疲労は忙しい現代人にとって切っても切れないものです。
「疲れはいつもの事だから…」と放置すると、自律神経のバランスを乱して精神状態にまで影響が出る事もあります。
疲れはこじれる前に自覚し、早めに対策をとる事が何よりも大切です。
毎日の食事や運動で疲労を予防する方法を管理栄養士がお伝えします。
疲労の定義と原因
日本疲労学会では、疲労を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」と定義しています。また、疲れとは「心身の負担が大きく、活動能力が低下している状態」の事をいいます。疲労には身体を酷使する肉体の疲労、食べ過ぎや飲みすぎによる胃腸の内臓疲労、PC作業による脳の疲労、人間関係による心の疲労など、様々な種類があります。
自立神経失調症や不眠など、治療が必要になる前にしっかりと食事と生活習慣でケアしていきましょう!
疲労の種類と対処法
様々な疲労に効果のある対処法をお伝えします。
【肉体的な疲労】
力仕事や運動などで起こる肉体的な疲労は末梢性疲労と呼ばれ、筋肉に貯蔵されているエネルギーが枯渇した状態です。かつての疲労の原因は筋肉に「乳酸」が溜まる為だと言われていましたが、最近では身体の老化を早める活性酸素を除去できずに体内の細胞が酸化し、身体の機能が衰えるのではないかと考え方が変わりつつあります。活性酸素を除去するには野菜や果物に含まれるビタミンCやカロテノイド、海藻類や魚介類に含まれるミネラルなど、抗酸化食材をしっかりと摂る事が大切です。
疲労回復にはビタミンB1が効果的だとされています。しっかりお腹がすいている時はビタミンB1を多く含む食材を意識しましょう。豚肉、レバー、枝豆、玄米などに含まれるビタミンB1は糖質をエネルギーに変える時に必要な栄養素でもあるので、毎日食品から摂る必要があります。その他に、脳細胞を活性化させ、神経や筋肉の機能を正常に保つ働きもあります。
オススメの調理法はアリシンを含む食材と組み合わせて食べること。ニンニクやネギに含まれるアリシンとビタミンB1が結びつく事で「アリチアミン」という強力な回復物質が生まれるのです。レバニラや、ニンニクを使った豚の生姜焼きなどは理に適っていますね。
また、疲労により食欲がない場合は無理に食べると内臓が疲れてしまい、内臓疲労を引き起こします。内臓に負担がかかるとエネルギーや栄養を効率良く補給できなくなるので、この場合は消化吸収の良いお粥、豆腐や卵などを選ぶようにし、胃腸の回復を優先させます。
【精神的な疲労】
肉体的な問題だけでなく、「だるい」「今日はパソコンを開きたくない」など、精神的なストレスや緊張状態が続く疲労は「中枢疲労」(脳の疲労)と呼ばれます。
現代人は仕事に育児に家事に、「~をしなくてはならない」という思考で同時にいくつもの事を考えてしまい、マルチタスクを抱えがちです。
ある研究では、マルチタスクは私たちの脳のパフォーマンスを低下させる原因になる事も分かっています。マルチタスクによる疲労を改善して行くには、シングルタスク化が有効だとされています。
また、自分のペースで物事が進みにくい事柄はストレスが溜まりやすく、精神的な疲れに繋がりやすいとされています。
疲労を改善、予防するための手軽な食と生活習慣8か条
日々のパフォーマンスを最大限に発揮する為に、疲労を溜めないための食習慣と生活習慣をご紹介します。できる所から実践していきましょう!
① 外食する時は栄養の質に気をつける
時間が無い外食時は手軽に安く済ませたいものです。
しかし、麺やパンなど、炭水化物に偏りがちになると、疲れやすく、風邪をひきやすい身体になってしまいます。小鉢やサイドメニューでタンパク質をプラスしてみましょう!
② コンビニで選べる疲労回復ごはん
コンビニで手軽に買う事ができるエナジードリンクは糖質が多く含まれる傾向があります。糖質が多い=血糖値が上がりやすいという事ですので、最初に疲労感が抜けた感覚があっても、継続させる事は難しいのです。アドレナリンを短期間に出すよりも、栄養が整う食事の選び方はコンビニでも可能です。
・レジ前スナックよりも焼き鮭やサラダチキンでタンパク質をとる
・菓子パンよりも野菜やタンパク質がとれるサンドウィッチを選ぶ
・おやつにはケーキなどのスイーツよりもカットフルーツやヨーグルトで栄養をとる
など、コンビニにある食材をぜひチェックしてみて下さい。
③ カフェインで余計に疲れていない?
仕事を頑張るためにまずはコーヒー!という方も多いかと思います。でも、コーヒー依存になっている方は注意が必要です。コーヒーやエナジードリンクにはカフェインが含まれていて、カフェインの作用で一時的に元気になります。しかし、そのカフェインが切れると次第にだるさがやってきます。夕方のコーヒーは寝つきの悪さに影響する事もありますので、まず1杯目を紅茶や緑茶、ココアなどに置き換えてみてはいかかでしょうか。
④ 朝食の質を上げていく
朝食は体温を上げる、集中力を高めるなど、1日の食事の中で1番大切だと言われています。朝からご飯を用意するのは無理。という方は、コンビニ食からスタートしてもOKです。鮭おにぎり、サンドウィッチ、カップの味噌汁、ヨーグルト、カットフルーツなど、口にしやすいものから始めましょう。ポイントは、糖質+タンパク質が揃っている事です。
⑤ サプリを利かせる為にも、やっぱり基本は食事
疲労回復に、自分に足りない栄養のサプリメントを利用するのはヘルススキルが高く、良い事です。しかし、サプリメントには「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」と記載があるように、サプリメントだけたくさん飲んでいれば疲労が回復するわけではありません。きちんと食事を摂り、身体のサイクルが動いていないとサプリや漢方の効果は薄れてしまいます。
⑥ 注目の抗疲労成分「イミダゾールペプチド」
イミダゾールペプチドは1万㎞も休みなく飛ぶ渡り鳥や、一生泳ぎを止めない回遊魚のスタミナ源です。この物質は長期的に摂取すると疲労を軽減する効果が得られる事が分かってきています。一般的には鶏むね肉やカツオ、マグロの尾びれに含まれています。
⑦ お風呂に入るメリット
お風呂に入る時、時間が無いからとシャワーだけで済ませていませんか?湯舟に入る事で浮力や水温の働きで筋肉を緩ませ血液循環を良くし、疲労回復効果が期待できます。就寝の1時間程前の時間をねらい、ぬるめのお風呂(39度前後)に10分以上浸かるようにしましょう。
⑧ 良い睡眠で疲労回復
質の高い睡眠をとることは疲労回復に重要です。睡眠にはレム睡眠とノンレ ム睡眠の2種類があり、疲労回復の為には入眠後30分以内にノンレム睡眠の深い眠りに到達してぐっすりと眠る事が大切とされています。質の高い睡眠は脳や身体を休ませ、悪い記憶を消去させる事から心の健康にもつながります。また、深い眠りは成長ホルモンを分泌し、筋肉や骨、皮膚の強化や脂肪の分解に役立ちます。子どもの成長だけでなく、疲労回復やアンチエイジング、ダイエットにも繋がって行くのです。また、タンパク質の一種であるトリプトファンは睡眠ホルモンのメラトニンを作る材料になりますので、多く含まれる肉類、あわやオートミールなどの穀類、大豆製品を意識してとるようにしましょう。
身体の深部の体温は夜になると下がるようにできていて、体温が下がると眠くなり、脳は休養モード(睡眠)に入ります。交感神経を刺激しないよう、スマホやテレビはoffにし、照明は暗くして疲労回復モードで就寝しましょう。
疲れにくい身体を手にいれる運動習慣
私たちの毎日の活動はスポーツなどの「運動」と家事などの「生活活動」に分けられます。このうち生活活動で消費されるエネルギー量の事をNEAT(非運動性熱産生)と呼びます。
この、運動以外のNEATを上げる事が日々疲れにくい身体を作り、筋力の低下や姿勢の悪化を防いでくれます。
NEATを高めるには座っている時間を減らし、立って歩く活動時間を増やす事が大切です。家から少し歩くスーパーに行ってみる、毎週この曜日には窓拭き掃除をするなど、一日の生活の中に歩く、立つ動作を増やして行きましょう。
運動習慣が全く無い人でも、仕事や家事の合間に簡単に運動を取り入れる方法にストレッチがあります。こまめに伸びをする、ふくらはぎを伸ばす、など、簡単な事からでOKです。
① こまめに伸びをする
手を組み、天井に向けるように伸ばします。脇腹や脇を伸ばすと肋骨が広がり、呼吸が楽になります。パソコン仕事などで凝りがちな背中の僧帽筋にもアプローチできます。
② ふくらはぎを伸ばす
右足を前に出し、右ひざに手を置いて体重をかけ、左足はかかとをつけてふくらはぎをゆっくりと伸ばします。反対側も同じように。ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、重力によって血液は下半身に溜まりやすくなりますが、下半身に流れてくる血液を心臓に送りかえすポンプのような役割をしています。その筋肉をほぐして柔軟にする事で、血行も良くなります。
いかがでしたか?
疲労は現代人にとって切っても切れないものですが、毎日の食事や運動からできる事を選んで1つでも継続していきましょう。