高血圧を改善するには、食事や運動療法がおすすめです。高血圧は自覚症状がないため、放っておくと重篤な病気に繋がる恐れがあります。
この記事では、今日からできる高血圧予防や改善法を管理栄養士の観点からお話しいたします。ぜひ日常生活に取り入れてくださいね。
高血圧とは
では、高血圧とは具体的にどのような病気なのでしょうか? ここからは、高血圧を正しく理解するために、以下の2つの内容を詳しく解説します。
・高血圧ってどんな病気?
・高血圧はなぜ注意が必要なの?
高血圧ってどんな病気?
わかりやすく説明すると、高血圧は血管に強い圧力がかかっている状態を指しています。血圧は収縮期血圧(心臓が収縮して血液を押し出した瞬間)と拡張期血圧(心臓が収縮した後に広がった時)の2つからなり、どちらが高くても高血圧と診断されます。
日本高血圧学会の高血圧診断基準は、診察室で測る収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。
実は高血圧は甲状腺や腎臓などの病気が原因によるもの(本態性高血圧)よりも、病気が原因ではない原因不明の高血圧(二次性高血圧)が日本人の大部分を占めています。
高血圧はなぜ注意が必要なの?
血圧や血液検査の測定値に診断基準が定められている大きな目的は、脳血管疾患や心筋梗塞などの大きな病気を予防する為と言えます。
やっかいな事に、高血圧はほとんど自覚症状がありません。血管の内皮細胞には知覚神経が無いため、血管の内側が硬くなったり、傷がついても何も感じないのです。
自分で気づきにくい病気でありながら、放置すると重篤な病気に繋がる恐れがあります。
血圧が高い状態が続くと、血管は次第に厚く硬くなります。血管は本来しなやかで弾力性がありますが、男性、女性ともに40代を過ぎると硬くもろくなりやすく、老化が進んだ状態が動脈硬化と呼ばれます。
高血圧の原因として、ストレスや肥満なども要因となる事がありますが、日本人にとって最大の原因は、食塩の過剰摂取です。
食塩の過剰摂取は高血圧と非常に関連性があります。食塩摂取量の少ないエスキモーは高血圧になる頻度が非常に低いとされていますが、日本の東北地方の方は寒い地域柄塩分が過多になりがちなので高血圧になる頻度が極めて高いとされています。
では、私たちは高血圧に対して何も為すすべが無いかというと、そうではありません。
お肌の細胞が新しく生まれ変わる(ターンオーバー)為には28日必要ですが、血管の内皮細胞は約3年で生まれかわると言われています。
長いように感じますが、生活習慣などの改善を少しずつ続けると必ず効果は現れます。
厚生労働省が推奨している日本人の食塩摂取目標量は男性で7.5g/日未満、女性では6.5g/日未満です。しかし、現状では目標量よりも2g程度上回る塩分を摂取しているという報告があります。
高血圧の予防は短期間ではなく長期間実施する事で効果が現れてきますので、毎日の生活の中で取り入れやすい所からチャレンジして行きましょう。
高血圧改善・予防のための食事対策10のアプローチ
高血圧の改善方法にもっとも効果的とされるのが、食生活の見直しです。
食事で気を付けることは、とくに血圧を上げる要因となる塩分を制限する事が大きなカギとなります。
ここからは、高血圧改善・予防のための具体的な食事法として10のアプローチをご紹介します。
全て減塩の方法になりますが、ご自宅での料理やレシピなど一番取り入れやすい所からチャレンジし、ストレスのない状態から始めてみて下さいね。
① 「かけて」食べるよりも「つけて」食べる
お寿司や揚げ物などの料理の場合、醤油やソースをかけるよりも小皿に
入れてつけて食べる習慣をつける事によって塩分の摂取量が少なく済みます。
② 野菜から先に食べる
外で定食を食べる時、一番最初に何から食べているか、意識した事はありますか?
先にメイン料理を食べると口が濃い味に慣れてしまい、最後に残したサラダにもドレッシングを多くかけてしまう事があります。高血圧予防のためにまずは野菜を最初に食べましょう。薄味でも、最初に食べる事でおいしさを感じる事ができます。
それに加え、カサのある生野菜を良く噛む事で満腹中枢も刺激されるので、カロリーの摂りすぎを防ぐ事にも繋がります。
③ だしの風味を大切に
塩味の薄い食事に慣れる為に、だしを活用する事は高血圧予防に有効です。
かつおぶしや昆布の出汁にはうまみがあり、塩分が少なくても風味豊かに美味しく食べる事ができます。
わざわざだしをとるのが面倒な場合は、無塩のだしパックを活用しましょう。
④ 調味料を変えてみる
調味料に含まれる塩分量を意識すると、家庭や外食での塩分量を調節する事ができます。
それぞれの大さじ1当たりの塩分量を比べてみましょう。
薄口しょうゆ 2.6g
濃い口しょうゆ 2.88g
減塩しょうゆ 1.5g
ケチャップ 0.56g
中農ソース 1g
マヨネーズ 0.3g
意外にも、醤油以外の調味料は塩分が低い事が分かります。上記の塩分量を把握し、調味料を上手く使う事で塩分を抑える事ができます。
⑤ 酢を有効利用
酢が高血圧に良い、というのは迷信ではなく、科学的に証明されています。酢の主成分である酢酸は身体の細胞に取り込まれるとアデノシンという物質が作られ、このアデノシンが血管を拡張する働きがあります。
酢の物などで毎日おおさじ1杯のお酢や黒酢などを継続的にとりましょう。
⑥ 酸味や香辛料を上手に使う
酸味を上手に利用して献立の味付けに変化をつけましょう。具体的には、和え物や焼き物の塩分量を減らす事ができます。
酸味:柑橘類(レモン、すだち、かぼすなど)
香辛料:とうがらし、こしょう、カレー粉など
香り:ゆず、しそ、みょうが、ハーブ、焼きのり、かつお節など
香ばしさ:いりごま、無塩アーモンド、くるみなど
油の風味:ごま油、オリーブ油など
⑦ 味噌汁やスープに具をたくさん入れる
汁物には野菜をたくさん入れる事で1杯の汁量を減らす事ができます。また、野菜に含まれるカリウムで血圧を下げるメリットもあります。
⑧ ラーメンやうどんの汁は飲まない
ラーメンのスープは美味しいですが、全て飲み干すと何gの塩分量があると思いますか?
正解は約6g!
約1日分の塩分を1食で摂ってしまう事になるため、注意が必要です。その他に、かけうどんをざるうどんにする事によって塩分量を半分にする事ができます。
⑨ 意識的にカリウムをとる
カリウムには体内の余分なナトリウムの排出を促して血圧を正常に保つ働きがあります。不足すると体内の余分なナトリウムの排泄が滞るため、高血圧を引き起こしやすくなります。
カリウムは煮たり茹でたりすると水に溶け出してしまうので、生野菜で摂ったり果物で頂くのが効果的です。(※腎臓病の方はカリウムが制限される場合がありますので、医師の指示に従って下さい。)
カリウムの多い食べ物として果物では特にバナナに多く含まれます。バナナには血管を拡張して血圧を下げるカリウムの他に、筋肉の働きをスムーズにしたり神経の興奮を抑える効果のあるマグネシウムも豊富に含まれており、手軽に食べられるのでオススメです。
ヨーグルトなどに合えて食べたり、スムージーやジュースなどの飲み物にして頂きましょう。
野菜では特に芋類に多く含まれます。
⑩ 加工品を控える
ちくわやかまぼこなどの練り物は塩分を多く含む為、摂りすぎに注意しましょう。また、身近な漬物にも塩分が多く、梅干しは1個で2g、たくあんは3枚で約1.5gの塩分を含みます。
減塩に繋がる調理の工夫に、「ムニエル」があります。
無塩の生鮭や白身の魚に小麦粉をまぶし、無塩バターを使用するとコクが生まれます。少しのお塩をふりかけて美味しく食べる事ができます。
特に青魚には血栓を防ぐEPAが豊富ですので、週に2回はサバ、アジ、イワシなどの青魚を食べるようにしましょう。
高血圧の食事には添加物が多く含まれる食事にも要注意です。コンビニの食べ物などは添加物が多く含まれていることも多いので、食べ過ぎには注意しましょう。
ここで、高血圧予防レシピをご紹介します!
「彩野菜の豚しゃぶサラダ」
材料(2人前)
豚肩ロース 200g
レタス 1/6個
パプリカ 1/2個
水菜 1/2束
ミニトマト 6個
ブロッコリースプラウト 適量
作り方
① パプリカは細切りにし、水菜は3~4㎝の長さに切る
② レタスをちぎり、トマトは1/2に切る
③ 豚肉は沸騰直前になった湯で1枚ずつ茹でて冷水にとる
水気をふき、食べやすい大きさに切る
④ ①、②を皿に盛り、豚肉をのせる
ポン酢をかけてブロッコリースプラウトをのせ、完成
☆栄養ポイント☆
カリウムたっぷりの生野菜が身体のナトリウムを排出
する働きをします。また、血管の弾力を保つ為にタンパク質
もしっかりと摂りましょう。
高血圧に効果のある運動
高血圧の予防には、減塩などの食事以外にも運動療法に有効である事はよく知られています。運動療法が高血圧に効果のある理由は、血管内皮機能が改善し、降圧効果が得られるからです。
正常高血圧や軽症高血圧の方に対しても、非常に有益な選択です。
高血圧の改善には息をこらえるような運動ではなく、ウォーキングや水泳、スクワットなど、長時間継続して行う有酸素運動を取り入れます。頻度は1回30分以上の運動を週に2回以上行います。
ポイントは、息が上がらない程度に行う事です。運動をする事により余分な水分を尿として排出でき、体液量が減少して血圧が下がります。
仕事が忙しく、運動をする時間が確保できないという方も多くいらっしゃっると思います。そんな時は、通勤時間を運動の時間帯にしてみてはいかがでしょうか?
毎日継続する事で、立派な運動時間になります。
通勤時間に運動をするコツ
・通勤を自転車にする
・バス利用なら、歩ける所で降りてみる
・駅のエスカレーターを使わずに階段を利用する
・帰りは気分転換に一駅歩いてみる
また、寝る前にストレッチをすると身体がリラックスして副交感神経が
優位になりますので、よりよい睡眠に繋がり血管にも良い影響を与えます。
高血圧に飲酒はダメ?
高血圧に飲酒が必ずしもダメという訳ではありません。
適量のアルコールは体に良いと考えられ、ストレス解消などに飲酒する方も多いでしょう。
しかし、少量のアルコール量であれば血圧を下げますが、過度の飲酒はかえって血圧を上げてしまうこともあります。
以下の飲酒の適量を参考に普段から飲む量に気を付けましょう。
<アルコールの適量 成年男性の場合>
ビール 中瓶1本程度
ワイン 2杯程度焼酎 半合
まとめ
いかがでしたでしょうか?
高血圧予防や高血圧改善につながる具体的な方法ご紹介しました。
これなら毎日続けられそう!
という気持ちが大切ですので、食事療法や運動療法を高血圧予防の為に実践してみましょう。