促進することが可能です。
カフェイン飲料を控える
カフェインの入っている飲料は交感神経を優位にさせ、血流やリンパの流れを悪くさせます。さらに、カフェインの入った冷たい飲み物は身体も冷やすダブルパンチとなるため、飲む量は気を付けましょう。
むくみが気になるときは、白湯やカフェインの入っていない温かいお茶などがおすすめです。
リンパケアは優しく!
強い圧のリンパマッサージが好きな方は少なくないのですが、残念ながらそのマッサージが理由でさらにむくみやすい身体になっている可能性があります。
初めは物足りなく感じるかも知れませんが、リンパケアはゆっくり優しく、身体をゆったりと癒すように撫でる施術がおすすめです。
また、むくみの症状が長期間に渡って改善されない場合は、医師の診断を受けるようにしてください。身体のSOSを見逃さないためにも、自己判断ではなく定期健診を受けましょう。